一章 THE BIGINNING

────

午後7時30分。


「ふぁぁ……疲れたァァァァ……」


……今日も1日よく働いた。


子供たちや知世子さんの相手をしたり、先輩たちにこき使われたり、挙げ句の果てには慣れないデスクワーク……。


約2時間の残業を終えた俺は今、ネオンの光が照らす夜の街をバイクで走っている。


行く先々ではネオンの光に照らされた、ソーラーパネルたちが屋根の上に鎮座しているのが見える。


昼間の間ずっと発電し続けていたソーラーパネルも本日の仕事を終え、今は街の喧騒とざわめきが織りなす子守歌の中、ネオンの光に包まれて静かに眠りについているのだ。



(なんつーか…俺と同じだよな)


朝起きて、働いて、夜寝る。


毎日毎日こんな単純なサイクルを繰り返して俺もコイツもこの街に存在している。


その点を言えば俺もこのソーラーパネルたちと同じように『この街を構成する部品』でしかないのではないだろうか……。




「……何考えてんだろうな俺」


……いっけね、ついらしくない事考えちまった。


どうも俺はこのソーラーパネルを見ると余計な事ばかり考えてしまう。


こんな時は早く帰って録画した魔法使いプリキュアを観て1日の疲れを癒やすに限るな。


「いや……久しぶりにガンバライジングしに行くか!」


気が変わった。ゲーセン行こう。


ちなみにガンバライジング……正式名称『仮面ライダーバトル ガンバライジング』とは、バンダイから2013年10月31日より稼働が開始されたトレーディングカードアーケードゲーム『データカードダス』の一つ(ウィキペディア参照)。


つまりアレだよ、アレ……日曜の朝にやってる仮面ライダーを題材にしたゲームだよ。


これでも俺、ガンバライジングはめっちゃ強いんだぜ?


「………そうと決まればいっちょゲーセンいくか!」


こうして俺はバイクを走らせる。




 






……この時、ゲーセンにさえ行かなければ俺は永遠に普通の生活を享受出来たのではないか、と思う。


この時の俺には、ゲーセンの先に過酷な運命が待ち受けている事など、知るよしもなかった……。
21/33ページ
スキ