Phase.5 再会─眠れ、愛しの姫君よ─

──ANGELODS SIDE───


『……奪ワレタ………私ハ全テ奪ワレタ!!』


──目の前にいる彼の姿が滲んで見える。


あぁ、私は泣いているのか。


でも、もうそんなことはもうどうでもいい。



「グッ…!

でもこんな姿にならなくたってやり直せたでしょ!?」


『アノ人は……信彦サンハ………モウイナイ!オ腹の赤チャンモ!!』




────あれは私、真中 姫華が道紀くんと再会する1ヶ月程前の事だった。




願葉区の交差点で私と彼は大きな交通事故に巻き込まれた。


原因は運転手の居眠り運転。


私と婚約者……南 信彦(みなみ のぶひこ)はすぐに病院に搬送されたが、内臓破裂と出血多量で間も無く死亡した。


私が覚えているのは、集中治療室のベットで横たわる変わり果てた姿の彼と、医師の淡々とした対応のみ。

そして、事故を起こした元高級官僚の男は高齢者であったことと、事故後の負傷もあり、未だに逮捕すらされずにいる。




────『所詮はこんなもの』。


そうやって諦めることが出来ればどれほどよかったでしょう。


でも私は事故で流産もしたし、何より信彦さんももう、どこにもいない。


愛する夫も、私たちの間に生まれてくるはずだった我が子も同時に奪われたのだ。




『ダカラセメテ……アノ人ガ生キタ証ダケデモ……!』


交通事故を起こした相手の事は恨んでいないといえば嘘になる。

正直今すぐ八つ裂きにしてやりたいくらいだ。



だがそれ以上に今は彼が生きた証が……彼と共に生きた証だけでも取り戻したい。


そんなとき“あの男”が現れたのだ。


赤い仮面の“戦士”が。今目の前にいる道紀くんが変身している戦士によく似た男が。




仮面の戦士は私に話を持ちかけてきた。


『この宝石に願いを告げればどんな願いも叶う』と。


はじめは疑心暗鬼だったが、この宝石を体に宿してからようやくわかった。



…………この宝石(ヴァイトップ)に彼の意識が宿っていると。


あの仮面の戦士が何をしたかは分からない。
でも、間違いない。
この中にあの人がいる。


そして今、私のお腹には赤ちゃんがいる。



彼の魂を宿した私たちの子供が。




そうだ………私が愛したあの人は、私を愛してくれたあの人は………




──今度は私の子供として生まれ変わるんだ。



だから邪魔はさせない。




たとえそれが……私を愛してくれたもう一人の男……松本くんであろうとも。
13/24ページ
スキ