Episode.11 DESPAIR

──ANIMAL SIDE──

「最悪のタイミングだな……!」


勝利と理緒は行ったか。

俺……桐山 毅はこの間戦ったばかりの目の前の蜘蛛男と対峙する。



「ハッハッハ!ここは通さんぞ仮面ライダーアニマルゥ!」


「「「「フニーーーーッ!」」」」


蜘蛛男の周りにはジェネシスコーポレーションの戦闘員。

ジェネシスコーポレーションも壊滅し、その資本も全て姫矢に買収されたというのに現実を受け入れられない一部の残党はこうしてテロ行為を続けている。



「お前ら……!」


──俺たち改造人間には、もう居場所がない。


自ら志願して改造人間になったものもいるが、その大半は誘拐され、脳改造を含めた改造手術を施されて戦場に駆り出された者たちだ。

そしてその殆どが脳改造が施された段階で大切だった人たちの事はおろか、自分が何者かであったかさえ忘れてしまう。


俺のように脳改造を施される前に組織を脱走できた者や、自ら志願して改造人間となったもの以外は例外なく脳改造が施されたのだ。

その醜い姿はもちろんの事、人であった頃の記憶も心も無くし”怪物”としてその生涯を終える。


だけど……実際にそれで死ねたのならまだ幸せな方なのだろう。



「かかれーーーい!!」

「「「フニーーーーッ!!」」」


「……ちっ!」


飛びかかってきた戦闘員をいなし、拳を振るう。

ゴリラのごとき豪腕から放たれる一撃は向かってきた戦闘員たちの頭を粉砕した。

割れたスイカのように血飛沫を撒き散らしながら果てる戦闘員たち。

目を背けたくなる光景だ。



──目の前のコイツらのように組織が壊滅しても尚、人の中で生きることも………自らその命を絶つことすらも許されなかった奴らもいる。


ここでコイツらと戦ってる俺も同じ『改造人間』。

同じ“痛み”を知る者として、コイツらを弔ってやることしか俺には出来ない。
人間だった頃に愛していた家族や友人、恋人を自らで手にかけるその前に。

そんな理由を並べても結局のところ俺の自己満足でしかない。
そんなことはわかっている。



だけど……!

 


「ライダァァァパァァァァンチ!!」 


「「フニーーーッ!」」


俺には、その道を選ぶことしか出来ない。

たとえ、護るために振るった両の拳が紅に染まろうとも。


同じ痛みを知る改造人間だから。
コイツらの居場所を奪ったのは俺たち仮面ライダーなのだから。



──きっとこれが世界の救済と引き換えに与えられた“罰”なのだから。
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