Episode.12 REPOSE

「フロース!協力してすぐに「邪魔」


こんな仕事、すぐに終わらせてみせる。
そのためにも今はコイツと共闘すべきだと考えた。
しかし奴は私の言葉を遮ると私を踏み台にして飛び上がった。

どれだけ華奢な見た目をしていてもエールフェネクスはエクスキメラ。
既存の怪人とは比べ物にならないほどの力を持っている。

エールフェネクスの予想以上の脚力に私は体制を崩してしまった。


どうやらコイツに私と共闘する意思などないようだ。



「ぐっ……私を踏み台に!?」


体制を建て直す頃にはエールフェネクスは自由落下の勢いを利用し目の前の敵にかかと落としを慣行する。



「フッ……!フ"ニ"ィ"ィ"ィ"……」


エールフェネクスの踵落としを雑兵に防ぐ術などない。
踵落としをモロに喰らうと、縦から真っ二つに両断され、戦闘員は息絶えた。

踵落としとは思えぬほどの凄まじい切れ味だ。

それもそのはず。
エールフェネクスのポンポンのような四肢のかわいらしい装飾は全てが鋭い刃となっており、打撃と共にその鋭い刃で対象を切り裂くことが出来るのだ。



「心強いんだかやりにくいんだか……!」


切り裂くことに関しては私も負けてはいない。
悪態をつくと、エールフェネクスに続き鋏を振るう。

キャンサーゾディアーツ由来の鋏は展開出来なくなると対象を切断出来なくなるという弱点さえあれど、展開さえ出来れば対象を直接挟まずとも空間ごと対象を切断することが可能だ。


すなわち………



「「フニィィィィィィッッ!!」」


切り刻む対象を広げれば、こうして複数体まとめて真っ二つにすることさえできてしまう。



「よし……このまま一気に制圧するぞ!」


このまま一気に攻めこみ、首謀者である改造人間を撃破する。
それで我々の覇道を邪魔するものはいなくなる。

隣のコイツとは相性こそ最悪だが、主の悲願を叶えたいという願いは同じだ。
その一点だけがこの共闘を可能なものにしているのだ。



「命令するな」


エールフェネクスはその手にエクスライザーを握りしめると、翼を広げ飛び上がる。

プリーツスカートのように折り重なった羽がめくれあがり、彼女のほっそりとした太ももが露になる。





おぉ……





見えそ……………






「ぐえっ!?」


その瞬間、顔面に激痛が走り視界が真っ暗になる。
少し遅れて自身の体が後ろに吹っ飛ばされるのを認識する。

これはあれだ。

また踏み台にされたんだ。


奴はまた私を踏み台にしたんだ。




「またもやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」



《エクスライザーノヴァ!》

私の体が壁に激突するよりも早く、奴はエクスライザーで自身のカプセルを読み込ませた。

変身に使用したカプセルをもう一度読み込ませ、体内に巡るエネルギーをオーバーロードさせることでエクスキメラは仮面ライダーよろしく必殺の一撃を放つことが出来るのだ。



「殺す………」


エールフェネクスの両足を中心に極彩色の炎の渦を纏い、背中から伸びる翼も一際巨大なものとなる。

そして錐揉み回転をしながら手近にいた戦闘員にドロップキックを叩き込むと、ドロップキックの命中と共に炎を纏った衝撃波が発生。
爆風と共に周囲のものを焼き払いながら消し飛ばしたのだ。



「ぐぅぅぅぅっ……!!」


さすがにこれはやりすぎだ。

キャンサーゾディアーツの頑丈な甲羅はあるが、こんな狭所だ。
モロに私も衝撃波に巻き込まれている。

そもそもキャンサーゾディアーツが炎系統の攻撃が苦手である以上キャンサーバットも炎攻撃が苦手なのだ。



「敵の殲滅を確認……」


「……っ」


やがて爆風が晴れ、周囲を確認してみれば、そこに残されていたものは何一つとしてなかった。

ほぼ全てのものがあの炎により焼き尽くされてしまったのだ。

唯一残ったものといえば戦闘員の亡骸だけ。

岩壁にこびりついた焼け焦げた肉片。
地面に積もった灰。

証拠隠滅のための自壊機能すら発動することなくここにいた戦闘員たちは一人残らず焼き殺されたのだ。



「相変わらず惨いな……」

……よし、わかった。訂正しよう。

メンバーの中でも古参ときくがどうみても幼い少女の姿をしているフロース。

素性も分からない彼女は主の命のまま何の躊躇いもなくターゲットを惨殺する。

私はふと呟くと、『彼女とは共同など出来そうにない』と認識を改めることにした。
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