Phase.5 再会─眠れ、愛しの姫君よ─

「じゃああたちはこれで帰るね~。バイバーイ」


有無を言わさず用を終えたカマラーダが走り去っていく。


何も言えず拳を握りしめながら、俺は彼女を見送るしか出来なかった。




「………みっちゃん」


握りしめられた拳に添えられる手。


振り向けばあかりんが悲痛な面持ちで見つめていた。




「ねぇ、姫華さんがどうしたの?

駆除って……。それとあの姿はなに?

お願いだから………全部話して?」


ここ数日俺の様子の変化に気づいてくれていたのだろうか。

しきりに俺の様子を伺うような言動をとっていたことは分かっていた。


でも、俺はそれを訪ねられても、はぐらかすばかりで答えようとしなかった。


あかりんやユカ姉に初めて隠し事をした。


罪悪感だけが、俺の両肩にのしかかっていたんだ。




「……ッ!…あかりんには関係ないよ!」


俺はバカだ。

やりきれない怒りをあろうことかあかりんにぶつけてしまった。

添えられた手を振りほどいた後に、彼女の顔を見て胸が締め付けられるような思いを感じた。



「……ごめん」


「なんで……?なんで話してくれなかったの……?」


拳を握りしめ、俺を見据えるあかりん。


その頬には涙が伝う。




「みっちゃんのバカ!なんで今更隠し事するのさ!?あたしたち友達でしょ!?」


「……友達だから話せない事だってあるでしょ」


「何それ!?意味わかんない!」


「……ごめん」


異形の戦士に変身する様を見せてもなお、彼女が本気で自分を心配してくれているのはわかる。


しかし、真相を話せば心配性で世話焼きのあかりんの事だ。

事件に首を突っ込んでくるだろう。



だからこそ話せない。話すわけにはいかないのだ。


俺は、彼女に背中を向けて歩き出す。


でも、そんなの建前。



本当は彼女の泣き顔が見たくなかったんだ。


手詰まりとなった、このどうしようもない現実から逃げたかったんだ。



「………何よ……みっちゃんのバカーーーー!!」


背中越しに明梨のよく通る声だけが響きわたる。


胃がキリキリするような感じがする。



何やってるんだろう、俺は。




なんで………俺は……………。
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