Phase.5 再会─眠れ、愛しの姫君よ─

《BEAM CLAW ACTIVE!》


「はぁぁっ!」


バックルを一回転させ、両腕の装甲を展開。

発振器が露出し、そこから放たれたリヒトシュトロームによりビームの鉤爪が形成されると、相手の間合いに潜り込み切り掛かる。


しかしその切先は相手の鉤爪によって阻まれてしまう。




「………もう止めてください、姫華さん!」


マスクに包まれた視界が滲み、頬に熱いものが伝うのが分かる。


…………目の前のソレはもう姫華さんじゃない。
それは解ってるし、目の前のソレを駆除するつもりで俺はここに来たんだ。


でも………割りきれない。どうしても。


理解は出来ても納得なんか、出来はしない。



『ナンデ……ナンデ邪魔スルノ……?

アタシハタダ赤チャンヲ産ミタイダケナノニ!』


「うぅ!」


プライムのビームクローを弾くとガラ空きになった胸部に鉤爪で切り裂く。

飛び散る火花。


大きく後退させられることになった。



「……赤ちゃんって……!

何があったんですか!?子供が生まれるってあんなに喜んでたのに!」


ビームの鉤爪……ビームクローを地面に突き刺し、体制を立て直すと再び構え直す。


………婚約者がいたこと、婚約者との間に子供が生まれる『はず』だった事も俺は知っている。


彼女が愛する人と出会い、子を設けて俺は失恋した。


彼女が嬉しそうな話していたことも、その夜にユカ姉にしがみつきながら大泣きしたことも、それでそのまま泣きつかれて眠ってしまったことも………

その後、素直に彼女を祝福出来たことも全部忘れられない思い出だ。



でも………それから彼女が産休に入り、暫く疎遠になってからは彼女がどうなったかまでは知らなかったんだ。
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