Episode.11 DESPAIR
────
──
「なぁ、勝利」
「……どうした?」
昼下がりのBATTLER。
俺と勝利は理緒に店番を頼まれ、二人で店番をしていた。
しかし……デジャブを感じる光景だ。
……いや、これは少し前の出来事だ。
拐われたノエルを助け出した次の日、俺は勝利とこんなやり取りをした覚えがある。
となると、これは……夢か。
「……そういやお前、仮面ライダーになる前はどうしてたんだよ?」
「あぁ、孤児院にいたんだよ俺ら。
アンゲロスのせいで俺らの親死んだから。
……まぁ、孤児院に入るまでホームレス生活だったけどな」
「……マジか」
「その孤児院もアンゲロスのせいでなくなっちまった。
結局生き残ったのは俺と亨多と孟だけ。
だからアンゲロス狩りを動画にして配信してるってわけ。
そうでもしなきゃ、学もねぇ身寄りもいねぇ俺たちは生きてくことなんて出来やしねぇからな」
何の気なしに始めた会話だったが、思いっきり地雷を踏んでしまった。
しかし、当の勝利はというと、あっけらかんとして身の上を話してくれた。
思っていたよりもハードな話だ。
俺も両親がいなかったから姉貴が親代わりだったが……。
姉貴がしっかりしてたから、生活にそこまで困ることはなかった。
……俺はどう言葉をかけていいか分からなくなった。
だけどここで沈黙してしまうと勝利に悪い。
俺は絞り出すように言葉を紡いだ。
「ならさ、お前……ここで働かないか?
……さすがにその……アンゲロス狩りってアレは、あまり健全じゃねぇっていうか……
給料は落ちるかもしれねぇけど、それでもアレよりはマシだろ」
「うーん……出来りゃそうしたいよな」
「なら………」
含みを持たせた言葉。
勝利はどこか遠くを見るような目で窓の外に目を向けた。
「………だけど、今更アンゲロス狩りを辞めることなんて出来ねぇからさ」
「お前……」
勝利たちが始めたアンゲロス狩りの動画がこうして流行ってしまった以上、勝利たちに影響されてアンゲロス狩りの真似事をする若者たちが増えたと聞く。
アンゲロス狩りを実際にやってアンゲロスに返り討ちにされた奴もいた。
アンゲロス狩りに見せかけた暴行事件も起きた。
この間ノエルを拐ったアンゲロスだってアンゲロス狩りに見せかけた暴行事件の被害者だった。
そんな二次被害が出ているせいもあり、勝利たち自身もSNSで叩かれているようだ。
なんでそこまでして……自分達の手を汚してまで、二次被害を拡大させてまで、そして自らの首を絞めてまでこんなことを続けるのか。
それらも全部……社会や大人たちに見捨てられた自分達が生きるためだとでも言うのだろうか。
それにしても俺には勝利が生き急いでいるように見える。
「もちろん自分達が生きるためだけじゃない。
そこまでしてでも、“最短時間でアンゲロスを全員倒さなきゃなんねぇ”んだ。
それに今は勇騎さんたちみたいなライダーだっている。
他の世界のライダーたちが余計なことをする前に………!
──じゃないと……この街どころかこの世界そのものが滅んでしまう」
「なんだよそれ………」
「だから戦ってんの、俺は。
世界を護ることが自分達の大切な人を護ることに繋がるんだ。
それに、この世界には“生け贄”は必要だろ?
………だから俺がその生け贄って訳」
「おい!」
俺は思わず勝利に掴みかかってしまった。
勝利はどこか空虚な目で俺を見る。
その目はどこか暗く、かつて俺と共に戦った仲間の1人……いやコイツはあの日の俺だ。
己の無力さや世界の残酷さに屈したあの日の俺。
──コイツも自分の命を勘定に入れていない。
放っておけば自ら命を投げ出してしまうだろう。
「……もういい、やめようこの話は」
だけど、俺は勝利から手を離すと一言だけ告げた。
勝利も「わかった」と一言だけいうとカウンターの掃除に向かった。
確かにコイツは昔の俺に似ている。
だけど……コイツの抱えているモノは俺のその何倍にも重く、俺1人ではどうしようもない程だ。
ここで勝利に説教をするのは簡単かもしれないが、俺の言葉など勝利には届かないのかもしれない。
──そうだったな。
なんであんなにアイツのことを気にかけていたのか、ようやくわかった気がするよ。
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「なぁ、勝利」
「……どうした?」
昼下がりのBATTLER。
俺と勝利は理緒に店番を頼まれ、二人で店番をしていた。
しかし……デジャブを感じる光景だ。
……いや、これは少し前の出来事だ。
拐われたノエルを助け出した次の日、俺は勝利とこんなやり取りをした覚えがある。
となると、これは……夢か。
「……そういやお前、仮面ライダーになる前はどうしてたんだよ?」
「あぁ、孤児院にいたんだよ俺ら。
アンゲロスのせいで俺らの親死んだから。
……まぁ、孤児院に入るまでホームレス生活だったけどな」
「……マジか」
「その孤児院もアンゲロスのせいでなくなっちまった。
結局生き残ったのは俺と亨多と孟だけ。
だからアンゲロス狩りを動画にして配信してるってわけ。
そうでもしなきゃ、学もねぇ身寄りもいねぇ俺たちは生きてくことなんて出来やしねぇからな」
何の気なしに始めた会話だったが、思いっきり地雷を踏んでしまった。
しかし、当の勝利はというと、あっけらかんとして身の上を話してくれた。
思っていたよりもハードな話だ。
俺も両親がいなかったから姉貴が親代わりだったが……。
姉貴がしっかりしてたから、生活にそこまで困ることはなかった。
……俺はどう言葉をかけていいか分からなくなった。
だけどここで沈黙してしまうと勝利に悪い。
俺は絞り出すように言葉を紡いだ。
「ならさ、お前……ここで働かないか?
……さすがにその……アンゲロス狩りってアレは、あまり健全じゃねぇっていうか……
給料は落ちるかもしれねぇけど、それでもアレよりはマシだろ」
「うーん……出来りゃそうしたいよな」
「なら………」
含みを持たせた言葉。
勝利はどこか遠くを見るような目で窓の外に目を向けた。
「………だけど、今更アンゲロス狩りを辞めることなんて出来ねぇからさ」
「お前……」
勝利たちが始めたアンゲロス狩りの動画がこうして流行ってしまった以上、勝利たちに影響されてアンゲロス狩りの真似事をする若者たちが増えたと聞く。
アンゲロス狩りを実際にやってアンゲロスに返り討ちにされた奴もいた。
アンゲロス狩りに見せかけた暴行事件も起きた。
この間ノエルを拐ったアンゲロスだってアンゲロス狩りに見せかけた暴行事件の被害者だった。
そんな二次被害が出ているせいもあり、勝利たち自身もSNSで叩かれているようだ。
なんでそこまでして……自分達の手を汚してまで、二次被害を拡大させてまで、そして自らの首を絞めてまでこんなことを続けるのか。
それらも全部……社会や大人たちに見捨てられた自分達が生きるためだとでも言うのだろうか。
それにしても俺には勝利が生き急いでいるように見える。
「もちろん自分達が生きるためだけじゃない。
そこまでしてでも、“最短時間でアンゲロスを全員倒さなきゃなんねぇ”んだ。
それに今は勇騎さんたちみたいなライダーだっている。
他の世界のライダーたちが余計なことをする前に………!
──じゃないと……この街どころかこの世界そのものが滅んでしまう」
「なんだよそれ………」
「だから戦ってんの、俺は。
世界を護ることが自分達の大切な人を護ることに繋がるんだ。
それに、この世界には“生け贄”は必要だろ?
………だから俺がその生け贄って訳」
「おい!」
俺は思わず勝利に掴みかかってしまった。
勝利はどこか空虚な目で俺を見る。
その目はどこか暗く、かつて俺と共に戦った仲間の1人……いやコイツはあの日の俺だ。
己の無力さや世界の残酷さに屈したあの日の俺。
──コイツも自分の命を勘定に入れていない。
放っておけば自ら命を投げ出してしまうだろう。
「……もういい、やめようこの話は」
だけど、俺は勝利から手を離すと一言だけ告げた。
勝利も「わかった」と一言だけいうとカウンターの掃除に向かった。
確かにコイツは昔の俺に似ている。
だけど……コイツの抱えているモノは俺のその何倍にも重く、俺1人ではどうしようもない程だ。
ここで勝利に説教をするのは簡単かもしれないが、俺の言葉など勝利には届かないのかもしれない。
──そうだったな。
なんであんなにアイツのことを気にかけていたのか、ようやくわかった気がするよ。