Chapter.3:ゆりかちゃん
「感謝しますよ、“贋作使い”…………。
貴方のお陰で無事に“彼女”の確保が出来ました」
「…………彼女……?」
立ち上がれないながらも身構える俺を余所に、奴は血にまみれ横たわるジルを姫抱きする。
「おやおや、君には話しておくべきですね…………」
俺の言葉に反応するように、ナイメアはニヤリと口角を上げる。
まるで俺の反応を楽しんでいるかのように。
「……神話に語り継がれる時代、人智を超えた存在がいた。
その名を“ハルシオン”。
人類史が始まる遥か昔から存在する“神”………いや、“それすらも超える存在”。
その力を巡り、幾度となく争いが起こった。
そしてその度に文明は滅び、ハルシオンの存在は忘却の彼方へと消えていった。
本来なら忘却され、目覚めることなどないはずだった。
ですが、今から20年前以上前。
その眠りを妨げる者が現れた。
それが“姫矢グループ”。
この世界を影から操る一族ですね」
まるでおとぎ話を聞かせるかのようにナイメアは語る。
───“ハルシオン”。
そんな正体も、そもそも存在しているかも怪しい概念のようなもののために俺たちの戦いは始まった。
姫矢グループによりヴァイトップが街にばら蒔かれ、そのヴァイトップによりアンゲロスが現れた。
半ば偶然ベルトの力を手に入れた俺は、時に理不尽に耐えながら、時に大切な人たちを失いながら戦った。
戦って、戦って………戦い抜いた。
そしてその果てにあの災害まで起きてしまった。
“血の聖誕祭”などと呼ばれているあの災害が。
「姫矢の………1人の男の欲望がこの世界にありとあらゆる災厄と悪意をもたらした。
それは21年前、東京を炎に包んだ2体の物の怪によってね」
「………」
姫矢グループの幹部から聞かされたことがある。
今から21年前。1999年の7月。
2体の怪物が東京に現れ、その戦いで東京は壊滅した。
後に怪物たちは、すべてのアンゲロスの始祖となった怪物は『アンゲロス・ゼロ』、それに立ち向かった俺の変身するプライムのモデルとなったバッタの姿を模した“堕天使”は『ペプトコス・アンゲロス』と呼ばれるようになった。
そしてペプトコス・アンゲロスによって倒されたアンゲロス・ゼロの細胞片が結晶化することで、ヴァイトップが誕生したのだという。
すなわちこの戦いこそが今に続く悲劇の始まりだったのだ。
「物の怪たちの誕生は、全て仕組まれたこと。
ハルシオンの忘れ形見の3つのハルシオンコアのうち2つは姫矢の手に渡った。
ひとつは創造を司る赤のコア。
ひとつは破壊を司る青のコア。
その2つを手に入れたが、3つ目の調和を司る黄のコアだけは眠りから覚めていなかった………。
そこで姫矢はコアの力を悪用し、調和のコアを覚醒させようと目論んだ。
それにより破壊のコアは自我を持ち、人柱を飲み込み怪物となった。
そして、それを打倒するべくある男は、創造のコアを自ら取り込みこの世界ではじめての仮面ライダーとなった」
「何が言いたい……?」
確かに21年前の戦いは姫矢の欲望から始まった。
ハルシオンの力を独占し、未来永劫に渡り姫矢の一族を繁栄させる。
そんなちっぽけな欲望のために当時ハルシオンコアの研究者が人柱にされ始まりのアンゲロスは誕生した。
そしてそれに対抗するために赤のハルシオンコアを自ら取り込み戦った男がいた。
男の名前は『篠宮 一平(しのみや いっぺい)』。
………あかりんのお父さんだ。
「まだ気づきませんか?
20年以上経った今でも調和のコアは覚醒に至らず発見すらされていない。
そして創造のコアもなんの悪意も持たない無垢な少女に受け継がれ、血の聖誕祭以降その力を失いつつある。
だが、創造のコアの力を………いや、ペプトコス・アンゲロス……始まりの仮面ライダーの力を受け継いだ者はもう1人いる」
「まさかっ………!!」
──嫌な予感がする。
背中に冷や水が滴るような不快感。
手が汗ばみ震える。
………出来ることなら分かりたくなかった。
この男の言葉の意味を。
わかってしまったらきっと俺は……壊れてしまう。
理性がその答えを理解するのを拒む。
だけど……!
「…………篠宮 明梨。
始まりの仮面ライダーの血を継ぐ者。
彼女の体内に残るアンゲロス細胞を活性化させれば、自ずとペプトコス・アンゲロスの中核となっていた赤のハルシオンコアもその力を取り戻す…………!」
「やめろ……!やめろぉっ………!!」
俺は必死になり奴の方に手を伸ばした。
奴を行かせてはいけない。
優里香ちゃんどころか俺は……あかりんまで失うのか。
それだけは嫌だ………それだけは………!!
「…………創造のコアが力を取り戻せば、破壊のコアとの共鳴によって!
調和のコアが眠りから覚める………そうすれば私は…………フフフフフフ…………」
奴は俺に背を向けた。
そしてジルを抱え、何処かへと歩き去っていく。
「やめ…………ろ……………!!」
あぁ………意識が遠退いていく。
ジルとの戦闘でのダメージが限界に達し、俺は力尽きたのだ。
アンゲロスとなった優里香ちゃんの行方も分からなくなり、ナイメアも止められない。
俺は…………どうしたら………………。
貴方のお陰で無事に“彼女”の確保が出来ました」
「…………彼女……?」
立ち上がれないながらも身構える俺を余所に、奴は血にまみれ横たわるジルを姫抱きする。
「おやおや、君には話しておくべきですね…………」
俺の言葉に反応するように、ナイメアはニヤリと口角を上げる。
まるで俺の反応を楽しんでいるかのように。
「……神話に語り継がれる時代、人智を超えた存在がいた。
その名を“ハルシオン”。
人類史が始まる遥か昔から存在する“神”………いや、“それすらも超える存在”。
その力を巡り、幾度となく争いが起こった。
そしてその度に文明は滅び、ハルシオンの存在は忘却の彼方へと消えていった。
本来なら忘却され、目覚めることなどないはずだった。
ですが、今から20年前以上前。
その眠りを妨げる者が現れた。
それが“姫矢グループ”。
この世界を影から操る一族ですね」
まるでおとぎ話を聞かせるかのようにナイメアは語る。
───“ハルシオン”。
そんな正体も、そもそも存在しているかも怪しい概念のようなもののために俺たちの戦いは始まった。
姫矢グループによりヴァイトップが街にばら蒔かれ、そのヴァイトップによりアンゲロスが現れた。
半ば偶然ベルトの力を手に入れた俺は、時に理不尽に耐えながら、時に大切な人たちを失いながら戦った。
戦って、戦って………戦い抜いた。
そしてその果てにあの災害まで起きてしまった。
“血の聖誕祭”などと呼ばれているあの災害が。
「姫矢の………1人の男の欲望がこの世界にありとあらゆる災厄と悪意をもたらした。
それは21年前、東京を炎に包んだ2体の物の怪によってね」
「………」
姫矢グループの幹部から聞かされたことがある。
今から21年前。1999年の7月。
2体の怪物が東京に現れ、その戦いで東京は壊滅した。
後に怪物たちは、すべてのアンゲロスの始祖となった怪物は『アンゲロス・ゼロ』、それに立ち向かった俺の変身するプライムのモデルとなったバッタの姿を模した“堕天使”は『ペプトコス・アンゲロス』と呼ばれるようになった。
そしてペプトコス・アンゲロスによって倒されたアンゲロス・ゼロの細胞片が結晶化することで、ヴァイトップが誕生したのだという。
すなわちこの戦いこそが今に続く悲劇の始まりだったのだ。
「物の怪たちの誕生は、全て仕組まれたこと。
ハルシオンの忘れ形見の3つのハルシオンコアのうち2つは姫矢の手に渡った。
ひとつは創造を司る赤のコア。
ひとつは破壊を司る青のコア。
その2つを手に入れたが、3つ目の調和を司る黄のコアだけは眠りから覚めていなかった………。
そこで姫矢はコアの力を悪用し、調和のコアを覚醒させようと目論んだ。
それにより破壊のコアは自我を持ち、人柱を飲み込み怪物となった。
そして、それを打倒するべくある男は、創造のコアを自ら取り込みこの世界ではじめての仮面ライダーとなった」
「何が言いたい……?」
確かに21年前の戦いは姫矢の欲望から始まった。
ハルシオンの力を独占し、未来永劫に渡り姫矢の一族を繁栄させる。
そんなちっぽけな欲望のために当時ハルシオンコアの研究者が人柱にされ始まりのアンゲロスは誕生した。
そしてそれに対抗するために赤のハルシオンコアを自ら取り込み戦った男がいた。
男の名前は『篠宮 一平(しのみや いっぺい)』。
………あかりんのお父さんだ。
「まだ気づきませんか?
20年以上経った今でも調和のコアは覚醒に至らず発見すらされていない。
そして創造のコアもなんの悪意も持たない無垢な少女に受け継がれ、血の聖誕祭以降その力を失いつつある。
だが、創造のコアの力を………いや、ペプトコス・アンゲロス……始まりの仮面ライダーの力を受け継いだ者はもう1人いる」
「まさかっ………!!」
──嫌な予感がする。
背中に冷や水が滴るような不快感。
手が汗ばみ震える。
………出来ることなら分かりたくなかった。
この男の言葉の意味を。
わかってしまったらきっと俺は……壊れてしまう。
理性がその答えを理解するのを拒む。
だけど……!
「…………篠宮 明梨。
始まりの仮面ライダーの血を継ぐ者。
彼女の体内に残るアンゲロス細胞を活性化させれば、自ずとペプトコス・アンゲロスの中核となっていた赤のハルシオンコアもその力を取り戻す…………!」
「やめろ……!やめろぉっ………!!」
俺は必死になり奴の方に手を伸ばした。
奴を行かせてはいけない。
優里香ちゃんどころか俺は……あかりんまで失うのか。
それだけは嫌だ………それだけは………!!
「…………創造のコアが力を取り戻せば、破壊のコアとの共鳴によって!
調和のコアが眠りから覚める………そうすれば私は…………フフフフフフ…………」
奴は俺に背を向けた。
そしてジルを抱え、何処かへと歩き去っていく。
「やめ…………ろ……………!!」
あぁ………意識が遠退いていく。
ジルとの戦闘でのダメージが限界に達し、俺は力尽きたのだ。
アンゲロスとなった優里香ちゃんの行方も分からなくなり、ナイメアも止められない。
俺は…………どうしたら………………。