Chapter.3:ゆりかちゃん
「……………なんだよ…………これ」
───目の前に広がった光景は、あまりに現実味のない光景だった。
つい先程出たばかりの真新しい廊下は、床も壁も真っ赤に染まっており、その中心には優里香ちゃんのお母さんが倒れている。
その顔は何かに驚いているかのように、また何かに恐怖しているかのようにひきつった顔で固まっている。
そしてその手には弟の汐くん“だったもの”が抱かれている。
────何があった?アンゲロスか?
一体、一体何が……?
わからない。何が起こった?
呼吸が荒くなって、真冬なのに汗がダラダラと落ちる。
あの時と同じだ。
ユカ姉が死んだ時と同じ。
また、また…………俺の大事な人たちがいなくなる。
焦りが脳を支配する。
冷静な判断力を奪っていく。
「はぁーい!メイキングホープでしたぁ~!
………こんな感じじゃね?」
「いいんじゃねぇの?カズト」
……台所の方で声がした。
優里香ちゃんとも、沖田巡査とも違う声。
俺は皮肉にもその声に我を取り戻し、慌てて台所の方へと向かう。
そこにいたのは……………
「沖田さんっ!!」
「………あ?誰お前?」
高校生くらいの4人の男。
その中心に倒れ伏す沖田巡査。
男たちの手には凶器として使ったであろうバール。
その先端は血が滴っている。
………………沖田巡査の血が。
「お前っ……!」
しかもそのうち一人はというと、先程交番で沖田巡査に補導されていた男子校生だ。
まさかこいつらが……………!
でもなんで?
なんでこんなことを?
「なんでこんなことを………
この人たちがなにしたっていうんだ!?」
声が上滑る。
思考がめちゃくちゃになる。
アンゲロスと戦ってる時はもっと冷静になれているはずなのに。
しかし、男子校生たちはそんな俺の姿をみてはゲラゲラと笑い…………
「はぁ?決まってんだろ?
俺たちがあのきたねーガキ共に教育してやってたのに、ここの刑事がシラケることするからだろ?
人間様の善意に水差す奴はアンゲロスってことじゃん?
だ・か・ら…………そんなバケモンは狩らなきゃだろォ?
まぁ、“今回は”アンゲロスにならなかったみてぇだけどなァ!
アハハハハハハハ!!」
「動画の中だけで、アンゲロスなんてバケモン一回も会ったことねぇけどな!アハハハハハハハ!!」
────なんだそれ。
俺は唖然とするしかなかった。
だってそうだろ?
人間が同じ人間を殺すんだぞ?
それも、補導されたとかそんなつまらない理由で。
確かにアンゲロス狩りとかいうジャンルの動画は若い子の間で流行ってるのは知ってる。
そしてそれを真似してる奴らも一定数いるってのも、それに便乗した奴らがアンゲロスと間違えて一般市民に暴行を加えている事が社会問題になりつつあることも。
だがこいつらは………それ以下だ。
アンゲロス狩りを装って、人殺しをしたんだ。
奴らの笑い声が真っ赤に染まった台所に響く。
「…………あれぇ?おチビちゃん、ビビった?もしかしてちびっちゃったァ?
アハハハハハハハ!!」
奴らが俺の肩を掴み、挑発してくる。
急に頭が冷えていく感覚に陥った。
あれほど混乱していたのに、自分でも恐ろしくなるほどに頭がクリアになっていく。
─────俺の中で、何かが腐り落ちた。
「………………黙ってろよ、クズ共」
「あ?………っ!アァァァァァァァァァ!!」
胸ぐらを掴んできた男子校生……先程交番で沖田巡査にしょっぴかれた奴の小指を掴むと俺は、奴の小指を勢いよくへし折ったのであった。
───目の前に広がった光景は、あまりに現実味のない光景だった。
つい先程出たばかりの真新しい廊下は、床も壁も真っ赤に染まっており、その中心には優里香ちゃんのお母さんが倒れている。
その顔は何かに驚いているかのように、また何かに恐怖しているかのようにひきつった顔で固まっている。
そしてその手には弟の汐くん“だったもの”が抱かれている。
────何があった?アンゲロスか?
一体、一体何が……?
わからない。何が起こった?
呼吸が荒くなって、真冬なのに汗がダラダラと落ちる。
あの時と同じだ。
ユカ姉が死んだ時と同じ。
また、また…………俺の大事な人たちがいなくなる。
焦りが脳を支配する。
冷静な判断力を奪っていく。
「はぁーい!メイキングホープでしたぁ~!
………こんな感じじゃね?」
「いいんじゃねぇの?カズト」
……台所の方で声がした。
優里香ちゃんとも、沖田巡査とも違う声。
俺は皮肉にもその声に我を取り戻し、慌てて台所の方へと向かう。
そこにいたのは……………
「沖田さんっ!!」
「………あ?誰お前?」
高校生くらいの4人の男。
その中心に倒れ伏す沖田巡査。
男たちの手には凶器として使ったであろうバール。
その先端は血が滴っている。
………………沖田巡査の血が。
「お前っ……!」
しかもそのうち一人はというと、先程交番で沖田巡査に補導されていた男子校生だ。
まさかこいつらが……………!
でもなんで?
なんでこんなことを?
「なんでこんなことを………
この人たちがなにしたっていうんだ!?」
声が上滑る。
思考がめちゃくちゃになる。
アンゲロスと戦ってる時はもっと冷静になれているはずなのに。
しかし、男子校生たちはそんな俺の姿をみてはゲラゲラと笑い…………
「はぁ?決まってんだろ?
俺たちがあのきたねーガキ共に教育してやってたのに、ここの刑事がシラケることするからだろ?
人間様の善意に水差す奴はアンゲロスってことじゃん?
だ・か・ら…………そんなバケモンは狩らなきゃだろォ?
まぁ、“今回は”アンゲロスにならなかったみてぇだけどなァ!
アハハハハハハハ!!」
「動画の中だけで、アンゲロスなんてバケモン一回も会ったことねぇけどな!アハハハハハハハ!!」
────なんだそれ。
俺は唖然とするしかなかった。
だってそうだろ?
人間が同じ人間を殺すんだぞ?
それも、補導されたとかそんなつまらない理由で。
確かにアンゲロス狩りとかいうジャンルの動画は若い子の間で流行ってるのは知ってる。
そしてそれを真似してる奴らも一定数いるってのも、それに便乗した奴らがアンゲロスと間違えて一般市民に暴行を加えている事が社会問題になりつつあることも。
だがこいつらは………それ以下だ。
アンゲロス狩りを装って、人殺しをしたんだ。
奴らの笑い声が真っ赤に染まった台所に響く。
「…………あれぇ?おチビちゃん、ビビった?もしかしてちびっちゃったァ?
アハハハハハハハ!!」
奴らが俺の肩を掴み、挑発してくる。
急に頭が冷えていく感覚に陥った。
あれほど混乱していたのに、自分でも恐ろしくなるほどに頭がクリアになっていく。
─────俺の中で、何かが腐り落ちた。
「………………黙ってろよ、クズ共」
「あ?………っ!アァァァァァァァァァ!!」
胸ぐらを掴んできた男子校生……先程交番で沖田巡査にしょっぴかれた奴の小指を掴むと俺は、奴の小指を勢いよくへし折ったのであった。