「今度はなに！？」


フォルスの乱入により車内は更にパニックに。

しかしフォルスはそんなことなど御構い無しと言わんがばかりにスクウィッドアンゲロスにボディーブローをかまし、怯んだところにイカのアンゲロスの体を掴み、バスの外へと追い出した。



「今のうちに逃げるぞ！」


この隙に乗客たちはバスの外に出てそれぞれ安全な場所へと避難していった。




「あ………あぁ………！」


しかし、俺はその場を動かずに……否、動けずにいた。

フォルスの姿をみた途端、まるで金縛りにでもあったかのように動けなくなった。


体の震えが止まらない。

動悸が激しくなって、呼吸も浅くなる。

目の前の奴が怖い。怖くて仕方ない。


しかし、当のフォルスは俺の存在など眼中にないのか、1人バスの中に取り残された俺に構うことなく戦闘を続けている。



殺されないならそれでいいはずなのに何故だろう、俺にはそれが堪らなく悔しく感じられた。




「はぁっ！」


フォルスの拳がイカのアンゲロスの体を捉え、吹き飛ばす。


吹き飛ばされたイカのアンゲロスの体が地面を何度もバウンドする。



「これで終わりだ……！」


フォルスは地面に倒れ伏すイカのアンゲロスを無理やり立たせるとその頭部に鋼の五指を食い込ませる。



「ーーーーーーーー！！！」

耐え難い激痛に脳髄が奴に襲いかかっているのが分かる。

脳髄がその機能を失っていく中、イカのアンゲロスはジタバタと蠢き抵抗する。


しかしその抵抗も虚しく、もう片方の手でフォルスに喉笛を掻き切られてしまう。




「ふんっ！！」

鮮血が辺りを紅に染め上げる。

バスのフロントガラスやフォルスの体を鮮血が染め上げる。　


それと同時に骨が砕ける音や肉が裂ける音が響き渡る。

耳を塞ぎたくなるような不快な音だった。

しかし、目を背けたくなるようなその光景も耳を塞ぎたくなるような不快な音も、血に染まったフロントガラス越しからでも感じとることができた。



「…………だぁぁぁぁぁぁぁ！！」


フォルスは力任せにイカのアンゲロスの頭部を脊髄ごと引き抜いたのだ。


ブチブチブチと何かが千切れる音が聞こえた。

それから大量の鮮血が噴水のように沸き上がり、主を失った胴体はその場に崩れ落ちた。




───当然、その体が二度と動くことはなかった。