Phase.3 疾走─駆け抜ける騎兵─

奴が立っていた場所には、怪しく光る宝石だけが残されており………



「………なんだこれ?」


変身を解除して宝石を拾い上げる。


宝石はさながらベーゴマのような形をしており、不思議な光を放っている。




美しかった。ただただ美しかった。




その怪しくも美しい光に思わず見惚れてしまい……





「………って、ボーっとしてる場合じゃない!秋くんが!」


正気を取り戻すと秋くんの元へと急いだ。






────同日午後11時27分 葉月区 姫矢市総合病院。



あれから秋くんを病院に運び込み、入院手続きを取った。



幸い傷は思っていたより浅く、命に別状はないとの事だ。


こればかりは秋の悪運の強さに感謝すべきだよね。




俺は病室の椅子に座り秋くんが目を覚ますのを待っていた。





「……んっ」


やがて秋くんが目を覚ます。




「アキくん!」


「……ここは………ミィが助けてくれたのか……?」


「……俺は…………何も……」


「………ありがとうな」


道紀の言葉を遮るように道紀の頭に手を乗せる


手から伝わる温もりに涙を零してしまう。




「……… ごめん……っ、なさい………」


「おいおい……なんで泣くんだよ」



病室に響く嗚咽に、溢れ落ちる涙。


秋くんの顔が滲んで見えない。




「…だって………俺のせいで……っ…

秋くんまで、こんな目にあって………

俺の、俺のせいで………」


途切れ途切れになりながらも言葉の列を紡いでいく。


自分の臆病のせいで秋を危険な目に合わせたことへの罪悪感。
怪物たちに殺された人たちと同じように秋も死んでいたかもしれないという恐怖。




その全てが涙として溢れてゆく。


秋くんはその一言一言を聞き漏らさぬよう黙って聞いてくれた。



「………気にすんなって。俺はこうして生きてるんだから。

終わりよければ全てよしだって。

だからもう泣くな……お前も男だろ?たまに忘れるけど」


「うぐっ……たまに忘れるは余計だっ……!」



秋くんは微笑むと優しく俺の頭を撫で続ける。


二人ともこうして生きているのが嬉しいのだ。



それは俺も同じ。



情けないと分かっていながらもただただ涙を流すことしか出来なかった。
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