Episode.11 DESPAIR
──JINIA SIDE ──
「はぁ………はぁ………」
「少しはマシになったか」
ネスのことをフロースに任せ、昔のダチの所に行っていたがネスたちのいる訓練施設に帰ってきてみると、そこにいたのは肩で息をするディスペアーと変身が解除されたフロース。
ディスペアーの手には親子丼メモリが装填されたディスペアーメモリ。
どうやらあの数時間のうちにネスは俺が渡したガイアメモリを使いこなせるようになったようである。
「お前にも……見せてやりたかったよ。
私がコイツを使いこなす様を」
変身を解除し、親子丼メモリをちらつかせはにかむように笑うネス。
──やはり思った通り、コイツは“素質がある”。
『邪泉』なる負の感情の受け皿を担うこの世ならざる世界にあるとされる泉の水とほんの少しのノゾミの心の闇が混ざりあいひとつの生命となったのがネスだ。
だがほんの少しの心の闇でネスが生まれる以上、ノゾミ本人の心の闇は底知れぬものだった。
故に経験値も心の闇も圧倒的にオリジナルに劣るネスが、ノゾミに勝てる道理など最初からなかった。
だが、ひとつだけネスにあってノゾミにないものがある。
それは己自身のアイデンティティを勝ち取る『決意』だ。
それが『オリジナルを超えるため』であったり『己が主のため』であったりするとはいえ、その出自故の決意は、決してオリジナルにはないものであり、ネスをネス足らしめるもの。
そしてそれがネスの……否、ディスペアーの強さを確固たるものにする。
それが仮面ライダーとしての強さに直結するのだ。
まず、ライダーシステムにはリアクターや人工筋肉、コンバータラング、それら制御するAIが搭載されたスーツを装着するタイプと、装着者の体を戦闘に特化した形へ改造するタイプの2種類が存在する。
一見すれば真逆の変身システムだ。
だが共通しているものもある。
それはベルトという形で装着者の腰……もとい丹田を覆うように装着し、丹田を刺激し装着者の『気』を増幅させ、自らの力とすることで超人的な戦闘力を発揮する点だ。
それは世界もデバイスも異なれど、ライダーシステム共通のものだと考えている。
でなければ、装着者の感情の爆発によってスペックでは計測出来ない未知の力を発揮する現象を説明できないからな。
恐らくこれは感情の爆発と共に丹田から発生した膨大な量の『気』が更に増幅され、それがライダーシステムの様々な機能に影響を与えているからだと思われる。
だからこそほとんどの仮面ライダーは丹田から発生する気の恩恵を受けるために、丹田から最も近い位置に装着できるベルト型の変身アイテムを用いており、ベルトで変身しない個体ですら必ずと言っていいほどベルトやそれに準じたものを装着しているのではないだろうか。
いずれにしてもこのシステムのせいで『覚悟』や『決意』、『怒り』『憎悪』などといった装着者の感情の起伏という不確定要素すら戦闘力に換算されてしまう。
それこそ容易く下克上を成し遂げてしまうほどには。
その力を発揮したものたちは奇跡の力だとのたまうが、決して奇跡などではない。
そうなるように仕組まれていたのだ。
それならば……望むものを望むがまま与えられた箱入り娘のノゾミのような奴より、ハングリー精神に富んだネスのような奴の方が感情の爆発力もその根幹の『決意』も強い。
……すなわち仮面ライダーとしての素質があると言える。
ただ、コイツにも『執着』というその強さを妨げるものがある。
それが問題なんだがな。
《デュアルフュージョン!ヴァルツ!ベーシック!》
「本当によくやった……」
《リヒト!バースト!》
俺はヴァルツに変身するとネスに向けて光の粒子を放つ。
するとネスの身体中の傷はみるみるうちに塞がっていく。
『フォトンヒーリング』。
俺の変身するヴァルツのもつ数少ない治癒能力だ。
「これは………」
「勘違いするな。使いこなせたから終わりなんじゃない。
やっとお前はスタート位置に立ったんだ」
そして、俺はモニターを見るようにネスたちに促す。
モニターに映るのは郊外から街中へと向かわんとする巨人の姿。
大きな二本角と機械の体をもつ巨人の名は『キングダーク』。
「……先ほど研究所に在籍している部下から連絡が入った。
何者かが研究所を襲撃し、組織で管理していたジュエルを強奪して逃走したと。
ジュエルを強奪した者は不明……だそうだ。
フロースは強奪されたジュエルを奪還しろ」
「イエス、マスター」
フロースに指示を飛ばす。
ネスとの特訓に付き合わされたとはいえ、コイツに回復も休息も必要ない。
コイツは疲労や苦痛という概念を感じないのだ。
多少の損傷あれど、戦闘に支障はない。それが俺の見解だ。
「恐らく他のライダーたちも来るだろう。
ネス……分かってるな?
──特訓の成果をみせるときだ」
「了解した」
無論ネスにも反逆者の討伐を行ってもらうことになるが、それ以上にやってもらいたいことがある。
キングダークが街へと向かって移動しているのだ。
奴ら……呼道勇騎を中心に同盟を結んだ異世界の仮面ライダーたちも来るだろう。
そいつら相手にネスの実力を測ることが出来れば上々である。
「……絶望の担い手の力、みせてやる」
「………」
ネスとフロースの前にオーロラカーテンが現れる。
やがてオーロラカーテンはふたりを飲み込み、ネスたちが望む場所へとふたりを転送した。
ジュエルを強奪した存在には検討がついている。
だが……少し泳がせてやるか。
奴に構ってやれるほど俺も暇ではないし、それに歯向かってきたところでその牙を折るのは容易いからな。
俺はふたりを見送り、変身を解除すると姫矢コーポレーション本社へと向かうのであった。
「はぁ………はぁ………」
「少しはマシになったか」
ネスのことをフロースに任せ、昔のダチの所に行っていたがネスたちのいる訓練施設に帰ってきてみると、そこにいたのは肩で息をするディスペアーと変身が解除されたフロース。
ディスペアーの手には親子丼メモリが装填されたディスペアーメモリ。
どうやらあの数時間のうちにネスは俺が渡したガイアメモリを使いこなせるようになったようである。
「お前にも……見せてやりたかったよ。
私がコイツを使いこなす様を」
変身を解除し、親子丼メモリをちらつかせはにかむように笑うネス。
──やはり思った通り、コイツは“素質がある”。
『邪泉』なる負の感情の受け皿を担うこの世ならざる世界にあるとされる泉の水とほんの少しのノゾミの心の闇が混ざりあいひとつの生命となったのがネスだ。
だがほんの少しの心の闇でネスが生まれる以上、ノゾミ本人の心の闇は底知れぬものだった。
故に経験値も心の闇も圧倒的にオリジナルに劣るネスが、ノゾミに勝てる道理など最初からなかった。
だが、ひとつだけネスにあってノゾミにないものがある。
それは己自身のアイデンティティを勝ち取る『決意』だ。
それが『オリジナルを超えるため』であったり『己が主のため』であったりするとはいえ、その出自故の決意は、決してオリジナルにはないものであり、ネスをネス足らしめるもの。
そしてそれがネスの……否、ディスペアーの強さを確固たるものにする。
それが仮面ライダーとしての強さに直結するのだ。
まず、ライダーシステムにはリアクターや人工筋肉、コンバータラング、それら制御するAIが搭載されたスーツを装着するタイプと、装着者の体を戦闘に特化した形へ改造するタイプの2種類が存在する。
一見すれば真逆の変身システムだ。
だが共通しているものもある。
それはベルトという形で装着者の腰……もとい丹田を覆うように装着し、丹田を刺激し装着者の『気』を増幅させ、自らの力とすることで超人的な戦闘力を発揮する点だ。
それは世界もデバイスも異なれど、ライダーシステム共通のものだと考えている。
でなければ、装着者の感情の爆発によってスペックでは計測出来ない未知の力を発揮する現象を説明できないからな。
恐らくこれは感情の爆発と共に丹田から発生した膨大な量の『気』が更に増幅され、それがライダーシステムの様々な機能に影響を与えているからだと思われる。
だからこそほとんどの仮面ライダーは丹田から発生する気の恩恵を受けるために、丹田から最も近い位置に装着できるベルト型の変身アイテムを用いており、ベルトで変身しない個体ですら必ずと言っていいほどベルトやそれに準じたものを装着しているのではないだろうか。
いずれにしてもこのシステムのせいで『覚悟』や『決意』、『怒り』『憎悪』などといった装着者の感情の起伏という不確定要素すら戦闘力に換算されてしまう。
それこそ容易く下克上を成し遂げてしまうほどには。
その力を発揮したものたちは奇跡の力だとのたまうが、決して奇跡などではない。
そうなるように仕組まれていたのだ。
それならば……望むものを望むがまま与えられた箱入り娘のノゾミのような奴より、ハングリー精神に富んだネスのような奴の方が感情の爆発力もその根幹の『決意』も強い。
……すなわち仮面ライダーとしての素質があると言える。
ただ、コイツにも『執着』というその強さを妨げるものがある。
それが問題なんだがな。
《デュアルフュージョン!ヴァルツ!ベーシック!》
「本当によくやった……」
《リヒト!バースト!》
俺はヴァルツに変身するとネスに向けて光の粒子を放つ。
するとネスの身体中の傷はみるみるうちに塞がっていく。
『フォトンヒーリング』。
俺の変身するヴァルツのもつ数少ない治癒能力だ。
「これは………」
「勘違いするな。使いこなせたから終わりなんじゃない。
やっとお前はスタート位置に立ったんだ」
そして、俺はモニターを見るようにネスたちに促す。
モニターに映るのは郊外から街中へと向かわんとする巨人の姿。
大きな二本角と機械の体をもつ巨人の名は『キングダーク』。
「……先ほど研究所に在籍している部下から連絡が入った。
何者かが研究所を襲撃し、組織で管理していたジュエルを強奪して逃走したと。
ジュエルを強奪した者は不明……だそうだ。
フロースは強奪されたジュエルを奪還しろ」
「イエス、マスター」
フロースに指示を飛ばす。
ネスとの特訓に付き合わされたとはいえ、コイツに回復も休息も必要ない。
コイツは疲労や苦痛という概念を感じないのだ。
多少の損傷あれど、戦闘に支障はない。それが俺の見解だ。
「恐らく他のライダーたちも来るだろう。
ネス……分かってるな?
──特訓の成果をみせるときだ」
「了解した」
無論ネスにも反逆者の討伐を行ってもらうことになるが、それ以上にやってもらいたいことがある。
キングダークが街へと向かって移動しているのだ。
奴ら……呼道勇騎を中心に同盟を結んだ異世界の仮面ライダーたちも来るだろう。
そいつら相手にネスの実力を測ることが出来れば上々である。
「……絶望の担い手の力、みせてやる」
「………」
ネスとフロースの前にオーロラカーテンが現れる。
やがてオーロラカーテンはふたりを飲み込み、ネスたちが望む場所へとふたりを転送した。
ジュエルを強奪した存在には検討がついている。
だが……少し泳がせてやるか。
奴に構ってやれるほど俺も暇ではないし、それに歯向かってきたところでその牙を折るのは容易いからな。
俺はふたりを見送り、変身を解除すると姫矢コーポレーション本社へと向かうのであった。