一章 THE BIGINNING

「いや、アンタさっきからブツブツ独り言みたいに言ってたじゃん」


「え……マジッスか?

山吹先輩も聞こえてました?」


「はい~。全部聞こえてましたぁ~」


……イカン、こりゃ迂闊だったな。


「とりあえず、アンタがそう思ってる事は解った」


「だから誤解ですって……」


「酷いわ俊にゃん!柊ちゃんの事そんな風に思ってたなんて!

私、ショックです。

…なんちゃって」


「ババ……知世子さんはちょっと黙ってようか☆」



……と、まぁ職場の雰囲気はいつもこんな感じ。


自分で選んだ道とはいえ、この保育園で働き始めた頃は毎日が不安で仕方なかった。


友人たちからは『女の先生に囲まれて羨ましい』とか『美人のおかあさんとかに出会うだろ?』などとよく言われるが、当時の俺にしてみれば、その環境こそが大きな悩みの一つだったのだ。
18/33ページ
スキ