Episode.11 DESPAIR
「なんだコイツ……ブタ……?」
突如現れた豚の改造人間に困惑するクロス。
目の前の怪人を知らなければ当然の反応だ。
なんせ豚がコートやハットを着込んでダンディーにキメてるからな。
端から見ればギャグにも見えるだろう。
だがコイツはジェネシスコーポレーションの幹部。
それも厳密に言えば組織が壊滅した後に残党を纏めていたとされる改造人間だ。
俺も実のことを言えば直接対峙するのは今日が初めてだが……あのシュールな見た目からは想像もつかない威圧感だ。
肌がピリつき、喉が渇く。
──コイツは……“強い”。
しかもこれまで俺が戦ってきた強敵たちとはまた違った強さをもっている。
「気を付けろ……コイツは
───グッ!!」
隣にいるクロスに警戒を促す間もなく、俺の体は大きくのけ反った。
遅れてやってくる胸部の痛み。
視線を前方に向ければ拳を突き出している豚型改造人間を視界に捉えることができた。
スーパーフォームの強化された装甲を持ってしても防ぎ切れぬ打撃……通常形態のアニマルなら確実に殺られていた。
俺は空中ですぐさま体勢を建て直すと着地する。
その体の柔軟さは猫型改造人間から継承したものだ。
猫はどんなに高いところから落とされても瞬時に体勢を建て直し、安全に着地出来てしまうほどの柔軟さを持つ。
まさかこんなところで会ったこともなかった猫型改造人間の能力を使用することになろうとは。
「ちっ……!!」
俺を護るようにクロスが立ちはだかるとクロスは奴にソバットを叩き込む。
強烈な蹴りが奴の体に文字通りめり込む。
しかし………。
「ッ……!」
「……いい蹴りじゃねぇか、あんちゃん。
──相手が俺じゃなきゃ決まってたかもな」
ブニュッという柔らかいものが潰れたような、なんとも形容し難い音と共にクロスのソバットは奴の腹に防がれてしまう。
豚型改造人間に授けられた固有能力はそのブクブク太った体に宿る『脂肪の壁』。
これにより敵対するものの攻撃の衝撃を吸収してしまうのだ。
たしかにこの豚型改造人間とは実際に会うのは初めてだったが、コイツの能力は『すべての動物種改造人間の頂点に立つ』アニマルに……俺にも継承されている。
故に初見でもコイツの能力を理解することが出来た……というわけである。
「だったら……!」
しかし、このクロスという仮面ライダーもただなす術もなくやられているわけではない。
クロスの胸部に刻まれた動物とメダルを模したライダーズクレストが輝く。
その瞬間、奴の脂肪に受け止められた脚部から膨大な量の冷気が放たれる。
先ほど蜘蛛男を仕留めたときのものと同様……それ以上の冷気だ。
冷気の噴射を右足裏の一点に集中させ、奴の脂肪の壁を突破しようというわけか。
だが………
「よせクロス!!」
「っ!?」
「──気づくのがおせぇよ、あんちゃん」
──ジェネシスコーポレーション製動物種改造人間の力を持つ俺なら分かる。
この脂肪の壁は冷気や炎などの攻撃には『滅法強い』ということが。
どれだけ強力な冷気や炎を持ってしても奴の脂肪の壁は突破することは不可能。
元々動物の脂肪というものは体温を一定に保つためのもの。
特に寒冷地の冷気から身を護るためにあるのだ。
「そらよっ!!」
「なっ!?うぉぉっ!」
豚型改造人間は冷気を放っているクロスの足を掴むと自らの脂肪の壁から引き抜きそのままクロスの体を数回地面に叩きつけ、そのまま俺の方へと投げた。
「「……ぐっ!!」」
俺は咄嗟にクロスの体を受け止めるも、勢いを完全に殺すことはかなわず大きく後方へと吹き飛ばされてしまう。
「大丈夫か!?」
「わりぃ、しくった……!
しっかし……くそっ、なんてパワーだ……!」
俺はクロスを立たせると、再び武器を構える。
豚という生き物は人間が猪を家畜化させたものとされる生き物だ。
怪人化させることで厚い脂肪だけでなく膂力まで強化されるのはなんとなく分かるが、まさかスピードまでこれほどのものとは。
豚というモチーフを選んだ以上、膂力や防御力と引き換えに瞬発力や機動力は他の改造人間たちより劣っていると考えていた。
ただ単に豚の改造人間として改造されているだけならばそこまでのスピードを手に入れることはかなわなかったはずだ。
たしかに改造人間たちの人工筋肉も鍛え上げることで強くしなやかになっていくが……目の前の豚型改造人間……とりわけこの男は自らの弱点を理解した上で己の肉体を鍛え上げているということか。
「気を付けろ……コイツは“ホンモノ”だ」
俺も組織が壊滅した後も戦い続け場数を踏んできたから少しの間手合わせしただけで分かる。
この男のこの強さ。
先ほどの蜘蛛男のような再生怪人として改造されたものたちとは根本から違う。
組織の残党を仕切っているのも納得できてしまうほどの強さだ。
「あぁ、わかってる……!」
俺たちはそれぞれ武器を構え、奴の出方を伺う。
仮面の下で汗が伝うのを感じる。
時が止まったような静けさと緊張感が辺りを支配する。
いずれにしても、俺たちにとっても『長い戦い』と感じるこの戦いはまだ始まったばかりである。
突如現れた豚の改造人間に困惑するクロス。
目の前の怪人を知らなければ当然の反応だ。
なんせ豚がコートやハットを着込んでダンディーにキメてるからな。
端から見ればギャグにも見えるだろう。
だがコイツはジェネシスコーポレーションの幹部。
それも厳密に言えば組織が壊滅した後に残党を纏めていたとされる改造人間だ。
俺も実のことを言えば直接対峙するのは今日が初めてだが……あのシュールな見た目からは想像もつかない威圧感だ。
肌がピリつき、喉が渇く。
──コイツは……“強い”。
しかもこれまで俺が戦ってきた強敵たちとはまた違った強さをもっている。
「気を付けろ……コイツは
───グッ!!」
隣にいるクロスに警戒を促す間もなく、俺の体は大きくのけ反った。
遅れてやってくる胸部の痛み。
視線を前方に向ければ拳を突き出している豚型改造人間を視界に捉えることができた。
スーパーフォームの強化された装甲を持ってしても防ぎ切れぬ打撃……通常形態のアニマルなら確実に殺られていた。
俺は空中ですぐさま体勢を建て直すと着地する。
その体の柔軟さは猫型改造人間から継承したものだ。
猫はどんなに高いところから落とされても瞬時に体勢を建て直し、安全に着地出来てしまうほどの柔軟さを持つ。
まさかこんなところで会ったこともなかった猫型改造人間の能力を使用することになろうとは。
「ちっ……!!」
俺を護るようにクロスが立ちはだかるとクロスは奴にソバットを叩き込む。
強烈な蹴りが奴の体に文字通りめり込む。
しかし………。
「ッ……!」
「……いい蹴りじゃねぇか、あんちゃん。
──相手が俺じゃなきゃ決まってたかもな」
ブニュッという柔らかいものが潰れたような、なんとも形容し難い音と共にクロスのソバットは奴の腹に防がれてしまう。
豚型改造人間に授けられた固有能力はそのブクブク太った体に宿る『脂肪の壁』。
これにより敵対するものの攻撃の衝撃を吸収してしまうのだ。
たしかにこの豚型改造人間とは実際に会うのは初めてだったが、コイツの能力は『すべての動物種改造人間の頂点に立つ』アニマルに……俺にも継承されている。
故に初見でもコイツの能力を理解することが出来た……というわけである。
「だったら……!」
しかし、このクロスという仮面ライダーもただなす術もなくやられているわけではない。
クロスの胸部に刻まれた動物とメダルを模したライダーズクレストが輝く。
その瞬間、奴の脂肪に受け止められた脚部から膨大な量の冷気が放たれる。
先ほど蜘蛛男を仕留めたときのものと同様……それ以上の冷気だ。
冷気の噴射を右足裏の一点に集中させ、奴の脂肪の壁を突破しようというわけか。
だが………
「よせクロス!!」
「っ!?」
「──気づくのがおせぇよ、あんちゃん」
──ジェネシスコーポレーション製動物種改造人間の力を持つ俺なら分かる。
この脂肪の壁は冷気や炎などの攻撃には『滅法強い』ということが。
どれだけ強力な冷気や炎を持ってしても奴の脂肪の壁は突破することは不可能。
元々動物の脂肪というものは体温を一定に保つためのもの。
特に寒冷地の冷気から身を護るためにあるのだ。
「そらよっ!!」
「なっ!?うぉぉっ!」
豚型改造人間は冷気を放っているクロスの足を掴むと自らの脂肪の壁から引き抜きそのままクロスの体を数回地面に叩きつけ、そのまま俺の方へと投げた。
「「……ぐっ!!」」
俺は咄嗟にクロスの体を受け止めるも、勢いを完全に殺すことはかなわず大きく後方へと吹き飛ばされてしまう。
「大丈夫か!?」
「わりぃ、しくった……!
しっかし……くそっ、なんてパワーだ……!」
俺はクロスを立たせると、再び武器を構える。
豚という生き物は人間が猪を家畜化させたものとされる生き物だ。
怪人化させることで厚い脂肪だけでなく膂力まで強化されるのはなんとなく分かるが、まさかスピードまでこれほどのものとは。
豚というモチーフを選んだ以上、膂力や防御力と引き換えに瞬発力や機動力は他の改造人間たちより劣っていると考えていた。
ただ単に豚の改造人間として改造されているだけならばそこまでのスピードを手に入れることはかなわなかったはずだ。
たしかに改造人間たちの人工筋肉も鍛え上げることで強くしなやかになっていくが……目の前の豚型改造人間……とりわけこの男は自らの弱点を理解した上で己の肉体を鍛え上げているということか。
「気を付けろ……コイツは“ホンモノ”だ」
俺も組織が壊滅した後も戦い続け場数を踏んできたから少しの間手合わせしただけで分かる。
この男のこの強さ。
先ほどの蜘蛛男のような再生怪人として改造されたものたちとは根本から違う。
組織の残党を仕切っているのも納得できてしまうほどの強さだ。
「あぁ、わかってる……!」
俺たちはそれぞれ武器を構え、奴の出方を伺う。
仮面の下で汗が伝うのを感じる。
時が止まったような静けさと緊張感が辺りを支配する。
いずれにしても、俺たちにとっても『長い戦い』と感じるこの戦いはまだ始まったばかりである。