Episode.12 REPOSE

──Re:BUILD SIDE──

ジェネシスコーポレーション残党のアジトと目される洞窟にたどり着く。

自然に作られた洞窟をベースにトンネルのように崩落防止のためのコンクリートで補強しただけの粗末なアジトに私、来栖黎人とフロースの二人が派遣された。

任務は奴の持つエクスライザーの回収と、あわよくばそのリーダーである豚型改造人間の始末である。


「フロース、わかっているな?……出過ぎるなよ?」

「……」


──相変わらずこの小娘のことはよく分からない。
フロースはジニア様とも長い付き合いだと聞くが、組織の中でも新参者の私はコイツの素顔すら知らないのだ。
蒸し暑い夏真っ盛りであるにも関わらず素肌を一切出さない黒衣に身を包み、これまた真っ黒な狐の面を着けている。

こうして立っているだけでも汗ばんてくるのに、コイツは汗ひとつかいている様子すらない。
まるで温度を感じてないようだ。

この小娘は本当に人間なのだろうか。



「「「フニーッ!!」」」

「……チッ」

しかしそんな疑問の答えを導きだす間などなく、私たちは取り囲まれてしまう。
どうやら見つかったようだ。

相手はジェネシスコーポレーションの下級戦闘員が15体。
一体一体は大したことはないが、戦闘が長引けば豚型改造人間に逃げられてしまうだろう。

我々はそれぞれ怪人カプセルを取り出した。


《キャンサーゾディアーツ!》《バットファンガイア!》

《カラスアマゾン!》《アンク完全体!》

私が使用するのはキャンサーゾディアーツとバットファンガイアのカプセル。
椿勝利との戦闘に使用したカプセルだ。

対するフロースは彼女と最も相性のいいカラスアマゾンとアンク完全体のカプセルだ。


《《デュアルフュージョン!》》


「鎧装!」

「鎧装……」

カプセルを読み込ませ、胸の前でエクスライザーのトリガーを引く。

エクスライザーから放たれる刻印『ライザープルーフ』が体に刻まれるとそれを起点に我々の体は人を超えた物の怪のそれに改造されていく。


《キャンサーバット!》

《エールフェネクス!》


私は蟹と蝙蝠が融合したゲルショッカーの改造人間『ガニコウモル』を思わせるエクスキメラ…キャンサーバットに変身した。

膂力と装甲の堅牢さがウリのエクスキメラだ。


そしてフロースが変身したのは……



「いつみても派手、だな……」

「……」

ベースはおそらくカラスアマゾンだろう。
しかし、カラスアマゾンより小柄で華奢な体型となっており、極彩色の羽がまるでプリーツスカートのように腰回りを覆っている。

それだけではない。

黄金の羽飾りが手首を囲むように配置されており、これまたリストバンドや……チアリーダーのポンポン……というのだろうか……タンポポの綿毛を思わせる形状となっている。

頭部もカラスアマゾンから情報量の減ったシンプルなものとなっており、全体的に丸みを帯びたかわいらしいデザインとなっている。

全体的なシルエットはチアリーダーの少女のそれなのだ。

この姿を見て誰がカラスアマゾンとアンク完全体が融合したエクスキメラだと即答できようか。

これがフロースの変身するエクスキメラ『エールフェネクス』。


エクスキメラのデザインはカプセルに内包された者の力とエクスライザーの使用者に影響されるため、実際に組み合わせてみるまではどのような姿になるかはわからないとは言うが……なんというかこれはコメントのしようがない。


「……なに?」


「いや、なにも」


エールフェネクスの全身を眺めていると、彼女の冷たい視線に気づく。

私は気を取り直し目の前の戦闘員たちに視線を向けると駆け出していく。


あぁ……早く終わらせたい。

ジニア様から与えられた任務とは言え、なんとも気まずいこの状況には耐えられない。


私はRe:BUILDに入隊してからずっと、この小娘が苦手なのだ。
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