Phase.3 疾走─駆け抜ける騎兵─

────あれからどれだけの時間が経過しただろうか。


数分かもしれないし何時間も経過したようにも感じられる。




「ユカ姉……あかりん………アキくん………

誰か…………誰か…………!」


俺は工場近くの竹やぶの中を全速力で駆ける。


あの時助けてくれた名も知らぬ男のために何かしようと決めたはずだった。



しかし、実際怪物に遭遇してみるとやはり恐ろしい。

怖くてたまらないのだ。

自分でも情けないというのはわかっている。

それでもやはり先ほどの遺体やこの間の殺された人たちを思い出すと体が震えてしまうのだ。




「グルルルルル………」


蝙蝠男は俺を探し、同じく竹やぶの中を飛び回っている。


あいつの俊敏な動きは竹やぶのなかで幾分かは制約されているが捕まるのは時間の問題だろう。




「どうしよう………どうしよう………!」


闇夜を一心不乱に走りながらみんなの顔を思い浮かべる。



もう一度みんなに会いたい。

もう一度あの日常に帰りたい。




このベルトを手にした時からそんな願いすら叶わないと薄々わかっていながら。




「ウワッ!」


何かにつまづいたのか俺の体は地面に叩きつけられる。


蝙蝠男は着地すると俺の恐怖心を煽るかのようにジワリジワリと距離を詰めてくる。






……もはや逃げ場所などどこにもない。






「もう………もう駄目だ………!」
















─────諦めかけたその時だった。


















「ミィーーーー!」





バイクのエキゾーストノートと共に、竹やぶの中で自分を呼ぶ声が聞こえて来た。
17/25ページ
スキ