Chapter.3:ゆりかちゃん

「はぁ…………はぁ…………!」


地面へ沈む俺の体。

それと同時に変身が解除される。


それはジルも同じ。だが違うのはただひとつ。




「おやおや………」


「────ッ!?」


コツン、コツン……と足音が響く。

聞き覚えのある声。いつか感じたあの悪寒。



………しまった。俺にはもう戦う力は残されていない。




「まさか“贋作使い”をここまで追い詰めるとは…………」


赤き月を背に現れる“あの男”。

かつて赴いたあの世界で幾度となく戦い続けてきたあの男。


俺とも因縁浅からぬ敵。


影しか見えないその姿は、やがて赤い光に照らされ怪しく浮かび上がる。



その様はまるで地獄から血を求めて現世に使わされた死神……もしくは怨霊の如し。



俺は顔だけだが奴の姿を注視する。





「嘘だろ……………」



そんなはずはない。

奴は確かに死んだはずだ。
『あの戦い』で………。



なんで…………なんで生きてるんだ。


なんで…………俺の世界にいるんだ。



そして奴の顔がはっきりと浮かび上がった時、体温が一気に奪われるような感覚に陥った。







「…………やりますね、プライム………いや、松本道紀」






そう…………月を背に立つ男は……………!









「………………ナイメア…………………!」



design
22/24ページ
スキ