Episode.11 DESPAIR

「ルーシー!使える武器は!?」

『左手の操縦桿にボタンが何個かあるはずです。
それで武装を選択してください!』

「オーケー!」

毅さんたちが合流するまで少しばかり時間がかかる。
それまでに俺が出来ることはキングダークを弱らせること。
しかも採石場に来た今なら周囲の被害を気にせずに存分に戦える。

俺はルーシーの指示通りに左手の操縦桿のボタンを押した。

すると正面のモニターにいくつか武器の形をしたアイコンが映し出される。

『二振りの錨』に『薙刀』、『ミサイル』……それから両手の指や複眼から何かを発射しているようなアイコンもある。

どうやらこの5項目から武装を選択して使用するようだ。



「だったら……!」

俺はこの中から一番最初に現れた『二振りの錨』が描かれたアイコンを選択し、トリガーを押す。

すると、ガコンという音と共に胸部に装着されていたマンモスの牙を思わせる装備がパージされ、自動的にビッグバンブレイカーの両手に収まった。


武装の名前は『グレインゴット』。
後から知ったのだが、元々はゼロワン・ブレイキングマンモスの専用武器だったが、ブレイキングマンモスの力を継承したビッグバンブレイカーも使用出来るようだ。


「よーし……いっくぜェェ!」

グレインゴットを装備したのを確認すると、操縦桿を前に押し込み、右足のペダルを踏み込んだ。

コンソールのスイッチは戦闘モードのものがオンになっている。
先ほど市街地でキングダークを殴り飛ばした時と全く同じ操作だ。
違うのは武器を装備していることのみ。

ビッグバンブレイカーは先ほどと同じように勢いよく駆け出し、キングダークに肉薄した。


「……!」

対するキングダークも負けじとこちらの接近を許すまいと両手の指からミサイルを放つ。

何度も喰らった攻撃だが、その程度の威力ではビッグバンブレイカーは傷ひとつつくことはない。

ビッグバンブレイカーはキングダークの懐に潜り込むとグレインゴットを振り上げた。



「……!!!」

ガギンッという鈍い音がコックピット越しからでも響く。
切り裂くというよりかは巨大な鉄の塊叩きつけているかのような音だ。

グレインゴットによる一撃を受け、キングダークは大きく仰け反った。

その隙を見逃すわけない。


「はぁっ!!」

更に追撃するべく、ペダルを踏んでスラスターを吹かし肉薄。

右手の操縦桿を押し出すとグレインゴッドを握った右腕で何度もキングダークを殴り付けた。
どうやら相手との間合いによって最適な攻撃方法を自動で選択してくれるようだ。

武器で攻撃してくれるものだと思っていたから少しだけ予定外だったが……まぁいいだろう。

俺が思っている以上にこのロボットに搭載されているOSは優秀なようだ。



「もういっちょ!」

操縦桿を操作し武装を薙刀に変更。
グレインゴットが胸部に再び連結されると、今度は腰の『スイカの蔕のように折り畳まれた薙刀』を握る。

それと共に折り畳まれた両の刃が展開。スイカの断面を模した薙刀となる。

この武装は『スイカ双刃刀』。

元々は鎧武・スイカアームズの武装であり、全長の長さを活かしプロペラのように回転させることで対象を切り裂くことができる武装なのだそうだ。

そしてスイカ双刃刀もグレインゴットも、それを使っていたライダーたちよりも巨大な体躯を持つビッグバンブレイカーに合わせて大型化されているとのことだ。

ちなみに……『されている』『なのだ』と断言していないのは、これも後から仲間から聞いた話であって俺自身の知識ではないからだ。

ローズやリベルのように仲間となったライダーは別だが、ゼロワンのように直接対峙したライダーならまだしも鎧武に至ってはこのカプセルを手に入れて初めて存在を知ったからな。


「そらぁっ!!」

知っての通り生まれて初めて知ったライダーの、生まれて初めて見た武器を装備し使用しているのだが、ビッグバンブレイカーに搭載されているOSは驚くほどに優秀だ。

俺が使い方を知らなくても、OSがその使い方を『知っている』。
俺はただコックピットから行動を『命令』し『実行させるだけ』。

あとはマシーンが稼動し戦ってくれる。


「いっけーーー!!」

スイカ双刃刀を握るリモート・マニピュレーター……すなわち『手』がプロペラの如く回転する。

これは飛行を目的とするものではなく、目の前の対象を切断するためのものだ。

そして今度は腕を勢いよく振るい、奴の胴体に回転するスイカ双刃刀を叩きつけた。

握り手を中心に高速回転するスイカ双刃刀から身を護るべく手を交差させ刃を受け止めた。
しかし、スイカ双刃刀のの刃はキングダークの腕間接の隙間に潜り込み……


「!?!?!?」

キングダークの腕を切断。
攻撃と防御、両方の要を奪うことに成功した。




「……ルーシー、毅さんたちは合流は無理か?」

『彼らも戦いが長引いてるようです……ごめんなさい』

「謝ることじゃない。ここは……俺がやる」

ルーシーは一応毅さんたちに通信を送ってくれてはいたようだが、毅さんたちも強敵と戦っている以上、こちらと合流することは限りなく不可能とみた。

故に、俺がひとりで決着をつけなければならない。
だが人がいないとはいえキングダークを採石場で爆破すれば市街地にまで被害がおよぶ可能性が高い。

そこでアニマルのブラックホールを使い、キングダークを次元の狭間に追放する手立てだったのだが……毅さんが合流できないのならば仕方ない。


次元の狭間に追放出来ないのなら、宇宙の果てに追放するだけだ。



「これで終わりにする!」


《ブレイキング!スカッシュ!!》


俺はエクスライザーに鎧武とゼロワンのカプセルを再び読み込ませ、エクスライザーをコンソールパネルのスロットに装填した。

エクスライザーで増幅されたエネルギーがビッグバンブレイカーという巨大なマシンの中で更に増幅され、それはやがて右手の拳に収束されスイカの形となる。

両手のレバーを押し込み、右足のペダルを踏み込むと両腕を失ったキングダークの胴体にアッパーを叩き込んだ。



「■■■■■■■ーーー!!」


大地を揺るがすほどの叫び声をあげ、キングダークの体は遥か上空に打ち上げられる。

更に追撃としてスラスターを吹かし飛び上がるとキングダークにロックオン。

右手の拳に収束していたエネルギーはそのまま右足の爪先へと流れ込んでいく。
爪先にエネルギーが収束し、マンモスの蹄のような形となるとビッグバンブレイカーは右足を突き出した。



「これでも……喰らえェェェェェ!!」

上空に打ち上げられたキングダークの胴体にビッグバンブレイカーの必殺キックが叩き込まれる。

それと同時に爪先に収束したエネルギーが蹴りのインパクトと共に炸裂し、キングダークの体は炸裂したエネルギーの衝撃によって更に勢いを伴って上空へと舞い上がっていった。



「……ふぅぃ」


やがてビッグバンブレイカーのモニター越しにキングダークが宇宙空間に放り出され、爆発四散したのを確認すると俺はコックピットの中で一息ついた。

これで『闇の王』の名を関する人型兵器を俺たちの世界から追放した。

あとは、街に戻り予期せぬ相手と遭遇しているであろう毅さんたちを救うだけ。


……俺の戦いはまだ終わってはいない。
47/48ページ
スキ