Episode.11 DESPAIR
センサーが反応し足元がライトで照らされるなか、簡素な階段を降りていく。
地下室への扉に近づくたび地下特有の日の当たらない冷えた空気が、地上で火照った体を冷やしていく。
『アレ』を託されたその時から僕はずっと管理し続けてきた。
この世界を護るために。
世界の理を護るために。
『アレ』はどの世界に存在してはならないもの。
最もハルシオンに近いものと目されている。
──例え僕の人生の全てをかけても『アレ』だけは護り抜かなければならない。
それは新世界の創造を目論むジニアにとっても最も忌むべき存在として捉えているほどだ。
「………」
やがて、非常灯に照らされた扉が見えてきた。
その中にいる『何か』を護るかのように聳え立つその扉は大袈裟かと思われる程に大きく、分厚く、無骨なものであった。
「よし………」
僕は扉の前に立つと、専用の『鍵』を取り出した。
それはカードキーというには厚みもあり、僕の生態認識を行いキーを作動するためのスイッチもある。
キーはキーでもこのキーは『プログライズキー』だ。
この地下室を管理するためのキー……言うなれば『ゲートプログライズキー』だ。
《Gate……!》
キーのスイッチを押し、キーが展開される。
そしてキーを鍵穴に差し込んだ。
《Authorize……!》
キーを鍵穴に差し込み時計回りに回す。
キーから再生されるガイダンスボイス。
それと共にカチッという音と共に解錠される。
この扉はあくまでも巨大な空間転移装置。
そして、この中にいるものを閉じ込めておく『牢獄』。
このゲートプログライズキーはその牢獄へと続く空間にアクセスするためのプログライズキーなのだ。
ゲートプラグライズキーを認証すると扉に基盤のような模様が浮かび上がり、まるでパズルのピースのように扉が分解、それから格納されていくと目の前には異質な空間が広がっている。
最初に飛び込んできたのは広く薄暗い部屋に所狭しと配置された無数の培養槽。
うむ……読者の君たちには『SF映画によくある試験管』とでもいえば伝わるのだろうか。
その無数の培養槽が僕たちをあるひとつの巨大な培養槽へと導くかように並べられている。
培養槽のひとつひとつには培養液に浸けられたアンゲロスたちが眠っている。
それも蜘蛛や蝙蝠などの地球上に存在する既存の動植物の力を宿したものではない。
無数の動植物の……いや、複数のアンゲロスを無理やり縫い付け融合させたような歪な姿のものたちだ。
「……これが我々の罪の証か」
「私語を慎め、アラン」
ここにくる度に僕は……いや、我々は己の過ちにうちひしがれそうになる。
ここにいる“彼ら”は“失敗作”にしてこの先で待つ者に捧げられた“供物”。
今でこそ開業医としての道に進んでいるが、僕もまたジニアと同じ技術者だった。
しかしそれは改造人間専門の……だがね。
ジニアの持つ天才的頭脳と発想力、そして僕のドクターとしての腕前。
知的好奇心のままに研究にのめり込んだこともあった。
しかし、ジニアの暴走や『彼ら』との出会い……そして己の過ちの象徴である培養槽の中の異形たち。
気がついた頃にはそれら全てに嫌気が差していたのだ。
だが……ジニアも、目の前の“ソレ”も否応なしに現実を突きつけてくる。
──その現実から逃れることを決して許そうとはしない。
「やれやれ……君は本当に厳しいね」
やがて、僕たちは目的の場所へとたどり着く。
ため息をつき視線を上げたその先にはまたもや培養槽。
しかし、そこにある培養槽はひときわ大きなもの。
その培養槽の中には、ジニアの持つエクスドライバーのソレとよく似た『ベルト型デバイス』。
しかし違うのはそのバックルに当たる装置の裏側から伸びる無数のケーブル。
さながら水の中に浸しておいた球根のようだ。
そう、このベルト型デバイスが僕たちが管理するものであり、この世界にあってはならぬ異形のもの。
そして、世界の理を変えてしまうもの。
「……やれやれ。本当に困ったものだよ」
地下室への扉に近づくたび地下特有の日の当たらない冷えた空気が、地上で火照った体を冷やしていく。
『アレ』を託されたその時から僕はずっと管理し続けてきた。
この世界を護るために。
世界の理を護るために。
『アレ』はどの世界に存在してはならないもの。
最もハルシオンに近いものと目されている。
──例え僕の人生の全てをかけても『アレ』だけは護り抜かなければならない。
それは新世界の創造を目論むジニアにとっても最も忌むべき存在として捉えているほどだ。
「………」
やがて、非常灯に照らされた扉が見えてきた。
その中にいる『何か』を護るかのように聳え立つその扉は大袈裟かと思われる程に大きく、分厚く、無骨なものであった。
「よし………」
僕は扉の前に立つと、専用の『鍵』を取り出した。
それはカードキーというには厚みもあり、僕の生態認識を行いキーを作動するためのスイッチもある。
キーはキーでもこのキーは『プログライズキー』だ。
この地下室を管理するためのキー……言うなれば『ゲートプログライズキー』だ。
《Gate……!》
キーのスイッチを押し、キーが展開される。
そしてキーを鍵穴に差し込んだ。
《Authorize……!》
キーを鍵穴に差し込み時計回りに回す。
キーから再生されるガイダンスボイス。
それと共にカチッという音と共に解錠される。
この扉はあくまでも巨大な空間転移装置。
そして、この中にいるものを閉じ込めておく『牢獄』。
このゲートプログライズキーはその牢獄へと続く空間にアクセスするためのプログライズキーなのだ。
ゲートプラグライズキーを認証すると扉に基盤のような模様が浮かび上がり、まるでパズルのピースのように扉が分解、それから格納されていくと目の前には異質な空間が広がっている。
最初に飛び込んできたのは広く薄暗い部屋に所狭しと配置された無数の培養槽。
うむ……読者の君たちには『SF映画によくある試験管』とでもいえば伝わるのだろうか。
その無数の培養槽が僕たちをあるひとつの巨大な培養槽へと導くかように並べられている。
培養槽のひとつひとつには培養液に浸けられたアンゲロスたちが眠っている。
それも蜘蛛や蝙蝠などの地球上に存在する既存の動植物の力を宿したものではない。
無数の動植物の……いや、複数のアンゲロスを無理やり縫い付け融合させたような歪な姿のものたちだ。
「……これが我々の罪の証か」
「私語を慎め、アラン」
ここにくる度に僕は……いや、我々は己の過ちにうちひしがれそうになる。
ここにいる“彼ら”は“失敗作”にしてこの先で待つ者に捧げられた“供物”。
今でこそ開業医としての道に進んでいるが、僕もまたジニアと同じ技術者だった。
しかしそれは改造人間専門の……だがね。
ジニアの持つ天才的頭脳と発想力、そして僕のドクターとしての腕前。
知的好奇心のままに研究にのめり込んだこともあった。
しかし、ジニアの暴走や『彼ら』との出会い……そして己の過ちの象徴である培養槽の中の異形たち。
気がついた頃にはそれら全てに嫌気が差していたのだ。
だが……ジニアも、目の前の“ソレ”も否応なしに現実を突きつけてくる。
──その現実から逃れることを決して許そうとはしない。
「やれやれ……君は本当に厳しいね」
やがて、僕たちは目的の場所へとたどり着く。
ため息をつき視線を上げたその先にはまたもや培養槽。
しかし、そこにある培養槽はひときわ大きなもの。
その培養槽の中には、ジニアの持つエクスドライバーのソレとよく似た『ベルト型デバイス』。
しかし違うのはそのバックルに当たる装置の裏側から伸びる無数のケーブル。
さながら水の中に浸しておいた球根のようだ。
そう、このベルト型デバイスが僕たちが管理するものであり、この世界にあってはならぬ異形のもの。
そして、世界の理を変えてしまうもの。
「……やれやれ。本当に困ったものだよ」