Episode.3 EIN

狭い路地裏に誘い込むと、俺は振り返り再びアインと対峙する。


「そらっ!」


今度はアインの間合いの内側に潜り込むとヴァルツクローで何度も突きを放つ。

狭い路地裏に誘い込んだ事でその太刀もあの氷の龍も思う存分に使えないのは分かる。

そのため現実に存在していた武士たちは室内や林などの狭い場所での戦闘では脇差しを使っていたという逸話もあるくらいだ。


そして、その一方でこちらの武装はヴァルツクロー。
リーチこそ短いが、こういった狭い場所での戦いには向いている武器だ。




「ぐっ………汚ねぇぞ!」


案の定アインは自慢の太刀も氷の龍も満足に使えず、防戦一方となり次第に押され始めている。



「汚い?不利な状況を打開するために工夫するのは当たり前だろうが……。

──これだから幸せ家族に囲まれた温室育ちはダメなんだよ」


その狭さもさることながら、ここで氷の龍を使おうものなら近隣住民を巻き込み兼ねない。

要は今、ここの住人たちは事実上人質となっているようなものなのだ。


アイツはこれを『汚い』と言っているのだろう。


アホか。
生きていくことに『汚い』も『綺麗』もあるか。


俺は……いや俺たちはアンゲロスたちに家族を奪われてからはそうやってコイツらのいう『汚いこと』をやりながら生きてきたんだ。

ただ、生きるために。


それに今は……アンゲロス撲滅という悲願がある。


コイツらのようの余所もんとは違ってごっこ遊びや道楽でやってるわけじゃない。



だからこそ、それを邪魔する奴がいるなら殺す。
誰であっても。ただそれだけだ。




「でやぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「うおぉぉぉっ!?」


渾身の力でアインを蹴り飛ばす。

吹っ飛ばされたアインは壁に激突し、地面に崩れ落ちる。

その衝撃でセイリュウフォームから一番最初の姿………言うなればスタンダードフォームに戻ってしまう。


今がチャンスだ!



《エクスライザーバースト!》


「うおりゃぁぁぁっ!!」


ヴァルツクローをエクスライザーに変形させ、カプセルを2個スキャン。



エネルギーを拳に蓄積させると、起き上がったばかりのアインに拳を炸裂させる。














しかし……………



《Ein gear………Over Drive!》


そんな電子音と共に必殺の拳は受け止められる。


「なっ………!?」


「俺の心を滾らせやがって………ここから先はどうなっても知らねぇぞ!」


みるみるうちに黒色だったラインドライブが血色を得たが如く赤くなっていき、その体には真紅の稲妻が迸る。

そしてその複眼は燃えるように真紅に輝いている。



どうやらこれがアインの本気………らしい。


ていうか……『それより上』なんてあってたまるか!
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