完結編

────姫矢港・星葉埠頭。


10月の寒空の中、県警が現場検証を行っていた。


遺体は既に司法解剖に回されたようだが、周囲には生々しい血痕の跡。



「勇騎さん、どうしたんだよ……

まさか野次馬って訳じゃ………」


「いいから黙ってろ………!」



かじかむ両手に息をかけ、勇騎さんに悪態をつくと、勇騎さんは俺をにらむ。



──おおぅ。さすがにコレには閉口してしまう。


こんな勇騎さんを見るのは……はじめてだ。



なんていうか、殺気立っている。


そして、それは間違いなくあのニュースを見てからだ。


……なにかあったんだろうか?



「フフッ…………」



───その時、人影が俺たちの前を横切った。



ユラリ、ユラリとその影はまるで幽霊の如く不安定で不気味だった。



「っ!待ちやがれ!!」


それを見た勇騎さんは、怒号を飛ばしながら影を追い、駆け出す。



「あんたが待てって勇騎さん!!」


俺も勇騎さんを追って駆け出す。

怪人の類いはとっくの昔に慣れてしまい、恐怖を感じることはない。


しかし、まだ怪人とは別の得体の知れないものにはやはり恐怖を感じてしまう。



そして、この人影は間違いなく“得体の知れないもの”。



俺は恐怖心を押さえつつも勇騎さんと、その人影を追う。




そして………俺たちふたりは埠頭近くの資材倉庫に入っていくのであった。
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