Episode.12 REPOSE
「ん?どうしたよ勇騎さん?」
「……いや、なんでもねぇよ」
勇騎さんは何か隠してる。
それもひとつだけではなく、少なくともふたつほど。
それは分かる。
思わず反射的に聞いてしまったが、誰だって聞かれたくないことのひとつやふたつあるさ。
たとえそれが俺に関わることでも……。
正直不安はないと聞かれればそれは嘘になるが、勇騎さんは悪人じゃない。
俺は一言「そっか」と言うとそれ以上は追及するのは辞めることにした。
幸い他の連中も気にしていないみたいだしな。
「それはそうと……話を遮った俺がこんなこというのもアレだけどさ。
仮に昭和の岩石大首領で奴らが進行してくるとして、だ。
キングダークよりでけぇ奴をどうやって止めるんだよ……?
さっき貰った俺のガンダムもどきのカプセル、しばらく使えないっぽいし」
そういって俺はポケットからあのペスト医師から貰ったカプセルをふたつ取り出した。
カプセルに描かれていた鎧武とゼロワンの姿はモノクロとなっており、カプセルを起動しても『Empty』という電子音声しか鳴らず起動しない。
どうやらあのビッグバンブレイカーというガンダムもどきのロボットへのデュアルフュージョンは強力な反面、一度変身するとカプセルのエネルギーがチャージされるまで再変身不可能になるようだ。
キングダークを一方的に屠るほどのパワーをほぼノーリスクで叩き出せるんだ。
一定時間カプセルが起動不可能になるほどにエネルギーを消費するのは当然と言えば当然か。
「それは心配するな。岩石大首領は俺がやる」
「勇騎さんが?」
「あぁ、俺はこっちの世界に来てからああいう相手と何度もやりあってる」
「あー……なんかイメージできるわ……」
俺たちの世界にそんなデカイのわんさか出てきたか?って考えたけど、そういえば勇騎さんとはじめて共闘したときも巨大なエクスキメラも勇騎さんが倒してくれたんだっけ。
勇騎さんならなんとかしてくれるかも知れない。
「いや、ここは俺のアルティメットで」
「ここは呼道に任せとけ。
お前はあの豚の改造人間を……だろ?」
「将……」
2人の言う豚の改造人間という奴にはあったことはないが、毅さんが戦う改造人間は全て毅さんと同じ組織で作られた同類。
特にその豚の改造人間が改造人間たちのボスなら毅さんとも因縁浅からぬ相手だ。
全ての動物種改造人間の力を使えるというアニマルなら豚の改造人間を止められるかもしれない。
「わかってる。俺がピッグマンを止める……。
俺の同類がこれ以上悪さをするのは見てられないからな」
──でも、このまま毅さんに同族殺しをさせて本当にいいのか?
出来るものなら変わってやりたいが、俺が直接そいつと対峙すれば改造人間の味方をしてしまいそうだ。
この世界の人間に爪弾きにされたもの同士だから同情してるんだろう。
だから、言い出せなかった。
『豚の改造人間は俺が止める』『毅さんに同族殺しはさせない』って。
たとえ毅さんに同族殺しを強いることになっても、無責任にそう言いきることはできなかった。
アイツらと直接対峙すればその言葉を嘘にしてしまうってことを知ってるから。
今まで自分を支えてきた『どんな汚い手を使ってもこの街を守る』という薄っぺらい“正しさ”が紛い物だという現実を突きつけられることを知っているから。
アンゲロスだけじゃない。俺は……。
本当はこの街も、この街の人間も………、
「───勝利」
「毅さん……」
目まぐるしく廻る考えを遮るように毅さんが俺の肩に手を置いた。
優しく微笑む毅さんの瞳の奥には確かに強い意志が宿っている。
「心配するな。止めると言ってもまずは説得からだ。
俺たちだって改造されてるとはいえ“人間”だからな」
「いいのかよ……?ホントにそれで」
「あぁ。これは俺の問題でもあるからな。
だから任せてくれないか?」
人間の心も体も乗っ取り改造するアンゲロスとは異なり敵は“元”人間。
体が怪物になろうと、その事実は変わらない。
『死体を破壊する』だけのアンゲロスとは異なり改造人間は文字通り『人を殺す』ことになる。
きっとこの人は到底割り切ることなど出来ない現実を飲み込んで、改造人間を殺し続けてきたんだ。
それも自分の私利私欲ではなく、望まぬ形で怪物となった“仲間”を介錯する為に。
──俺はこの人のようにはなれない。
だから、俺にこの人の覚悟に水を差す資格はない。
この人と対等になれるほどの強い覚悟も、それを貫くための矜持も持ち合わせていない。
俺だって覚悟は決めたつもりだった。
たが、毅さんの覚悟の前には自分の覚悟など半端なものだと思い切らされた。
──半端者の紡ぐ言葉など、冒涜と同義ということだ。
「わかった……。他は任せてくれ」
結局、俺に出来ることは毅さんを信じることだけ。
そして俺に出来ることを成し遂げるだけ。
俺は毅さんに改造人間たちの親玉の件を任せることにしたのだ。
「……いや、なんでもねぇよ」
勇騎さんは何か隠してる。
それもひとつだけではなく、少なくともふたつほど。
それは分かる。
思わず反射的に聞いてしまったが、誰だって聞かれたくないことのひとつやふたつあるさ。
たとえそれが俺に関わることでも……。
正直不安はないと聞かれればそれは嘘になるが、勇騎さんは悪人じゃない。
俺は一言「そっか」と言うとそれ以上は追及するのは辞めることにした。
幸い他の連中も気にしていないみたいだしな。
「それはそうと……話を遮った俺がこんなこというのもアレだけどさ。
仮に昭和の岩石大首領で奴らが進行してくるとして、だ。
キングダークよりでけぇ奴をどうやって止めるんだよ……?
さっき貰った俺のガンダムもどきのカプセル、しばらく使えないっぽいし」
そういって俺はポケットからあのペスト医師から貰ったカプセルをふたつ取り出した。
カプセルに描かれていた鎧武とゼロワンの姿はモノクロとなっており、カプセルを起動しても『Empty』という電子音声しか鳴らず起動しない。
どうやらあのビッグバンブレイカーというガンダムもどきのロボットへのデュアルフュージョンは強力な反面、一度変身するとカプセルのエネルギーがチャージされるまで再変身不可能になるようだ。
キングダークを一方的に屠るほどのパワーをほぼノーリスクで叩き出せるんだ。
一定時間カプセルが起動不可能になるほどにエネルギーを消費するのは当然と言えば当然か。
「それは心配するな。岩石大首領は俺がやる」
「勇騎さんが?」
「あぁ、俺はこっちの世界に来てからああいう相手と何度もやりあってる」
「あー……なんかイメージできるわ……」
俺たちの世界にそんなデカイのわんさか出てきたか?って考えたけど、そういえば勇騎さんとはじめて共闘したときも巨大なエクスキメラも勇騎さんが倒してくれたんだっけ。
勇騎さんならなんとかしてくれるかも知れない。
「いや、ここは俺のアルティメットで」
「ここは呼道に任せとけ。
お前はあの豚の改造人間を……だろ?」
「将……」
2人の言う豚の改造人間という奴にはあったことはないが、毅さんが戦う改造人間は全て毅さんと同じ組織で作られた同類。
特にその豚の改造人間が改造人間たちのボスなら毅さんとも因縁浅からぬ相手だ。
全ての動物種改造人間の力を使えるというアニマルなら豚の改造人間を止められるかもしれない。
「わかってる。俺がピッグマンを止める……。
俺の同類がこれ以上悪さをするのは見てられないからな」
──でも、このまま毅さんに同族殺しをさせて本当にいいのか?
出来るものなら変わってやりたいが、俺が直接そいつと対峙すれば改造人間の味方をしてしまいそうだ。
この世界の人間に爪弾きにされたもの同士だから同情してるんだろう。
だから、言い出せなかった。
『豚の改造人間は俺が止める』『毅さんに同族殺しはさせない』って。
たとえ毅さんに同族殺しを強いることになっても、無責任にそう言いきることはできなかった。
アイツらと直接対峙すればその言葉を嘘にしてしまうってことを知ってるから。
今まで自分を支えてきた『どんな汚い手を使ってもこの街を守る』という薄っぺらい“正しさ”が紛い物だという現実を突きつけられることを知っているから。
アンゲロスだけじゃない。俺は……。
本当はこの街も、この街の人間も………、
「───勝利」
「毅さん……」
目まぐるしく廻る考えを遮るように毅さんが俺の肩に手を置いた。
優しく微笑む毅さんの瞳の奥には確かに強い意志が宿っている。
「心配するな。止めると言ってもまずは説得からだ。
俺たちだって改造されてるとはいえ“人間”だからな」
「いいのかよ……?ホントにそれで」
「あぁ。これは俺の問題でもあるからな。
だから任せてくれないか?」
人間の心も体も乗っ取り改造するアンゲロスとは異なり敵は“元”人間。
体が怪物になろうと、その事実は変わらない。
『死体を破壊する』だけのアンゲロスとは異なり改造人間は文字通り『人を殺す』ことになる。
きっとこの人は到底割り切ることなど出来ない現実を飲み込んで、改造人間を殺し続けてきたんだ。
それも自分の私利私欲ではなく、望まぬ形で怪物となった“仲間”を介錯する為に。
──俺はこの人のようにはなれない。
だから、俺にこの人の覚悟に水を差す資格はない。
この人と対等になれるほどの強い覚悟も、それを貫くための矜持も持ち合わせていない。
俺だって覚悟は決めたつもりだった。
たが、毅さんの覚悟の前には自分の覚悟など半端なものだと思い切らされた。
──半端者の紡ぐ言葉など、冒涜と同義ということだ。
「わかった……。他は任せてくれ」
結局、俺に出来ることは毅さんを信じることだけ。
そして俺に出来ることを成し遂げるだけ。
俺は毅さんに改造人間たちの親玉の件を任せることにしたのだ。