Chapter.1:みっちゃん

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何かを突き破るような感覚と共に、彼女の“奥”に沈んで行く。



「………うぅ………っ………!」


堪えるような彼女の声。


強く引き結ばれて綻ぶ唇、滲む涙。




抱きしめた俺の腕の中で零れていく切ないくらいに綺麗な雫。




一体どうしたら優しいキスになるのだろう?




分からない。分からないからただ夢中で唇を合わせ舌を絡める。



彼女も不器用ながらもそれに応じてくれる。





「………もしかしてあかりんもはじめて?」


「……うっ…うん」



唇を離し彼女に問いかけると、彼女は頷く。


彼女とちゃんと付き合いはじめたのはあの災害が終わってからだから、1~2年ほど前か。



無論、それ以前から俺は彼女に想いを寄せてはいたし彼女も俺を想ってくれてたけど、別のライダーの世界に飛ばされてこの世界にいなかった事すらあったから付き合い始めるのも遅くなってしまった。



でも、あかりんは俺をずっと待ってくれてた。


俺なんかよりずっと頼りになる男でも見つければ良かったのに。






それでもあかりんは、俺を選んでくれた。






そして……………コレも今日がはじめて。




緊張しすぎて、体が言うこと効いてくれない。

ベルトの力と代償に文字通りのバケモノとなった自分の体は、少しでも気を抜けば彼女を絞め殺しかねない。

本来なら、『愛する人を抱き締めることすらできない』体だ。





「ごめん……やっぱり痛い、よね………?」



「………んっ………いた、い………けど………だいじょうぶ」

本来なら今すぐ止めるべきだ。

しかし、涙を拭う事もなく行き場を無くしていた彼女の手が、言葉を紡ごうとした俺の頬に触れた。
その先の言葉を遮るように。


ひんやりとした小さな手の感覚。




桜色の小さな唇が震える。掠れた言葉がこぼれ落ちる。




「続けて……?

………あたしは、だいじょうぶ………だから」


「無理、しなくていいんだよ……?」


包み込まれる感覚に背筋が震えた。

彼女の痛みと引き換えにこの快楽を得ていると思うとなんだかいたたまれない気分になってしまう。





でも彼女は………あかりんはそんな“ヘタクソ”な俺に気丈に言葉をくれる。





「………だって、みっちゃんは………いっぱい辛い思い……や、怖い思い、してきたでしょ………?

でもあたしに……出来るのはこんな事くらいだから……」



痛みに震えながら、途切れる言葉。



言葉を出すのも億劫なほど痛いはずなのにそれでも優しい言葉をくれる。





「そんな事言わないでよ………」


「………それにね、ずっと、はじめてはみっちゃんって決めてたから………嬉しいの」


「あかりん………!」



痛みに涙を零しながらも彼女は微笑む。


目元に熱いものがこみ上げてくると、彼女の顔が滲んで見えなくなる。





愛おしい。ただただ愛おしかった。


もう、愛おしいという言葉では言い表せないくらいには。




あかりんを離さないように、離れないように強く強く抱きしめる。




胸の鼓動が響きあう。




滲んだ視界を拭うと見える彼女の肌全てにキスをする。


何も望まない。
何も望まないからこのままただそばにいて欲しい。



もう………1秒も離したくはない。




だから何度でも囁くのだ。

彼女を想う度こみ上げてくるこの熱い想いを言い表わせる術がなくても。





それでも…………。




「あかりん…………愛してる………」


「あたしも…………」


汗ばむお互いの体。涙に濡れる頬。


それでも互いに向かい合い笑顔を見せる。





時が止まったかように静かな夜。

重なるお互いの唇。



彼女の唇の柔らかさと、濡れた体。彼女の温もり。

そして………




「あかりん……!あかりんっ……!!」

「みっちゃん……きて……っ!」


「あっ……あぁっ!!」


そしてこの直後に絶頂に達した快感。

彼女の“中”へぶちまけられた欲望。

広がる濃い匂い。
溢れ出た精液でベトベトに汚れた互いの体。





忘れられない。忘れられる訳もない。






────幸せだった。ただただ幸せだった。




どんな自分でも受け入れてくれる人がここにいる。


こんなにも愛することができる女性ひとがここにいる。





俺はこの一瞬を永遠に忘れることはないだろう。




俺を想ってくれる人がいるところ。

そして俺が想う人がいるところ……………。





それが俺の居場所、俺の全てだ。
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