Episode.11 DESPAIR

50人のキングデストロイヤーによる剣戟の波状攻撃は、先ほどキルバスと共に敢行した同時攻撃を上回る。

実際にメディックスタークも、捌ききれずに攻撃を受け続けている。

同じ箇所を何度も攻撃し、ドリルクラッシャーで傷すらつかなかった胴体にも裂傷が目立つようになった。


このまま圧倒すれば……勝てる。



しかし、そんなことで勝てるほど目の前の男は甘くはなかった。




「……誰がいつ『分身は操れない』と言ったんだい?」


「やっば………!」


その瞬間、地面を割いて現れる無数の触手。

勝利を確信した一瞬の隙をつくように、触手の1本1本が僕の分身を差し抜くと分身たちの姿がキルバスと同じように死神ロイミュードの兜付きケープが装着される。

これは先ほどのキルバスと全く同じ。
どうやらブランチシェイドによる分身も死神へと改造されてしまったようだ。

それにしても……まさかアイツは、エクスキメラも、僕自身の分身すらも死神に改造できるのか……!




「残念だが、これでオペを完了とする」


《エクスライザーノヴァ……!》


「……ッ!!」


呆けている場合ではない。
死神と化した50体の分身は一斉に駆け出し、飛び上がると一斉に蹴りを放つ。



「くっそ……こんなのアリかよ………!!」


『圧倒的な数の前には一個人の力などあまりに無力』……まさか父の受け売りの言葉をこんな形で痛感させられることとなろうとは。

未来予知を駆使しつつ、数体の分身のキックをかわし、いなし、受け流し……自らと同等の力を持つ分身の波状攻撃を必死にやり過ごすが、それでも50体の分身の攻撃をやり過ごすことはかなわなかった。



「ぐっ……!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


分身の蹴りを受け流し、未来予知を使用しようとした少しの隙をつかれる形で蹴りをくらうと大きく吹っ飛ばされてしまった。

そして何度も地面に叩きつけられ、土煙をあげると岩盤に叩きつけられ、変身が強制的に解除された。

それと共に分身と死神キルバスは1体残らず消滅した。




「くっ……!」


吹っ飛ばされ、変身解除された際に懐に隠しておいたカプセルが2つ、奴の足元へと転がっていった。

奴はそれを拾うと同じく変身を解除した。



「やれやれ……スイカアームズの鎧武とブレイキングマンモスのゼロワンのカプセルか。

お父さんにおねだりでもしたのかい?

まぁ、これは授業料として僕が預かっておくから」


奴の手に渡ったのは、以前父さんから貰った鎧武・スイカアームズとゼロワン・ブレイキングマンモスのライダーカプセル。

不幸中の幸いと言うべきかメインカプセルのアナザーディケイドとアナザージオウのカプセルはまだこちらにある。

口惜しさはあるが……まぁ、いいさ。


──少し、作戦を変えよう。



それにこっちも…………




「悪いけど、僕も転んでもただでは起きない男なんでね……!」

「なにっ!」

僕の手にはジュエル。
それを見たカエル顔は少しばかり動揺したような表情を見せる。

ジュエルの中に描かれたライダーは『カリバー』。
紫のボディを持つ甲冑を着こんだような姿をしたライダーだ。

ジュエルの出所は想像がつくが、このライダーのジュエルはなかなか便利だ。

そのふたつのカプセルはジュエル代と授業料として差し上げようじゃないか。



「……いつの間に……!」


「本体の僕が大量に分身してたから存在を忘れてたろ?

最初に分身してた僕の分身の1体に隙を見て奪わせておいたのさ」 

 
ここでタネ明かし。

あの瞬間、攻撃に向かったのはガタキリバの能力であるブランチシェイドによって分身した個体のみ。

トリックベントで分身した個体はこんなこともあろうかとギリギリまで戦闘を避け隠れてさせていたのだ。

木を隠すなら森の中というように、大量のブランチシェイドに意識を向けさせたのがどうやら成功だったようだ。



「………全く、食えない男だね」


「痛い目をみたけど、収穫もあった。

今日はこれで帰らせてもらうよ……じゃっ!」


懐から取り出したのは逃走用の煙玉。
ジャパンのニンジャがよく使うアレだ。

それを勢いよく地面に叩きつけると、煙幕が僕の体を包み込む。



「なっ!?」


これには流石のカエル顔も面食らった様子。
煙幕のせいでその顔は見れなかったケドも。



そして……僕はこの煙幕に紛れてこの戦場から離脱するのであった。
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