Episode.11 DESPAIR

『で、デカッ!!』

『ロボットか!?』

『まさか椿か!?』


俺の足元のモニターにはローズとヒメ、アニマル……それからいつの間にか合流していたクロスの姿が写し出され、彼らの声がスピーカー越しに聞こえてくる。
わりぃな、カプセル使ったのはいいけど俺も使い方わかんねーんだわ。


そして正面のモニターにはキングダークの姿。


俺があの黒い仮面ライダーと戦ってる間も必死になってキングダークを誘導してくれてたのだろう。

しかし、キングダークは俺……もといビッグバンブレイカーの姿を視界に捉えるとこちらに向かってくる。



「ま、マジか!?……っ!!」

反射的に両手に握られた操縦桿を押し込むと機械の両腕が稼働した。
しかし、あくまでもただ腕を伸ばしただけ。

攻撃になるはずもなく、逆にキングダークの拳を受けてしまった。


「あぁっ!!」

キングダークの攻撃を喰らうも多少身じろぐだけでこの機械で倒れることなどはなかった。

しかしコックピット内の衝撃は凄まじいものであり、激しい振動が俺の体を襲う。



「嘘だろ……どうすりゃいいんだよ……!

るーちゃん!るーちゃーーーーーーーーーん!!」


俺は今、巨大なロボットに乗ってるけど、操縦の仕方なんか分からない。
適当にレバーをカチャカチャやっても腕を伸ばしたり引っ込めたりするだけでそれが攻撃になどなってはいない。


それならやることはひとつ。

そういうのに強そうな奴に助けを求めること。
そして操縦の仕方を知ることだ。


俺はヴァルツのメット内の機能で最近仲間になった『彼女』を呼んだ。



『呼びましたか?』

数秒後、コックピット内のモニターに『彼女』の姿が写し出された。

幼くも整った顔立ちの少女。天から舞い降りた美少女。


そう、ルーシーだ。



「よ、よかった!なんか新しいカプセルで変身したらなんかでっかいロボットに乗せられて!
なんかでっかいロボットとこれから戦うんだけど!
全然操縦の仕方とか分かんなくて!!」


「お、落ち着いてください!
今、勝利さんのスーツを経由してそのでっかいロボットと同期して操縦の仕方調べますから!」


そういうとモニター越しのルーシーの両耳に当たるモジュールが緑色に輝く。
それと同時にこちらのコックピット内の計器がひとりでに動き出した。

この間の戦闘ではライダーシステムのリミッターを解除したり、敵の能力のラーニングをやってくれたりと重要な局面で助けてくれたのが彼女だ。


今回もまさかルーシーに救われるとは……。
本当にこの子は凄いよ。
フルチンになってたお父さんとは違って。



「……っ……頼む!」


こうしてる間にもキングダークの攻撃は続く。
拳による一撃や指からのミサイル。
それら全てはビッグバンブレイカーには有効打にはなりえない。

しかし、悠長に立ち尽くしている訳にもいかない。

このコックピットはすごくよく揺れるし、それに……街の被害も広がる一方だ。

この街が炎に包まれる光景は、もうみたくないのだ。



『……アナライズ完了』


数分もたたぬうちに、ルーシーの口からビッグバンブレイカーのデータ解析の終了を告げる言葉が発せられた。



『勝利さん、コンソールの戦闘モードのスイッチをオンにして、右足のペダルを踏みながら両腕の操縦桿をおもいっきり前に突き出してください!』


「お、おう!」

とりあえずダメージは効いていないがこのままボサッとしているわけにはいかない。
俺はルーシーの指示通りに行動した。
正面のコンソールパネルの戦闘モードと記載されたスイッチをオンにし、右足のペダルを踏みながら両方の操縦桿を前に押し込んだ。



すると……



「う、うぉっ!?」

なんと先ほどまで手をバタバタさせることしか出来なかったビッグバンブレイカーがキングダーク目掛けて走り出したではないか。


「や、やべっ!」

ひとりでに動き出したビッグバンブレイカーに対し、キングダークは拳を振りかざした。
このままじゃ奴の拳が命中する!

しかし、それは杞憂だった。

キングダークの間合いに入るとキングダークの拳を紙一重で避け、ひとりでにパンチを放ち、キングダークの巨体を殴り飛ばしたのだ。



「う、うっそ……なんで?」


これには俺もコックピットの中で呆然とするしかなかった。

俺はただルーシーの言われた通りの簡単な動作しかしていない。

それにも関わらず、ビッグバンブレイカーは『キングダークの方へ走り出す』『キングダークの攻撃を避ける』『キングダークに攻撃をしかける』
といった動作をこなして見せたのだ。

なんで子供でもできる単純な操作でこんな複雑な動きが出来るんだ……?
夢でも見てるのか……?

しかしそれは夢ではなく、れっきとした現実であり、原理原則もしっかりとある。


『勝利さんが乗っているこのロボットは殆どの動作をコンピューター制御で行う仕様になってるんです。
シューティングゲームのキャラクターを操作するように決められた操作を行うことであらかじめ組まれたプログラムに従い稼働するという感じですね。
操作方法さえ覚えれば小さな子供でも扱えますよ」


「なんつーか、すげぇなー……」


複雑に組み込まれたプログラムによって作られたオペレーティングシステムによってこの巨大ロボットは稼働する。

コックピットにいる俺は状況に応じて理想の動作を行うためのプログラムを呼び出すための操作をすればいいわけだ。


「これなら……いける!!」


戦いかたはわかった。
まだまだルーシーのサポートを得る必要はあるが、これでなんとか作戦を遂行できる。



《空に聳える鉄の巨神!無敵の力は誰が為に!》


俺の戦う意思に呼応するようにビッグバンブレイカーの全身にエネルギーが迸り、再び変身音が鳴り響く。

無敵の力を宿す鉄の巨神は今この街の守護神となった。


なら迷う必要はない。一気にいかせてもらう。
さぁ、ここからが俺たちのターンだ……!


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