Episode.11 DESPAIR

「ぐっ……!!」


カラスアマゾンが立ち上がり、ディスペアーの体を蹴りあげるとディスペアーは上空に放り出される。



「……」


かかと落としをディスペアーの胴体に叩き込み地面に叩きつけると、カラスアマゾンは軽やかに着地。

彼女の周囲に黒い羽根が舞い落ちる。


無理やり起こし拳を、蹴りを叩きつけ、淡々と作業的にディスペアーを追い詰めていくカラスアマゾン……フロース。


夏真っ盛りにも関わらず全身を覆う黒い服に身を包み、淡々と攻撃を浴びせるあの少女の素顔は“僕すら知らない”。
フロースはあの見た目でこの組織の最古参メンバーのひとりなのだが、父さんにフロースのことを聞いてもはぐらかされるばかりで教えて貰えなかった。


当然フロース本人に訪ねても何も答えなかった。
正直こちらが一歩的に話しても一言も話さないその様は人ではなく、人を模した“モノ”……。

読んで字の如く人形か、それともオリジナルのカラスアマゾンに変身していた少女・イユと似たような存在なのか……。

それがフロースの正体ではないかと僕は睨んでいる。

仮面ライダーの世界に死者蘇生技術はパッと思いつくものだけで2つほど思いつくしね。


だけど、その2つの死者蘇生技術で死者を甦らせた場合、定期的にメンテナンスを行わなければならない。

しかし……フロースがそういったメンテナンスを行っているところをみたことがない。


ま、それもどうだっていいことだが。




「ふっ……ふざけるな……!」


立て続けに攻撃を受け続け、よろけていたディスペアーが体制を立て直すとディスペアーサーベルのスロットにガイアメモリを装填した。

装填したガイアメモリは『エッグ&チキン』。

一本のメモリに2つの記憶を内包した珍しいガイアメモリだ。



《EGG!CHICKEN!》

《OYAKODON!MAXIMUM-DRIVE!》


「大丈夫かな~……アイツ」


エッグ&チキンメモリはその希少性故にあまり出回らないガイアメモリだが、2つの記憶を内包しているだけあって非常に強力なガイアメモリだ。

そしてアイツに父さんが渡したエッグ&チキンメモリはロストドライバーやアイツの使うディスペアードライバーのような次世代型ガイアドライバー用に純正化を行っているためエネルギー変換効率も流通しているドーパントメモリより改善されている。

すなわち、使いこなせれば切り札になり得るほどに強力だが……使いこなせなかった時は使用者に牙を剥く諸刃の剣となる。


《MAXIMUM-DRIVE!MAXIMUM-DRIVE!MAXIMUM-DRIVE!MAXIMUM-DRIVE!MAXIMUM-DRIVE!MAXIMUM-DRIVE!MAXIMUM-DRIVE!MAXIMUM-DRIVE!MAXIMUM-DRIVE!MAXIMUM-DRIVE!……》


「ぐっ………うぅぅ………!!」


「あっつ!」


バグでも発生したかのように同じガイダンスボイスを繰り返すガイアメモリ。

それと共にディスペアーサーベルの刀身やディスペアーのボディから離れた位置にいる僕も思わず顔を背けてしまうほどの熱気が発せられ、ディスペアーが苦悶の声をあげる。

どうやらエッグ&チキンメモリは2つの記憶を内包しているため、マキシマムドライブを発動することでたった1本なのにも関わらずツインマキシマムを発動してしまうのだ。


通常のガイアメモリのマキシマムドライブとは比べ物にならないほどの力を発揮するが、当然その負荷も桁違いだ。


……当然ネス程度の実力ではツインマキシマムを制御は不可能である。



「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

やがて制御不可能な程に増幅された力はディスペアーサーベルを中心に炸裂。

ディスペアーサーベルも、それを所持していたディスペアーも共に爆炎に包まれた。


「……ダメだったか」

「あーあ……」

僕たちの足元に転がってくるエッグ&チキンメモリ。

熱気に晒され、表面は熱くなっていたもののメモリが破壊されることはなかった。



しかし……






「……どおして……だよォォ………!」


視線を上げた先には、黒焦げになったネスが地面にうつ伏せになっている姿があった。
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