Episode.11 DESPAIR
「っ……!」
押し潰される直前、俺はワイルドローゼスの高速移動能力を発揮した。
無論、ドームの中に閉じ込められ、押し潰されるのを待っているだけの俺にこの高速移動を十全に使うことは不可能。
しかし、ひとつだけその恩恵を受けられることがある。
それは自分の行動のスピードの上昇。
そして、ドームが縮小していくスピードが遅くなっているように感じることだ。
《ローズ!バースト!》
俺はエクスライザーでローズカプセルを読み込ませた。
この危機を脱するには脳波によるカプセルの能力の簡易解放だけでは足りない。
前回のようにルーシーのサポートも受けていない上、ここでリミッター解除なんて裏技を使うわけにもいかない。
ここは正しい手順を踏み、カプセルの力を解放させなければならないと踏んだのだ。
ワイルドローゼスは身体能力の優れたαにローズの様々な特殊能力を宿したような姿であり、αには特殊能力らしいものはない。
そのためこの姿で特殊能力に優れた相手との戦うとなると、どうしてもローズの力が頼みの綱となる。
「よしっ……!これならっ!!」
解放されたカプセルの力。
それは俺自身の体にすらも変化を及ぼし、俺の体を分解し、薔薇の花弁の塊へと変えさせたのだ。
直後、高速移動能力を解除。
瞬く間に豆の木のドームが俺の体を押し潰すように収縮した。
ドームの収縮により、薔薇の花弁の塊となった俺の体はちょうど紙吹雪のように豆の木同士の隙間から押し出されるようにして排出された。
ドームの中に花弁が残ってそうな気はするが今は気にしないことにしよう。
「終わったか……」
目の前のアイツが勝利を確信したかのように呟いた。
ま、そうだろうよ……。
端から見りゃ俺が押し潰されて殺されたように見えるしな。
だけど………
「勝利を確信するのは……まだ早いんじゃないか?」
「なにっ……!?」
散り散りになった薔薇の花弁のひとつひとつが俺の体であり、それら全てが刃となる。
薔薇の花弁となった俺は巨大な嵐となり、黒いライダーに纏わりついた。
「ぐっ……!」
油断していたのだろうか、奴はバックステップで避けようとしたものの間に合わずに薔薇の花弁の嵐に呑まれた。
たしかに奴は強いさ。
それに傷だらけになった腰のドライバーを見れば鍛練だって怠ってないのもわかる。
ライダーシステムの性能差がなければ苦戦していたのは俺の方だ。
それも認めるよ。
だけど……いや“だからこそ”俺のようなクズを潜在的に見下していたんだろう。
『こんな奴に負けるはずなんてない』って。
あの黒いライダーがどんな人が変身しているかはわからない。
仮面越しで素顔もわからないけど、才能もあるしその才能やライダーシステムの能力を活かすための努力もしている。
そしてその努力や才能に裏打ちされた自信も持ち合わせている。
それは戦いながら相手の言動を観察してればなんとなく察しがつく。
──おそらく病的に生真面目で男勝りな女なんだろうさ。
だから自分よりも格下の相手を潜在的に見下す傾向にある。
だけど、ふとした時にその格下と見下した相手に足元を掬われると……
──こうやって何も出来なくなるんだよな!
「ぐっ……あぁぁっ……!!」
《EGG&CHICKEN!》
竜巻から脱出を目論む黒いライダーは先ほどと同様に別のメモリを装填しようとメモリを起動しスロットに捩じ込もうと右手を動かした。
しかし、俺の体が変化した薔薇の花弁の集合体はまるで蛇のように奴の腕に纏わりつき羽交い締めにした。
実態を持たない自分の体が普段の自分の体以上に動いている。
なんとも不思議な気分だが、これで奴はメモリを使えない。
現にせっかく起動させたガイアメモリを挿せずにいるからな。
「フィナーレといこうぜェ!」
《エクスライザーソニック!》
薔薇の花弁の集合体となり実態を持たない今の体でも必殺技は発動可能なようだ。
勝手に俺の脳波を読み込んだのか、いつものガイダンスボイスと共に更に力が漲ってきたのがわかった。
俺は薔薇の花弁となった自身の体で奴の全身に張り付くと一斉に薔薇の蔦を張り巡らせた。
花弁の一枚一枚から蔦が生えるという薔薇という植物の生態を思いっきり無視したような姿となったが致し方あるまい。
薔薇の花弁も一枚一枚が鋭い刃であり、そこから伸びた蔦にも棘に覆われている。
蔦は奴の体を締め上げると、その棘を奴の体に食い込ませた。
空豆のドームに閉じ込めたつもりでいたのに今度は逆に自分の方が薔薇の蔦と花弁に捉えられているとはなんとも皮肉な話だ。
勝負は時の運とも言うが、どうやらその運とやらを掴んだのは俺だったようだ。
「これで……
ゲームオーバーだーーーーー!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
張り巡らせた棘からエネルギーを直接流し込みスパークさせる。
電撃による攻撃とはまた違うそれはエクスライザーを稼働させるリヒトシュトロームに由来するものであり、リヒトシュトロームを体内に流し込まれた対象は血液中のヘモグロビンとリヒトシュトロームの化合により体内から爆発四散する。
奴はそのライダーシステムで肉体変化させている為か爆散する様子こそないが、攻撃によるダメージは確実に受けている様子。
たとえ完全に撃破出来なくても戦闘不能にはできるはずだ。
どう考えてもα要素のない、仮面ライダーローズの専用技にみえるこの技だが、ローズカプセルの力を解放したままだったのが原因だろう。
だけど実力で劣る俺が奴に勝つのは今この瞬間だけだ。
俺は薔薇の花弁と蔦となった自分の全身で奴を締め上げ、渾身の力でリヒトシュトロームを流し続けた。
押し潰される直前、俺はワイルドローゼスの高速移動能力を発揮した。
無論、ドームの中に閉じ込められ、押し潰されるのを待っているだけの俺にこの高速移動を十全に使うことは不可能。
しかし、ひとつだけその恩恵を受けられることがある。
それは自分の行動のスピードの上昇。
そして、ドームが縮小していくスピードが遅くなっているように感じることだ。
《ローズ!バースト!》
俺はエクスライザーでローズカプセルを読み込ませた。
この危機を脱するには脳波によるカプセルの能力の簡易解放だけでは足りない。
前回のようにルーシーのサポートも受けていない上、ここでリミッター解除なんて裏技を使うわけにもいかない。
ここは正しい手順を踏み、カプセルの力を解放させなければならないと踏んだのだ。
ワイルドローゼスは身体能力の優れたαにローズの様々な特殊能力を宿したような姿であり、αには特殊能力らしいものはない。
そのためこの姿で特殊能力に優れた相手との戦うとなると、どうしてもローズの力が頼みの綱となる。
「よしっ……!これならっ!!」
解放されたカプセルの力。
それは俺自身の体にすらも変化を及ぼし、俺の体を分解し、薔薇の花弁の塊へと変えさせたのだ。
直後、高速移動能力を解除。
瞬く間に豆の木のドームが俺の体を押し潰すように収縮した。
ドームの収縮により、薔薇の花弁の塊となった俺の体はちょうど紙吹雪のように豆の木同士の隙間から押し出されるようにして排出された。
ドームの中に花弁が残ってそうな気はするが今は気にしないことにしよう。
「終わったか……」
目の前のアイツが勝利を確信したかのように呟いた。
ま、そうだろうよ……。
端から見りゃ俺が押し潰されて殺されたように見えるしな。
だけど………
「勝利を確信するのは……まだ早いんじゃないか?」
「なにっ……!?」
散り散りになった薔薇の花弁のひとつひとつが俺の体であり、それら全てが刃となる。
薔薇の花弁となった俺は巨大な嵐となり、黒いライダーに纏わりついた。
「ぐっ……!」
油断していたのだろうか、奴はバックステップで避けようとしたものの間に合わずに薔薇の花弁の嵐に呑まれた。
たしかに奴は強いさ。
それに傷だらけになった腰のドライバーを見れば鍛練だって怠ってないのもわかる。
ライダーシステムの性能差がなければ苦戦していたのは俺の方だ。
それも認めるよ。
だけど……いや“だからこそ”俺のようなクズを潜在的に見下していたんだろう。
『こんな奴に負けるはずなんてない』って。
あの黒いライダーがどんな人が変身しているかはわからない。
仮面越しで素顔もわからないけど、才能もあるしその才能やライダーシステムの能力を活かすための努力もしている。
そしてその努力や才能に裏打ちされた自信も持ち合わせている。
それは戦いながら相手の言動を観察してればなんとなく察しがつく。
──おそらく病的に生真面目で男勝りな女なんだろうさ。
だから自分よりも格下の相手を潜在的に見下す傾向にある。
だけど、ふとした時にその格下と見下した相手に足元を掬われると……
──こうやって何も出来なくなるんだよな!
「ぐっ……あぁぁっ……!!」
《EGG&CHICKEN!》
竜巻から脱出を目論む黒いライダーは先ほどと同様に別のメモリを装填しようとメモリを起動しスロットに捩じ込もうと右手を動かした。
しかし、俺の体が変化した薔薇の花弁の集合体はまるで蛇のように奴の腕に纏わりつき羽交い締めにした。
実態を持たない自分の体が普段の自分の体以上に動いている。
なんとも不思議な気分だが、これで奴はメモリを使えない。
現にせっかく起動させたガイアメモリを挿せずにいるからな。
「フィナーレといこうぜェ!」
《エクスライザーソニック!》
薔薇の花弁の集合体となり実態を持たない今の体でも必殺技は発動可能なようだ。
勝手に俺の脳波を読み込んだのか、いつものガイダンスボイスと共に更に力が漲ってきたのがわかった。
俺は薔薇の花弁となった自身の体で奴の全身に張り付くと一斉に薔薇の蔦を張り巡らせた。
花弁の一枚一枚から蔦が生えるという薔薇という植物の生態を思いっきり無視したような姿となったが致し方あるまい。
薔薇の花弁も一枚一枚が鋭い刃であり、そこから伸びた蔦にも棘に覆われている。
蔦は奴の体を締め上げると、その棘を奴の体に食い込ませた。
空豆のドームに閉じ込めたつもりでいたのに今度は逆に自分の方が薔薇の蔦と花弁に捉えられているとはなんとも皮肉な話だ。
勝負は時の運とも言うが、どうやらその運とやらを掴んだのは俺だったようだ。
「これで……
ゲームオーバーだーーーーー!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
張り巡らせた棘からエネルギーを直接流し込みスパークさせる。
電撃による攻撃とはまた違うそれはエクスライザーを稼働させるリヒトシュトロームに由来するものであり、リヒトシュトロームを体内に流し込まれた対象は血液中のヘモグロビンとリヒトシュトロームの化合により体内から爆発四散する。
奴はそのライダーシステムで肉体変化させている為か爆散する様子こそないが、攻撃によるダメージは確実に受けている様子。
たとえ完全に撃破出来なくても戦闘不能にはできるはずだ。
どう考えてもα要素のない、仮面ライダーローズの専用技にみえるこの技だが、ローズカプセルの力を解放したままだったのが原因だろう。
だけど実力で劣る俺が奴に勝つのは今この瞬間だけだ。
俺は薔薇の花弁と蔦となった自分の全身で奴を締め上げ、渾身の力でリヒトシュトロームを流し続けた。