Chapter.3:ゆりかちゃん

「何があったの!?」


「助けて!お父さんが!お母さんが!汐が!!


───やっ!やめて!離してッ!!」



「優里香ちゃん!!優里香ちゃんっ!!」


優里香ちゃんの泣き叫ぶ声と、グシャッという音と共に通話は切れてしまった。



「っ………!!」


──何が起こった?一体何が………?

呼吸が荒くなる。

汗が滴り落ち、動悸が激しくなる。


俺は2つのベルトを無造作にバッグに詰め込むと部屋を飛び出した。


また……また大切な人を失う………。



そんなこと、あってたまるか………!



「カマラーダァ!」


「うぉっ!?……何さ?そんなに慌てて」


「優里香ちゃんちに!速く行くぞ!!」


「ちょっ……急になんなのさ?

ちょっ、道紀くん!?うわぁっ!」


カマラーダを起動させると無理やりアクセルを吹かし、俺はカマラーダを走らせる。


なんでもいい。はやく……はやく行かなきゃ。


しかし、そんな俺の意思に反するように、俺の体は鉛の海に沈んだように重く、どれだけアクセルを吹かしても前に進まない。時間の流れが遅く感じてしまう。




「優里香ちゃん…………!」



頼む。

頼む頼む頼む……!



無事でいてくれ……。



もう、嫌なんだ。


大切な仲間が……大切な人がいなくなるのは。




もう、俺から奪わないでくれ。


もう、俺から離れて行かないでくれ…………。



頼む…………頼むよ…………。





しかし、そんな俺の青臭い想いなど神様とやらは聞いてくれない。




「優里香ちゃんっ!」


やがて、優里香ちゃんの家にたどり着く。

そしてロクにノックさえせず、ドアをおもいっきり開く。



鍵は空いていた。




しかし………俺が見た光景は……………。
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