完結編

「あれから何年………いや、私にとってはつい昨日のことの様ですよ。

………あの雌雄を賭けた戦いが」



「俺は思い出したくねぇけどな………!」



「おやおや。随分と嫌われてしまったようですね……呼道勇騎」



怒りを露にしてナイメアと呼ばれた男を睨む勇騎さん。

しかし、このナイメアという男は涼しい顔をして微笑む。




それにしても……不気味だ。



血色の悪い窶れた顔もそうなのだが、貼り付いたような笑み以外の感情が全く感じられない。




この男は…………“本当に人間なのか”?




「おやおや。まさか貴方も一緒とは………

…………………椿 勝利」



「っ!!!」



気がつけばナイメアの顔がすぐそばに。





───なんだ………なんなんだ!?





全く気付かなかった。全く反応出来なかった。



貼り付いたような………まるでマネキンに剥ぎ取った人間の皮膚を無理やり貼り付けたような顔がまたもや笑みに歪む。




目の前の“ソレ”はバケモノなんてものじゃない。



人間の形をした、人間にはそれを形容する術のない“ナニカ”。

その正体を知ろうとすれば気が狂ってしまうであろう“ナニカ”………。





───視界がぐにゃりと歪む。


体が震えて、寒気が止まらない。



アンゲロスを目の当たりにしても、こんな風にはならなかった。


こんな事ははじめてだ…………。


俺は、どうしたっていうんだ!?





「……………っ、なんで………俺のこと、知っているんだよ………!」


俺は慌てて距離をとり、震える手を押さえながら奴を睨む。




「何故って……?貴方は忘れているかもしれませんが、私は貴方をずっと昔から知っている。


そう、6年前…………


血の聖誕祭の頃から………ずっとね」
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