Episode.12 REPOSE

────

2022年8月15日。

キングダークや改造人間たちとの戦いが終わったその日の夜。

俺、椿勝利は戦闘で負った怪我を治療する為にBATTLERに来ていたのだが、そこで仮面ライダーアニマルこと桐山毅さんから恐ろしい計画について聞かされることとなった。



「……はぁ!?
3日後に昼間のキングダークよりデカイ巨人で姫矢を襲撃するって!?」

「あぁ、たしかな情報だ……。
改造人間たちのボスが直々に先々布告してきたからな」

「会ったのか?」

「あぁ、そこにいる赤津将と一緒にな……。
スーツを着たブタみたいな奴だったよ」

「ジブリ映画かな?」


スパイダーマッといいブタの改造人間といい、ジェネシスコーポレーションの改造人間たちはどうもシュールなナリの奴が多いようで……。

それでもやろうとしてることはかなりエグいけど。



「キングダークでダメだったから岩石大首領ってか……ふざけた野郎だぜ」

「将さんのいいたいことは分かるけどさ……」


俺は改造人間じゃないし、改造人間たちがどんな人生を送ってきたのかはわからない。

だけど、改造人間たちの抱える想いは想像できる。


それは“憎悪”。

理不尽に改造され、理不尽に居場所を奪われ、そして理不尽に殺される。

俺たちだって同じだ。
孤児になって、理不尽に居場所を奪われて、理不尽な暴力に怯えて、理不尽に仲間が死んでいって……。

今でも死んでいった仲間たちの怨念がこの街に、そして生き残った俺の全身にへばりついてるようだ。


改造人間たちも同じなんだろう。

この世と人を恨み呪って死ぬか、それとも終わらない戦いを続けるか……。

答えはふたつにひとつ。
それ以外の選択肢は用意されてない。



──俺たちは、爪弾きにされた弱者なんだ。






「……どうした椿?」


「いや、なんでもない」


そして、こんなことを話したところで誰も理解なんて出来はしない。

『恨みや憎しみをぶつけたところで帰ってくるものはない』
『死んでいった奴らはそれを望んではいない』

俺たちにだってそんなことは分かってる。


だったらどうすればいいんだ。
どうやって生きろというんだ。

惨めに迫害され続けろと?
そして惨めに死んでいけと?


綺麗事を並べるのは簡単だろうさ。
口だけならいくらでも取り繕える。


『弱者とされた者』の怒り、憎しみ……そしてその中に秘められた悲しみは当事者にしか理解できない。

俺から言わせれば、どこまでいったってコイツらは“幸せ者の強者”だ。

もはや根本的に別の生き物なんだ。

俺たちとコイツらの溝は決して埋まりはしない。


故に俺は……口から出そうになった言葉を飲み込んだ。



「とりあえず問題はその岩石大首領とやらだろうな……」


……。

考えても仕方ないことがグルグルと脳を駆け巡ったようだ。

俺は誤魔化すように話題を変えた。


「よく知らねぇんだけど、話を聞く限りその岩石大首領ってキングダークより大きいんだよな?」

「あぁ、体長4000mだそうだ」

いや、でかすぎねぇ?
富士山よりデカイじゃねぇか。

ホントにそんなデカイのがこの街に来るの?

ていうかそんなにデカかったら逆に殆ど動けねぇだろ……。


「将、それは仮面ライダーオーズたちが戦った『歴史が変わった世界の岩石大首領』だ」

困惑する俺を余所に、岩石大首領どころか歴代仮面ライダーが戦ってきた怪人に詳しそうな毅さんが口を開いた。


「たしかに歩くだけで天変地異を起こせるほどに強力な力を持っているが、その力を解放すれば奴らも自滅するだけ。

ジェネシスコーポレーション残党たちの戦力に組み込むのであれば、おそらく奴らが使ってくるのは昭和の時代に仮面ライダーストロンガーと戦った『最初の岩石大首領』だろうな」


「なるほどな……。
まっ、あの豚野郎が世界を巻き込んだ自爆テロなんてイカれた真似しそうにねぇもんな」

うんうんと頷くこれまた歴代ライダーや怪人の歴史に詳しそうな将さん。


「待って待って。話を整理させて。
そもそも岩石大首領って何体もいるの?」

ううむ、油断していたら全く話についていけなくなってしまった。

歴史が変わった世界の方?
昭和の時代?最初の方?

そもそも俺は岩石大首領とやらもよく分かってない。

思わず将さんたちの話を遮ってしまった。
3/7ページ
スキ