Phase.3 疾走─駆け抜ける騎兵─

───TRITOS SIDE───


「………こちら維城。あたり一帯の情報操作を完了した。そちらの目撃者の記憶置換はどうだ?」



月明かりが夜の街を照らす。

そんな夜の街を見下ろすようにそびえ立つ摩天楼に私はいる。



摩天楼の頂上で街を見下ろす、トゥリトスに変身した私を視認することは誰にも叶わない。

仮に視認できたとしても誰もがそれを錯覚だと思うだろう。



『お疲れ~。記憶置換は既に終了しているよ』


「あとは経過の観察と“不具合”の修正を行う」


『あぁ、そっちは君に一任するよ。ただデータの回収だけは忘れるなよ?』


「…………分かっている」



通信機越しに聞こえる気の抜けた声。


私は端的に報告を済ませ早々に通信を切ると街を見下ろす。




「………愚民共め……我々に“管理”されている事すら知らずに呑気なものだ」


ネオン街を見下ろし呟く。


私が抱いているのは、憎悪や侮蔑ではなく哀れみの感情だろうか。




その言葉に応えるように上からゴォォと突風が吹き荒れる。




それを合図に私は夜空に舞い上がる。



光のマフラーをはためかせ夜空を舞う。



このトゥリトスは空を飛ぶことすら可能なのだ。





そして私は…………眼下に広がる闇夜へと飛び込むのであった。
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