Episode.11 DESPAIR

「どおしてだよ……どおして……だよ……!」


「……」


ネスがツインマキシマムを暴発させ、呻き声をあげる中、一人無言で変身解除をしたフロース。

養豚場の豚をみるような冷たい目で、蔑むように地面に横たわるネスを一瞥するとすぐに踵を返しこちらの方へ歩いてくる。


なんていうか……ホントに淡々としてるよ。


そして、フロースと入れ替わりに父さんがネスの方へ向かった。



「……やっぱりツインマキシマムには耐えられなかったか」


「ぐっ……なんで……こんな……っ!」


ネスを見下ろす父さん。
ネスに呆れているのか、それとも本当に何も感じていないのか。

いつにも増して無表情であり、その心情は家族である僕にすら解らない。



「そんなこともわかんねェのか。

お前の体が耐えられてねぇんだよ、メモリの出力にな。

お前……エッグ&チキンメモリの出力、侮ってたろ?」


「………っ!」


「図星かよ」


はぁ……とため息をつくと、ネスの顔のそばにしゃがみこむとネスの額を軽くごつく。

ゴツンという鈍い音がして、ネスは額を押さえながら悶絶する。



「…………っ~~!!」


「クソメモリって侮っておいてこれかよ。話になんねェな……

今のテメェを、テメェの“生徒たち”が見たらなんて思うかねェ?」


「……っ」


父さんの言葉に言い返す言葉もないと言いたげに顔を伏せる。

『生徒たち』という言葉が恐らく響いたのだろう。


父さんの話によると、ネスは元いた魔法の世界で基礎魔法教室の教師の真似事をしていたのだとか。

だけど、それは所詮『真似事』に過ぎない。

いくら才能や教養があろうと、いくら教え方が上手かろうと、父さんのいう通りコイツには『経験』が圧倒的に足りない。

誰かを教え、導く能力が圧倒的に欠けるのだ。

せいぜいコイツが出来るのは『先輩』までであり、『先生』としては向いてないということだ。



「たとえ始まりが気まぐれでもな、『先生』として教壇に立ったのなら最後まで責任を持てよ。

己の行動に、己の言葉に、己の思想に……。

たとえそこに教え子がいなくても。


……自分の教え子に教えてきたこと何一つ守れてねぇんだよ、お前は」


「っ……黙れ!!」


その言葉を聞くとネスは手を伸ばし、父さんに掴みかかろうとする。

しかし、そこにフロースが割って入ると、ネスの腕をひねり、肘鉄と共にネスの体を地面に叩きつけた。



「ガバッ……!」


「……やれやれ。言った側からこれか」


「お前が………お前が言うなっ!!

私たちの世界を………アイツらを消したお前が………っ!!」


地面に叩きつけられたネスは父さんに向かって叫ぶが、直後糸が切れたかのようにそのまま気を失った。

フロースの手刀による一撃がネスを黙らせたのだ。



「本当に困ったもんだ……」


暴れ馬のネスに対してなのか、それともネスを黙らせたフロースに対してか……父さんはぼやくように呟くとひとりため息をつくのだった。
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