Chapter.1:みっちゃん

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ここは俺の部屋。




でもなんだかいつもより甘い匂いがした。


それが錯覚なのか実際にそうなのか今の俺には分からない。


空気に呑まれたかのように手が震え普段出来ていた事が上手く出来なくなる。


彼女のワイシャツのボタンに手をかけ外そうとするのだが、手が汗ばみ、プラスチックのボタンを摘む手が何度も滑った。




「「…………」」



彼女は何も言わない。俺も何も言えない。


連なるのは互いの息遣いと布が擦れる音だけ。


そんな中途半端な静寂に包まれながら、あかりんと2人きりでベッドの上にいる事を実感する。



時々視線が絡みあい、悪戯っぽく笑う彼女の視線から逃げるように手元からシーツの皺まで視線を落とす。




しかも口の中がしきりに乾くのに唾を飲み込むかのように喉ばかりが動く。





「…………」



服を脱がせていく度、月明かりに照らされた彼女の白い肌が、紅潮して薄い朱色に染まっていくのがなんとも色っぽい。


俺は思わず彼女に見とれてしまった。



────それにしても静かな夜だ。



まるで世界で2人きりになったかのような………



いっそ俺たち2人、この世に残った最後の男と女ならいいのにとすら思った。


そんな事を思っていると、彼女の手が俺の手を優しくくるんだのに気がついた。



吸い付くような柔らかい手。俺よりも少し冷たい手。






「ど、どうした?」


はっと我にかえり、反射的に問うと彼女は瞳に茶目っ気を映し赤い頬を笑みに緩めた。



「みっちゃん、一生懸命だなーって」


「あ、あぁ………ごめん。こういうの初めてだから、つい………」




こんな時、他の男ならもっと気の利かせて楽しく話しながらやるのだろうか。


21年間生きてきたが、そういった恋愛に関する知識はからっきしだったので分からない。




「もぉ~~~!みっちゃんってば可愛いんだから!」


だがあかりんはそんな不甲斐ない俺に愛想を尽かす事なく無邪気な笑顔を見せてくれる。






────あぁ、この子に出会えてよかった。





この子が俺の事を好きでいてくれてよかった。


この子の事を好きになって本当によかった。
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