Episode.11 DESPAIR
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父さんは昔から何を考えているか分からない人だったように思う。
母さんや妹がいなくなった時も。
僕の記憶のなかでは、ずっと仮面が張り付いているかのような無表情だった。
何も感じていないのだろうか。
そもそも心というものを持ち合わせていないのだろうか。
息子の僕ですら、それは分からない。
ただ、そんな父さんが僕たちRe:Buildのメンバーにひとつだけ禁じていることがあった。
それは『自分に許可なく姫矢下町医院なる診療所にいる町医者に接触すること』である。
無論診療所周囲での戦闘もご法度だ。
あまりに意味の分からない掟だ。
父さんの目的は全ての並行世界をこの世界に融合させ、新世界を作ること。
組織の名前が再構築を意味する『Re:Build』なのもそれが所以だ。
新世界が生まれるということはこの世界も消えることを意味する。
診療所ひとつがどうなろうと新世界の創造の前には取るに足らないことのはずだ。
──それなのに、なぜ?
現に以前組織に所属していたメンバーがこの戒律を破り、例の開業医に接触をしたところそのまま行方不明となった。
もしかしたら血の聖誕祭と接触を禁じられた町医者も何か関係があるのかもしれない。
それに………禁止されたらやりたくなるのが人の性ってものでしょ。
「………もう、来ちゃってるんたけどね☆」
そして……今、僕は件の開業医が経営する『姫矢下町医院』にいる。
患者のひとりに扮してその診療所に侵入したというわけだ。
無論油断させるために偽名で、保険証を忘れたという体で。
「定契 一知(さだちぎ いちる)くん。どうぞお入りくださーい」
「はーい!」
看護士さんの若いお姉さんが僕を呼ぶ。
そう、定契 一知というのは適当に考えた偽名。
ジル・ロックディールなんて名乗ったらバレてしまうからね。
僕はお姉さんに誘われるまま、診察室へと入っていく。
「えぇっと………定契 一知くん10歳で合ってるかな?」
診察室で待っていたのは小太りなカエル顔の男性ドクター。
カルテを眺めながらなので、こちらの顔すらみていない。
このカエル顔が父さんが接触を禁止した町医者だろうか。
それにしてはなんともたよりなさげに見えるが……。
「はいそうでーす」
僕はカエル顔のドクターからカルテを奪い取りニッコリと笑いかける。
この男が父さんの言っていた町医者とは思えないが、とりあえず脅してみるか。
そうじゃなきゃ、血の聖誕祭のことも、あの椿勝利のことも分からず仕舞いだ。
僕は暗器として袖口に隠し持っていたコンバットナイフを突きつけようと手を伸ばそうとしたが………
「やれやれ……。彼には中立を貫くと言っていた筈なんだがね」
「…………っ」
カエル顔のドクターの手には隠し持っていた筈のコンバットナイフが。
──全く反応出来なかった。
反応する間もなくコンバットナイフを奪われたのだ。
まさか、このカエル顔のドクターが父さんの言っていた接触してはいけない町医者だっていうのか。
張り詰めた空気が診察室を支配するなか、カエル顔のドクターはコンバットナイフをゴミ箱へと投げ捨てると、つまらなさそうにため息をつくのだった。
父さんは昔から何を考えているか分からない人だったように思う。
母さんや妹がいなくなった時も。
僕の記憶のなかでは、ずっと仮面が張り付いているかのような無表情だった。
何も感じていないのだろうか。
そもそも心というものを持ち合わせていないのだろうか。
息子の僕ですら、それは分からない。
ただ、そんな父さんが僕たちRe:Buildのメンバーにひとつだけ禁じていることがあった。
それは『自分に許可なく姫矢下町医院なる診療所にいる町医者に接触すること』である。
無論診療所周囲での戦闘もご法度だ。
あまりに意味の分からない掟だ。
父さんの目的は全ての並行世界をこの世界に融合させ、新世界を作ること。
組織の名前が再構築を意味する『Re:Build』なのもそれが所以だ。
新世界が生まれるということはこの世界も消えることを意味する。
診療所ひとつがどうなろうと新世界の創造の前には取るに足らないことのはずだ。
──それなのに、なぜ?
現に以前組織に所属していたメンバーがこの戒律を破り、例の開業医に接触をしたところそのまま行方不明となった。
もしかしたら血の聖誕祭と接触を禁じられた町医者も何か関係があるのかもしれない。
それに………禁止されたらやりたくなるのが人の性ってものでしょ。
「………もう、来ちゃってるんたけどね☆」
そして……今、僕は件の開業医が経営する『姫矢下町医院』にいる。
患者のひとりに扮してその診療所に侵入したというわけだ。
無論油断させるために偽名で、保険証を忘れたという体で。
「定契 一知(さだちぎ いちる)くん。どうぞお入りくださーい」
「はーい!」
看護士さんの若いお姉さんが僕を呼ぶ。
そう、定契 一知というのは適当に考えた偽名。
ジル・ロックディールなんて名乗ったらバレてしまうからね。
僕はお姉さんに誘われるまま、診察室へと入っていく。
「えぇっと………定契 一知くん10歳で合ってるかな?」
診察室で待っていたのは小太りなカエル顔の男性ドクター。
カルテを眺めながらなので、こちらの顔すらみていない。
このカエル顔が父さんが接触を禁止した町医者だろうか。
それにしてはなんともたよりなさげに見えるが……。
「はいそうでーす」
僕はカエル顔のドクターからカルテを奪い取りニッコリと笑いかける。
この男が父さんの言っていた町医者とは思えないが、とりあえず脅してみるか。
そうじゃなきゃ、血の聖誕祭のことも、あの椿勝利のことも分からず仕舞いだ。
僕は暗器として袖口に隠し持っていたコンバットナイフを突きつけようと手を伸ばそうとしたが………
「やれやれ……。彼には中立を貫くと言っていた筈なんだがね」
「…………っ」
カエル顔のドクターの手には隠し持っていた筈のコンバットナイフが。
──全く反応出来なかった。
反応する間もなくコンバットナイフを奪われたのだ。
まさか、このカエル顔のドクターが父さんの言っていた接触してはいけない町医者だっていうのか。
張り詰めた空気が診察室を支配するなか、カエル顔のドクターはコンバットナイフをゴミ箱へと投げ捨てると、つまらなさそうにため息をつくのだった。