Chapter.1:みっちゃん

玄関前に停めてあった一角獣(ユニコーン)を模したバイク……『カマラーダ』に跨り、ルービックキューブ型の起動キーである『アームロイドコア』を装填する。



するとパネルが点灯しエンジンがかかった。





「行くよ、カマラーダ!」


「あいあいさー!」



エンジンをふかし『彼女』に呼びかけると、バイクから声が発せられる。


………結論から言おう、このバイク、カマラーダは喋るのだ。




カマラーダ曰く『妹もいる』らしいけど喋るバイクが2台も3台もいるなんて信じられない。





「さぁ、道紀くん。張り切って行くよ~!!」


「あ、あぁ」



久しぶりに運転されるのが嬉しいのか、何故かノリノリのカマラーダ。



彼女のハイテンションぶりに少し戸惑いながらも、カマラーダを走らせ真由先輩が待つ現場に向かった。





─────



現場にたどり着くとそこは紅蓮の炎に満ちていた。


俺は慌ててカマラーダから降りると辺りを見回す。



活気に満ち溢れていた街の面影はなく、俺のすぐ側には先ほどまで命だったものが辺り一面に転がっていた。



「真由先輩!!………どこだよ………?」


真由先輩のスマホのGPSを頼りにここまでやってきたのだが、真由先輩の姿が見当たらない。



もしかしたら………と最悪な状況ばかりが頭に浮かぶ。





「道紀くんあっち!」


カマラーダがヘッドライトで照らした先に真由先輩がいた。


地面に倒れ伏していて動かない。




「真由先輩!!」


慌てて彼女に駆け寄り、彼女の体を抱きかかえる。


すると彼女はうぅっ、という呻き声と共に目を覚ました。




「真由先輩?……真由先輩!俺が分かりますか!?」


「………みっ、ちゃん………?」


「もう大丈夫ですからね………」



そう言って彼女を火の手が回っていない安全な所まで運ぶ。


そして物陰まで移動すると彼女を下ろした。





「カマラーダ、真由先輩を頼む」


「あいあいさー!」



カマラーダに真由先輩を託すと俺は単身地獄へと向かった。
15/29ページ
スキ