Chapter.1:みっちゃん

「で、でもそしたら部屋中の本がたまごクラブとひよこクラブとこっこクラブになっちゃうよ?それでもいいの?」


「いーのっ」


俺の訳の分からない問いに即答するあかりん。


そして俺はもう1つだけ問いを彼女にぶつける。





「………本当に」


「え?」


「本当に俺の子供でいいの?俺、不器用だし取り柄もないし………ダメダメだよ?」



根性なしで卑屈で、おまけに取り柄なんて呼べるものなんて何もない。

そんな駄目な俺を彼女は小さな頃からずっと見てきたはずだ。


それにもう俺の体は怪物のソレだ。
まともな人間ですらない。



しかし彼女は………




「そんなことないよ。仮にそうだとしてもそれでもあたしはみっちゃんを選んだと思う。

だってみっちゃん、嬉しい事があったら一緒になって喜んでくれるし、悲しい事があったら一緒に泣いてくれるし。

だから自信持って言えるんだ………あたしはみっちゃんを選んで良かったって。

みっちゃんと出会えて良かったって思ってる!」


「あかりん………」


「だから………あたしはみっちゃんの子供が欲しいな………ってみっちゃん!?」



言い終わるか否かのタイミングで彼女を抱き寄せる。



こらえ切れなくなった涙が溢れてきて、それを見られたくなかったからだ。





───いつからだろう。こんなに涙もろくなったのは。






分からない。分からないけど………






「よしよし………泣かないの」


「なんだよ………自分だって帰りたくないって泣いてた癖に」



それでも俺は今、幸せだ。失ったものは多かったけど。もう取り戻せないけど。



それでも大切なものはただひとつ残された。





「あかりん………ありがとね」


「うん………」


涙を拭うと彼女から離れ、彼女を見つめる。


間近で絡む視線。数秒の後、どちらからともなく目を閉じる。




そして最後にもう一度キスをした。







この幸せがずっと続きますように、と願いながら。


そしてこの幸せを護っていこうと思いながら。
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