Chapter.3:ゆりかちゃん

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「んっ…………」


眩い光。

そして全身………特に首元を支配する痛み。


こうして俺の意識は覚醒した。



目に飛び込んできたのは知らない天井。


目だけを動かして状況を確認すると、何処かのお屋敷の一室のようだ。

やたらと柔らかくていい匂いがする。


そう、女の子特有の…………。

あかりんからも、“あの世界”のお姉さんたちからも…………。




…………え?



何故、俺はこんなところにいるのだろうか。




「…………目ぇ覚めたかいな?」


俺の目の前には10代後半くらいの女の子。

金髪の縦ロールという現代の日本では絶対にお目にかかれない髪型。

まさか、本当にそんなベル薔薇的な種族がいたとは………。



「君、は………?うっ………」

「あぁっ!動いたらダメや!

その特徴的な容姿に困惑しつつ、俺は体を起こそうとするが、あまりの激痛に体が思うように動かない。



「………うちは森ノ宮 深雪(もりのみや みゆき)。

これでも森ノ宮の次期当主や!」


自身の胸をパンッと叩き、自慢気に自己紹介をする少女。

関西弁だと分かるが、どことなくイントネーションやアクセントが大阪弁や京都弁と異なる。


この柔らかさを感じる独特な話し方は金沢弁か………。




「森ノ宮…………?なんでそんなところのお嬢様が………」


森ノ宮………いや、『森ノ宮財閥』といえばいいのだろうか。

その名前は聞いたことがある。

『金沢』という街で姫矢に並んで勢力を伸ばしている財閥グループだ。


でもなんでそんな財閥のお嬢様が俺を助けたんだ………?



「あんたのことはちゃーんと調べてあるわぁ。

松本道紀……姫矢市の仮面ライダー、やろ?」


そういってベル薔薇なお嬢様………深雪は俺のプライムレイザーやジュエルドライバーを手に取り見せてくる。




「返せっ………!それは………」


「………別に横取りなんてせんから安心してや。

うちはあんたに協力したいだけやし!」


そういうとベル薔薇……もとい深雪は俺の頭の隣にプライムレイザーとジュエルドライバーを置くと、ニッと笑ったのだ。



“協力”。

あの世界での戦い以降、俺に全く縁のなかった言葉。


俺は協力したいと申し出る彼女の笑顔に戸惑うことしか出来なかった。



(続く)
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