Episode.11 DESPAIR
──2022年8月9日 10時20分。
あれから朝になるのを待ち、店に駆け込むと勇騎さんの部屋へ向かった。
あの変な夢をみたせいか、俺はエクスライザーの他にコルプスレイザーをバッグに詰め込んでいた。
コルプスレイザーは来栖さんとの戦いで故障し正常に動かなくなっていた。
結果的に母の形見となってしまっていたので廃棄こそしていなかったが、亨多では直せない程にドライバーの内部が痛んでいた。
もしものために……いや、昨夜あんな夢を見てしまったせいだ。
きっと母が怒っているのだと、そう感じたんだろうな俺は。
「……勇騎さん、やっぱ無理そう?」
勇騎さんは自室のテーブルに俺が差し出したコルプスレイザーを広げ、手際よく分解していく。
そしてコルプスレイザーの中身を確認した。
沈黙が部屋を支配する。
やっぱりダメなのか……なんとも言えぬ緊張感に耐えきれず、辺りを見回してみる。
勇騎さんの部屋には工具やら何かのパーツや、それを入れた段ボールやらがところ狭しと並んでいた。
……そっか。
こないだみたいに珍妙な発明品作るおかしな人だと思ってたけど、本当にみんなのライダーシステムのメンテナンスひとりでやってたんだな。
まぁ、そうじゃなきゃルーシーみたいなハイテクロボも作れないか。
一人で感心していると勇騎さんはようやく口を開いた。
「いや、俺なら直せる。
用意してある予備パーツで代用できそうだしな」
「そっか………」
よかった。直るのか……。
ホッと胸を胸を撫で下ろした俺。
しかし、勇騎さんは訝しげに俺を見て一言。
「けど……“コルプスレイザー”、だっけ?」
「あぁ、科学者だった母さんの形見なんだ」
「エラく物騒な名前だな、って思ってよ」
「……は?」
物騒な名前?コルプスレイザーが?
え?どの辺?
仮面ライダーに変身していようが、ベルトの名前なんて気にしてこなかった。
思わず俺は勇騎さんに聞き返してしまった。
「『コルプス』って『死体』って意味の言葉じゃなかったっけ?」
「………へ?」
なにそれ、聞いたことねぇよ。
勇騎さんの言葉をすぐに飲み込めずに俺は唖然とした。
だってそうだろ、母親の形見になったベルトの名前が『死体』なんだぜ?
まるでその……『死体専用のライダーシステム』みたいじゃんか。
「ホラ、昔……ちょっと名前忘れたけど『コープスなんたら』ってホラーゲームかアニメか……
ホラ、なんかあったろ……。
その『コープス』と同じ感じ。
まさか由来も知らずにベルトに名前なんてつけるわきゃねーしなぁ……。
それとも読み方は同じでも別の意味の言葉かもしれねぇし」
「……そ、そっか」
俺は動揺しながらも愛想笑いを浮かべた。
流石にこんなことで勇騎さんを責めることも出来ないし、勇騎さんのいうとおり別の意味の言葉かもしれない。
でも何故だろうか、こないだのジルのことといい、昨日の夢といい、コルプスレイザーのことといい。
この間から言い様のない不安を拭えずにいる。
「まぁ、いいや。
勇騎さん、急いでないからさ……暇なときにでもこのベルト直しといてよ」
「おう……わかった。
て言うか……お前、さっきから顔色悪いけど本当に大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫……昨日ちょっと寝れなかっただけだから」
「おっ、そうか……。
ならさっさと寝ろよ?」
「へーい………」
こうして俺は勇騎さんの部屋を後にした。
バッグの中に入れていたコルプスレイザーの代わりに言い様のない不安を抱えて、俺は仲間たちの待つバーへと戻っていくのだった。
あれから朝になるのを待ち、店に駆け込むと勇騎さんの部屋へ向かった。
あの変な夢をみたせいか、俺はエクスライザーの他にコルプスレイザーをバッグに詰め込んでいた。
コルプスレイザーは来栖さんとの戦いで故障し正常に動かなくなっていた。
結果的に母の形見となってしまっていたので廃棄こそしていなかったが、亨多では直せない程にドライバーの内部が痛んでいた。
もしものために……いや、昨夜あんな夢を見てしまったせいだ。
きっと母が怒っているのだと、そう感じたんだろうな俺は。
「……勇騎さん、やっぱ無理そう?」
勇騎さんは自室のテーブルに俺が差し出したコルプスレイザーを広げ、手際よく分解していく。
そしてコルプスレイザーの中身を確認した。
沈黙が部屋を支配する。
やっぱりダメなのか……なんとも言えぬ緊張感に耐えきれず、辺りを見回してみる。
勇騎さんの部屋には工具やら何かのパーツや、それを入れた段ボールやらがところ狭しと並んでいた。
……そっか。
こないだみたいに珍妙な発明品作るおかしな人だと思ってたけど、本当にみんなのライダーシステムのメンテナンスひとりでやってたんだな。
まぁ、そうじゃなきゃルーシーみたいなハイテクロボも作れないか。
一人で感心していると勇騎さんはようやく口を開いた。
「いや、俺なら直せる。
用意してある予備パーツで代用できそうだしな」
「そっか………」
よかった。直るのか……。
ホッと胸を胸を撫で下ろした俺。
しかし、勇騎さんは訝しげに俺を見て一言。
「けど……“コルプスレイザー”、だっけ?」
「あぁ、科学者だった母さんの形見なんだ」
「エラく物騒な名前だな、って思ってよ」
「……は?」
物騒な名前?コルプスレイザーが?
え?どの辺?
仮面ライダーに変身していようが、ベルトの名前なんて気にしてこなかった。
思わず俺は勇騎さんに聞き返してしまった。
「『コルプス』って『死体』って意味の言葉じゃなかったっけ?」
「………へ?」
なにそれ、聞いたことねぇよ。
勇騎さんの言葉をすぐに飲み込めずに俺は唖然とした。
だってそうだろ、母親の形見になったベルトの名前が『死体』なんだぜ?
まるでその……『死体専用のライダーシステム』みたいじゃんか。
「ホラ、昔……ちょっと名前忘れたけど『コープスなんたら』ってホラーゲームかアニメか……
ホラ、なんかあったろ……。
その『コープス』と同じ感じ。
まさか由来も知らずにベルトに名前なんてつけるわきゃねーしなぁ……。
それとも読み方は同じでも別の意味の言葉かもしれねぇし」
「……そ、そっか」
俺は動揺しながらも愛想笑いを浮かべた。
流石にこんなことで勇騎さんを責めることも出来ないし、勇騎さんのいうとおり別の意味の言葉かもしれない。
でも何故だろうか、こないだのジルのことといい、昨日の夢といい、コルプスレイザーのことといい。
この間から言い様のない不安を拭えずにいる。
「まぁ、いいや。
勇騎さん、急いでないからさ……暇なときにでもこのベルト直しといてよ」
「おう……わかった。
て言うか……お前、さっきから顔色悪いけど本当に大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫……昨日ちょっと寝れなかっただけだから」
「おっ、そうか……。
ならさっさと寝ろよ?」
「へーい………」
こうして俺は勇騎さんの部屋を後にした。
バッグの中に入れていたコルプスレイザーの代わりに言い様のない不安を抱えて、俺は仲間たちの待つバーへと戻っていくのだった。