Chapter.1:みっちゃん

「………」


それ以上何も言えず、俺は悠然とそびえ立つ三日月型のビルを見上げた。


あそこにまだ俺たちから大切なものを奪った姫矢の一族がいる。


その姫矢の血が自分にも流れていると思うとどうにかなってしまいそうだ。




「あー、やめやめ!……ごめんね、みっちゃん。暗い話して」


やがて沈黙を破るように口を開くと、彼女は再び笑顔を見せてくれた。




「あかりん………」


俺はあかりんの笑顔が好きだ。


落ち込んでいるときでも彼女の笑顔を見れば元気が湧いてくる。


だが今の彼女の笑顔は違う。


無理をして笑っているのがわかってしまい、胸が締め付けられる感覚に襲われる。





「さ、行こっ!」


「あぁ、ちょっと!」


そしてあかりんは俺の心配を他所に、俺の手を引くと遊園地に向かって走り出すのであった。
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