──姫矢市花葉区。



願葉区を東に進んだ所にある街で、
ここには美術館や水族館など姫矢グループが運営する施設が多く立ち並んでいる。



姫矢グループの運営する美術館のひとつ、『姫矢市美術館』に俺たちは来た。



姫矢市美術館は比較的最近に建てられた美術館で、
中世か現代まで時代に縛られない様々な美術品が展示されているいるのが特徴の美術館である。




「今日山下 清の作品来てるんだ……！」


美術館に入ってすぐ、宣伝のポスターを見てときめく。



「山下 清って裸の大将の？」


「そう。異常に記憶力がよくてね、放浪の旅のあと帰宅してから
旅の光景を貼り絵で表現してきた人なんだよ。

そしてまたその作品が凄いんだな！」


「へぇ……」


嬉々とした様子で画家のうんちくを披露してしまう。

あかりんはというと相槌をうちながらも安心したかのように微笑んでくれる。




「ここで話すもなんだ……実際に見てみようよ！」


「うん！」


そうして手を繋ぐと仲良くチケットを買いに受付へと向かっていった。



まるで恋人みたい。



実際に、俺は彼女が大好きだ。



でも彼女には俺みたいな奴は相応しくない。





それでも…………一緒にいたいんだ。