Episode.11 DESPAIR
──ALLAN SIDE──
「……やれやれ。ひどい目にあった」
とりあえず“彼”の息子……ジル・ロックディールを退けることには成功したが、おかげさまで診療時間を大幅に遅れさせてしまった。
なにせ小さい診療所で代診を雇っていないからね、ドクターは僕しかいないんだ。
今後こういう事態を想定してドクターの求人でも出してみようか……。
おっと、失礼。
話が逸れてしまったね、僕はアラン・ベネット。しがない開業医さ。
『私を頼る患者は見捨てない』。『患者は必ず命を救う』。
その信念を貫いた結果、自慢ではないが『冥土返し(ヘヴンキャンセラー)』だの『姫矢のブラックジャック』だの実に大層な二つ名で呼ばれるようになってしまった。
やれやれ。
ブラックジャックの方はともかく、前者の方はどうにかならないものか……。
それでも僕を頼る患者にはしっかりと向き合い、最善を尽くすだけ。
ジルとの戦闘で遅れてしまったものの、どうにか遅れを取り戻し先ほど本日の診療を終えた。
「……これで本日予約の患者は終わりかな」
本日最後の患者のカルテを印刷し終え、カルテを所定の棚に片付けると息をつく。
すると玄関ののドアが開く音がした。
誰か来たのだろうか?……というのは愚問だろう。
アポもなしに閉院時間ピッタリにやってくるのは僕の知る限り“彼”しかいない。
「やぁ、また来たのかい?」
やがて彼が診察室へと入ってくると僕は視線を上げた。
やはり思った通りの人物だ。
白いスーツに黒いワイシャツ。
白髪で赤目の男。
僕の親友だった男であり、先ほど僕のもとを訪ねてきたジルの父親。
天………おっと、今は『ジニア・ロックディール』と呼んだ方がいいんだったね。失礼失礼。
「やっぱり誰かがここに来たんだな……」
「あぁ、追い返すのに手間取ってしまった」
「手間かけさせちまったな」
淡々と言葉を紡ぐジニア。
誰がこの診療所にやってきて、誰が僕と戦ったかなんてこの男ならすぐに勘づきそうなものなのに。
それとも身内には甘いのか。
その真相は彼にしか分からないが、僕は自身を襲撃したものの正体を答えないことにした。
それにしても、ジニアの実年齢とは少々かけはなれている若さを保った端正な顔立ちは、常に能面でもつけているかのように変化はない。
……この男はいつもそうなのだ。
自らの理想のために組織のメンバーやこの街の住人だけでなく、ジルやその妹をも実験動物として扱っても、顔色ひとつ変えなかった。
それに嫌気が差した僕はこの男から離れ、この男が仕掛ける“戦争”には直接関わらない『中立』という道を選んだ。
だけどジニアはそれでもたまにこうしてここにやってくる。
それは致し方ないことなのだが、こうやって話すたび、ジニアの心は既に壊れている……否、死んでいるのだど実感させられる。
ジニアは昔からこんな男ではなかったのだが……。
「地下室のアレは無事か?」
「あぁ、勿論……」
「確認させてくれ」
当然この男は僕のことすらどうでもいいのだろう。
今回ここにやってきた理由を単刀直入に切り出してくる。
どうやら彼にとって重要なのは僕ではなく、僕が……否、僕たちが隠しているものだ。
前回も前回で特訓で顎を割ってしまった部下の女の子の緊急オペを依頼してきたが……今回はこちらにとっても“重要な話”ではある。
「わかった。今、地下室の鍵を開けよう……」
重い腰を上げ、椅子から立ち上がると僕はジニアを連れ診療室を出て院長室として使っている部屋へと向かう。
そこに地下室へと繋がる扉を隠しており、そこから件の地下室へと向かうのだ。
僕は院長室の鍵をかけ、地下室への鍵を開けると、僕たちは地下室へと降りていった。
「……やれやれ。ひどい目にあった」
とりあえず“彼”の息子……ジル・ロックディールを退けることには成功したが、おかげさまで診療時間を大幅に遅れさせてしまった。
なにせ小さい診療所で代診を雇っていないからね、ドクターは僕しかいないんだ。
今後こういう事態を想定してドクターの求人でも出してみようか……。
おっと、失礼。
話が逸れてしまったね、僕はアラン・ベネット。しがない開業医さ。
『私を頼る患者は見捨てない』。『患者は必ず命を救う』。
その信念を貫いた結果、自慢ではないが『冥土返し(ヘヴンキャンセラー)』だの『姫矢のブラックジャック』だの実に大層な二つ名で呼ばれるようになってしまった。
やれやれ。
ブラックジャックの方はともかく、前者の方はどうにかならないものか……。
それでも僕を頼る患者にはしっかりと向き合い、最善を尽くすだけ。
ジルとの戦闘で遅れてしまったものの、どうにか遅れを取り戻し先ほど本日の診療を終えた。
「……これで本日予約の患者は終わりかな」
本日最後の患者のカルテを印刷し終え、カルテを所定の棚に片付けると息をつく。
すると玄関ののドアが開く音がした。
誰か来たのだろうか?……というのは愚問だろう。
アポもなしに閉院時間ピッタリにやってくるのは僕の知る限り“彼”しかいない。
「やぁ、また来たのかい?」
やがて彼が診察室へと入ってくると僕は視線を上げた。
やはり思った通りの人物だ。
白いスーツに黒いワイシャツ。
白髪で赤目の男。
僕の親友だった男であり、先ほど僕のもとを訪ねてきたジルの父親。
天………おっと、今は『ジニア・ロックディール』と呼んだ方がいいんだったね。失礼失礼。
「やっぱり誰かがここに来たんだな……」
「あぁ、追い返すのに手間取ってしまった」
「手間かけさせちまったな」
淡々と言葉を紡ぐジニア。
誰がこの診療所にやってきて、誰が僕と戦ったかなんてこの男ならすぐに勘づきそうなものなのに。
それとも身内には甘いのか。
その真相は彼にしか分からないが、僕は自身を襲撃したものの正体を答えないことにした。
それにしても、ジニアの実年齢とは少々かけはなれている若さを保った端正な顔立ちは、常に能面でもつけているかのように変化はない。
……この男はいつもそうなのだ。
自らの理想のために組織のメンバーやこの街の住人だけでなく、ジルやその妹をも実験動物として扱っても、顔色ひとつ変えなかった。
それに嫌気が差した僕はこの男から離れ、この男が仕掛ける“戦争”には直接関わらない『中立』という道を選んだ。
だけどジニアはそれでもたまにこうしてここにやってくる。
それは致し方ないことなのだが、こうやって話すたび、ジニアの心は既に壊れている……否、死んでいるのだど実感させられる。
ジニアは昔からこんな男ではなかったのだが……。
「地下室のアレは無事か?」
「あぁ、勿論……」
「確認させてくれ」
当然この男は僕のことすらどうでもいいのだろう。
今回ここにやってきた理由を単刀直入に切り出してくる。
どうやら彼にとって重要なのは僕ではなく、僕が……否、僕たちが隠しているものだ。
前回も前回で特訓で顎を割ってしまった部下の女の子の緊急オペを依頼してきたが……今回はこちらにとっても“重要な話”ではある。
「わかった。今、地下室の鍵を開けよう……」
重い腰を上げ、椅子から立ち上がると僕はジニアを連れ診療室を出て院長室として使っている部屋へと向かう。
そこに地下室へと繋がる扉を隠しており、そこから件の地下室へと向かうのだ。
僕は院長室の鍵をかけ、地下室への鍵を開けると、僕たちは地下室へと降りていった。