Phase.5 再会─眠れ、愛しの姫君よ─

「…………切り捨て、御免」


「「「─────────!!!」」」

13体のスパイダーアンゲロスたちは一瞬にして爆散。

残るはクイーンスパイダーアンゲロスのみとなった。


後がなくなった彼女は正面切って突撃し、鉤爪で斬りかかる。

…………俺はその攻撃を正面から受け止めた。



「……もうやめてください!お願いだから………お願いだからぁ!」


『五月蝿イ!
当タリ前ノ幸セスラ手ニ入レラレナカッタアタシノ気持チガワカルモノカ!!

恋人モ……子供モイナイ……アタシニハ何モ残サレテイナイ!

コンナ人生ニナンノ意味ガアルノ!?』


刀と切り結ぶ鉤爪に力が込められる。

しかし俺は微動だにしない。


………いや、そんな格好いいものではない。



動けやしないのだ。
どうしていいか分からなくて。

目の前のソレはもう、姫華さんではなく姫華さんの記憶を持っただけの存在。
決して満たされぬ渇望を満たすために行動するだけの恐ろしく虚しい存在。


説得することになんの意味もない。

そんなこと、分かってるはずなのに。



「それでも……こんなことをしても何の意味もありませんよ!」


『……意味ナンカ無クタッテイイ……。

アタシハアノ人のタメニ生キテ、今ココニイル!ソレガ全テダ!!』


意味のない説得を続けた。

せめてこの姿のままでも彼女が生きられるように、そんなことすら考えている。


当然ながら彼女は聞く耳を持たず、至近距離から子蜘蛛を放つ。



俺は、その攻撃を飛び退いて回避する。



『ホント世話がやけるなぁ!乗って!』


ここで一歩引いて戦いを見ていたカマラーダがやってきたのが、視界の隅に映った。



俺はカマラーダに飛び乗るとカマラーダが走り出した。



迫り来る子蜘蛛の群れ。

俺はカマラーダを操り子蜘蛛の攻撃を回避していく。


その姿は俺がかつて憧れた馬を操り、敵陣に突撃していく武者そのものだった。




でも、それでよかったのか?


こんな状況で憧れた存在に近づけても何も意味ないよ…………。
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