Episode.11 DESPAIR

「やるしか……ねぇよな」


なんとかキングダークを誘導しているようだが、理緒……ローズやヒメも疲弊している。

途中で別れた毅さんも心配だ。

それに俺もあの黒いライダーのせいで体力が限界に近づいている。


罠という可能性も考えられたが、ここで躊躇っていても街が破壊されるだけ。

俺の“ペスト医師”の口車に乗ってやることにした。


だけど……これはある意味『罠』だと思う。

ホント、“ある意味”罠だと思う。



《鎧武!スイカ!》

《ゼロワン!ブレイキングマンモス!》


2つのカプセルを同時に起動。
カプセルからコールされた名前は『鎧武』と『ゼロワン』。

鎧武はともかく、ゼロワンといえばいつしか埠頭で戦ったあの黄色いバッタのライダーだ。
でもこのカプセルに描かれている姿は埠頭で戦った時の姿とは全く違う。
マンモスとは言うが……やっぱりどこからどう見てもロボットにしか見えない。

それは鎧武の方も同じ。
こちらもロボットやライダーが着込む大きな鎧に見える。


俺は2つのカプセルをホルダーにセットし、エクスライザーでリードした。



「変身!」


《デュアルフュージョン!ヴァルツ!ビッグバンブレイカー!》


胸の中心でトリガーを引き、体に刻印が刻まれる。
本来ならこの後、2体のライダーの幻影が現れ、変身シークエンスに入るのだが………



「……え?」


俺の隣に現れた二大ライダーの幻影は……なんというか、デカイ。



「な………なにそれ……で、でかくねェ!?」

両者ともカプセルに描かれていた姿のままだが……

スイカを思わせるカラーリングの大鎧を纏った3mクラスの『鎧武』と、マンモスの顔が張り付いているようにも見える7mクラスの近未来的なロボットの『ゼロワン』………。


うーん……やっぱりコレ、ライダーじゃないじゃん。
もうスーパーロボットじゃん。


てか、これでどうやって“変身”すんの?



《空に聳える鉄(クロガネ)の巨神!無敵の力は誰が為に!》


「待って!待って!どうしろって言うんだよコレェ!?

わっ……わーーーーーー!?」


うーん……我ながらなんとも情けない。

俺の疑問に答えてくれる奴なんかいやしない……そう主張するかの如くお馴染みの変身音声が再生され、二大ライダーは融合を果たす。

そしてこれまた巨大な姿のライダー……もといスーパーロボットの姿が形成されると俺の眼前は眩い光に包まれた。


何がどうなってるかなんて俺にはわからない。

ただこれが新しいヴァルツ……『ビッグバンブレイカー』への変身ということなのだろう。


………いや、全然『変身』って感じはしねーんだけどな。



やがて、光が収束し視界が開けると俺の目の前に飛び込んできたのは………





「え?」

一対の操縦桿。
内壁がすべてモニターになっており、外の世界の光景が映し出されている。

そして俺はレーシングカーのものによく似たシートに座らされている。
しかもヴァルツ・ベーシックフェイズの姿のままで。

よくよくみてみれば足元にはペダルが、そして胴体周辺には何らかのスイッチが備え付けられたパネルがある。


もしかして……これはコックピットという奴だろうか。




「ちょっと待って。

俺……ロボットなんて動かしたことねーんだけど」


何度でも言ってやる。
仮面ライダーは仮面被って、ライダースーツ着て、バイクに乗るから『仮面ライダー』なんだ。

なんでバイクじゃなくてロボットに乗らなきゃなんねーんだ。

そもそも変身してねーじゃん。

……もうロボットじゃん。
仮面ライダーじゃねぇじゃん。


仮面ライダーがウルトラマンみたいに巨大になるならまだ分かるよ?
なんか昔、そういう仮面ライダーいたもんな。

俺もなるならてっきりそういうもんだと思ってたよ。


でもさ、これはナシだろ。

たしかにこれならキングダークとやりあえるよ?





だけどさ……大事なこと忘れてるだろ……。






「動かし方わかんねェェェェーーーーーーーーー!!!」


あぁ、バカみたいだろ?
でもさ、君たちは人生の中でガンダムを操縦することなんてないだろ?

俺だってねーよ。
人生で仮面ライダーに変身することはあってもガンダムみたいなロボット操縦させられるなんて思ってなかったよ。

コレ、ホンッット……どうしたらいいんだよーー!?
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