Chapter.3:ゆりかちゃん

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楽しい時間はあっという間に終わるものだ。


夕陽が姫矢の街を赤く染める。

冬茜ふゆあかねと言うやつだ。

時刻こそ短いが、鮮烈で燃えるような紅に空を染めるのだ。



姫矢の街に生まれ、姫矢の街で生きる。


そんな俺にとっては何度も見てきた光景。




───でもいつからだったろう。

夕陽を見るたびに寂しさを覚えるようになったのは。




「………そろそろ帰らなきゃだね」


「そうだね………」


「えー!もっといればいいのに!」


「また来るから!」


俺たちさんは立ち上がると優里香ちゃんは俺たちを引き留める。


冬茜に彩られ、朱に染まるその顔は少し寂しげ。

なんかそんな顔をされると帰りたくなくなってしまう。



「だいじょうぶ。また来るよ!」 


「うぅ……約束ですよぉ……?」


ここで口を開くのはジル。

ジルは笑顔で優里香ちゃんの頭を撫でる。


妹がいるって言ってたっけ。
年下の女の子の扱いはやはりうまいと思う。



「じゃあみなさん!また来てくださいね!」


優里香ちゃんは玄関まで行き、俺たち3人を玄関まで見送ってくれる。


まだちいさいのに、本当に素敵な女の子だ。


───友達になれてよかったと思う。




「それじゃ、今度はあかりんもいれてさ!」



「「「「またあそぼ!!」」」」



“またあそぼ!”


言葉にすればいささか子供っぽいかもしれない。



でもこの歳になって気づいたんだ。




『またあした』とか『またあそぼ』とか。

なんとなく口にしていた言葉って本当に尊いのだと。




変わらないようで少しずつ見えないところで変わっていく日々。

未来はいつも不安定で、血の聖誕祭と呼ばれたあの事件だって起こってしまい、いつ、誰がいなくなるか分からない。


だから、そんな不安を一時でも拭ってくれる、忘れさせてくれる優しくて暖かい『魔法の言葉』が大好きなんだ………きっとみんなも。



少し寂しそうにしながらも優里香ちゃんは俺たち3人をずっと見送ってくれた。



冬茜に染まる切なくも優しい笑顔。



今もずっと焼き付いている。





──これが彼女の笑顔を見た最期の瞬間だった。


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