Episode.11 DESPAIR
「……」
姫矢のデータベースに降り立つと目の前に電脳空間が広がった。
何もない真っ白な空間に0と1の数字が浮かび上がっている。
さながらSF映画のワンシーンに出てきそうな空間だ。
アークゼロカプセルに宿った人工知能アークによって、こちらの脳を焼ききらんばかりに押し寄せる膨大な情報を処理していく。
ザイアスペックの使用やジュエルドライバーで亡に変身することも考えたが、ザイアスペックでは間違いなく性能が追い付かないし、亡は変身者たるシステムエンジニアヒューマギアの特性によるものか、ハッキングによる機械の支配に特化しているように思う。
それにこういった膨大な量のデータを処理するのであれば、そのデータの量に負けない性能を誇る最高峰の人工知能に頼るしかない。
それにファイヤーウォールの突破のようなめんどくさい作業もアークが勝手にやってくれるしね。
故に僕は人工知能アークに頼ることにした……というわけだ。
「っ……!」
0と1を象った無数の光は僕の体を飲み込んだ。
これはこのサーバーに保管された膨大な量のデータの奔流だ。
幸い、人工知能アークによるサポートを受けられているため苦痛はない。
やがてファイヤーウォールを突破し、莫大な量の情報も無事最適化されたのか、僕の意識は真っ暗な空間に転送された。
真っ暗な空間には様々な兵器の名称やその設計図や運用試験のレポート、兵器の運用試験の映像などが、スクリーンすらない空間に直接映し出されている。
どうやらこれが姫矢のサーバーに保管されていたこれまで開発してきた兵器群のデータだ。
「予想以上の量のデータだ……。
少なくともザイアスペックだったら僕の脳までやられたな」
『レイザーギア』に『トランスフェイサー』……本当に色々作ってきたのがわかる。
あらゆる企業や勢力を吸収し、技術を吸い上げる。
財団Xと似たようなことをやって、今では影の首都の中心か。
父さんが各世界のライダーたちの活躍で半壊し居場所を失った財団Xのエージェントを組織のメンバーとして引き入れていたため、元財団Xのエージェントが何人もいたりする。
そんな元エージェントのひとりから聞いた話だが、財団Xと姫矢グループ……特にその中心であった姫矢ファウンデーションとは多少ばかり衝突があったようだ。
同じ兵器ビジネスのシェアを奪い合う同業他社だから尚更のことだろう。
しかし吸い上げた技術をそのまま流用していた財団Xに対し、姫矢は独自性の高い兵器を次々に開発し、水面下で世界の兵器ビジネスを独占していった。
ライダーたちの活躍とエージェントの裏切り、重役の死亡が重なり財団Xは表舞台から姿を消し、財団Xに成り代わるように姫矢が世界を裏から支配する組織となっていった。
一応、姫矢市に位置するここの三日月型のビルが本社とされているがそれも怪しい。
僕は血の聖誕祭当時の事は詳しくはないのだが、一度この街は壊滅的な被害に遭っており、当時の姫矢コーポレーション代表取締役『姫矢 雅紀(ひめや まさのり)』や姫矢雅紀を支持する重役たちの死亡が重なったにも関わらず、姫矢グループという企業群には全くといっていいほどダメージはなかった。
それどころか、姫矢コーポレーションは新社長の就任と共にライバル企業のひとつであるジェネシスコーポレーションを吸収し、この街は更に発展していった。
それこそ血の聖誕祭が風化しかねないほどに。
こんなに姫矢の連中……いや、父さんたちにとって都合のいいことがあるはずもない。
『プライムに似た妙なライダー』やヴァルツに変身していた椿勝利といい、姫矢の街といい。
どうもこの企業は怪しいところだらけだ。
「……2016年12月25日……血の聖誕祭に投入された兵器は……っと」
2016年12月25日。
この日こそ後に血の聖誕祭と呼ばれる事件が起こった日だ。
これだけの事件だ。
おそらく大規模な戦闘になったのだろう。
それならば、事件の際にあらゆる兵器が投入されたのは想像に難しくはない。
新型兵器だって投入されているかもしれない。
血の聖誕祭について記されたデータにアクセスしてみることにしよう。
僕は目の前の空間に浮かび上がった映像に触れた。
しかし、なにも起こらない。
データが全く再生されないのだ。
本来ならば立体映像が投影され、勝手に再生されるのに、だ。
「ありゃ?」
何回タッチしてもデータが再生されない。
立体映像にしろPDF形式の文章にしろ、何らかのデータが再生されるはずなのに。
データが壊れているのか?
『警告!警告!』
「やっば………!!」
『警告。認証情報の取得に失敗しました。
60秒以内に正しい認証情報を入力されない場合は強制ログアウトが実行されます。
日付、時間、場所を含むこのファイルへのアクセスに関する情報は姫矢記録情報セキュリティ監視センターへと自動で転送されます。
警告。認証情報の取得に失敗しました………』
アークゼロカプセルでファイヤーウォールを潜り抜け、数々のトラップも自動で解除したはずだった。
しかし、どうやらファイル自体に何らかのトラップ……もといセキュリティプログラムが仕込まれていたようだ。
僕はアークゼロカプセルの力を解放し、セキュリティプログラムの停止を試みる。
黒地に赤い光を放つ無数の文字が僕の足元からこの空間全体に放たれた。
プログラムに侵入し、アークが導き出した最適解に基づきセキュリティプログラムを停止させ、数々の閲覧履歴を抹消するのだ。
しかし姫矢の……いや、この世界の根幹を成すサーバーは、悪意の化身の力をもってしても陥落することはかなわない。
「ここまでか………!」
結局、なんの成果も得られぬまま僕は仮想世界から脱出することとなった。
姫矢のデータベースに降り立つと目の前に電脳空間が広がった。
何もない真っ白な空間に0と1の数字が浮かび上がっている。
さながらSF映画のワンシーンに出てきそうな空間だ。
アークゼロカプセルに宿った人工知能アークによって、こちらの脳を焼ききらんばかりに押し寄せる膨大な情報を処理していく。
ザイアスペックの使用やジュエルドライバーで亡に変身することも考えたが、ザイアスペックでは間違いなく性能が追い付かないし、亡は変身者たるシステムエンジニアヒューマギアの特性によるものか、ハッキングによる機械の支配に特化しているように思う。
それにこういった膨大な量のデータを処理するのであれば、そのデータの量に負けない性能を誇る最高峰の人工知能に頼るしかない。
それにファイヤーウォールの突破のようなめんどくさい作業もアークが勝手にやってくれるしね。
故に僕は人工知能アークに頼ることにした……というわけだ。
「っ……!」
0と1を象った無数の光は僕の体を飲み込んだ。
これはこのサーバーに保管された膨大な量のデータの奔流だ。
幸い、人工知能アークによるサポートを受けられているため苦痛はない。
やがてファイヤーウォールを突破し、莫大な量の情報も無事最適化されたのか、僕の意識は真っ暗な空間に転送された。
真っ暗な空間には様々な兵器の名称やその設計図や運用試験のレポート、兵器の運用試験の映像などが、スクリーンすらない空間に直接映し出されている。
どうやらこれが姫矢のサーバーに保管されていたこれまで開発してきた兵器群のデータだ。
「予想以上の量のデータだ……。
少なくともザイアスペックだったら僕の脳までやられたな」
『レイザーギア』に『トランスフェイサー』……本当に色々作ってきたのがわかる。
あらゆる企業や勢力を吸収し、技術を吸い上げる。
財団Xと似たようなことをやって、今では影の首都の中心か。
父さんが各世界のライダーたちの活躍で半壊し居場所を失った財団Xのエージェントを組織のメンバーとして引き入れていたため、元財団Xのエージェントが何人もいたりする。
そんな元エージェントのひとりから聞いた話だが、財団Xと姫矢グループ……特にその中心であった姫矢ファウンデーションとは多少ばかり衝突があったようだ。
同じ兵器ビジネスのシェアを奪い合う同業他社だから尚更のことだろう。
しかし吸い上げた技術をそのまま流用していた財団Xに対し、姫矢は独自性の高い兵器を次々に開発し、水面下で世界の兵器ビジネスを独占していった。
ライダーたちの活躍とエージェントの裏切り、重役の死亡が重なり財団Xは表舞台から姿を消し、財団Xに成り代わるように姫矢が世界を裏から支配する組織となっていった。
一応、姫矢市に位置するここの三日月型のビルが本社とされているがそれも怪しい。
僕は血の聖誕祭当時の事は詳しくはないのだが、一度この街は壊滅的な被害に遭っており、当時の姫矢コーポレーション代表取締役『姫矢 雅紀(ひめや まさのり)』や姫矢雅紀を支持する重役たちの死亡が重なったにも関わらず、姫矢グループという企業群には全くといっていいほどダメージはなかった。
それどころか、姫矢コーポレーションは新社長の就任と共にライバル企業のひとつであるジェネシスコーポレーションを吸収し、この街は更に発展していった。
それこそ血の聖誕祭が風化しかねないほどに。
こんなに姫矢の連中……いや、父さんたちにとって都合のいいことがあるはずもない。
『プライムに似た妙なライダー』やヴァルツに変身していた椿勝利といい、姫矢の街といい。
どうもこの企業は怪しいところだらけだ。
「……2016年12月25日……血の聖誕祭に投入された兵器は……っと」
2016年12月25日。
この日こそ後に血の聖誕祭と呼ばれる事件が起こった日だ。
これだけの事件だ。
おそらく大規模な戦闘になったのだろう。
それならば、事件の際にあらゆる兵器が投入されたのは想像に難しくはない。
新型兵器だって投入されているかもしれない。
血の聖誕祭について記されたデータにアクセスしてみることにしよう。
僕は目の前の空間に浮かび上がった映像に触れた。
しかし、なにも起こらない。
データが全く再生されないのだ。
本来ならば立体映像が投影され、勝手に再生されるのに、だ。
「ありゃ?」
何回タッチしてもデータが再生されない。
立体映像にしろPDF形式の文章にしろ、何らかのデータが再生されるはずなのに。
データが壊れているのか?
『警告!警告!』
「やっば………!!」
『警告。認証情報の取得に失敗しました。
60秒以内に正しい認証情報を入力されない場合は強制ログアウトが実行されます。
日付、時間、場所を含むこのファイルへのアクセスに関する情報は姫矢記録情報セキュリティ監視センターへと自動で転送されます。
警告。認証情報の取得に失敗しました………』
アークゼロカプセルでファイヤーウォールを潜り抜け、数々のトラップも自動で解除したはずだった。
しかし、どうやらファイル自体に何らかのトラップ……もといセキュリティプログラムが仕込まれていたようだ。
僕はアークゼロカプセルの力を解放し、セキュリティプログラムの停止を試みる。
黒地に赤い光を放つ無数の文字が僕の足元からこの空間全体に放たれた。
プログラムに侵入し、アークが導き出した最適解に基づきセキュリティプログラムを停止させ、数々の閲覧履歴を抹消するのだ。
しかし姫矢の……いや、この世界の根幹を成すサーバーは、悪意の化身の力をもってしても陥落することはかなわない。
「ここまでか………!」
結局、なんの成果も得られぬまま僕は仮想世界から脱出することとなった。