Episode.11 DESPAIR
───
「……おーい、生きてっかー?」
あれからどのくらいの時間が経ったのだろうか。
私の顔に冷たいものがかかり、目を覚ました。
目を開けてみればそこにはヤカンを持ったジニアの姿が。
どうやら私にそのヤカンの中の水をかけたようである。
「……」
「ん?どしたー?」
「……。
……私って、全然強くなかったんだな」
自分でもこんなことを言うのは今更な気がする。
だけど、何度も挑み、何度も敗れ、もうこの男に反抗する気すらなくなってしまった。
直前の戦いなんて、変身すらしていない生身のジニア相手に手も足も出なかったんだ。
こんなザマで『絶望の担い手』なんて名乗れるほど私も愚かではない。
「今更気づいたか……おせーよボケ」
「………」
──何も言い返せない。
なんでこんなことに気づかなかったのだろう。
ノゾミに勝てなかった理由なんて少し考えれば分かることだったのに。
知らないうちに自分が強くなっていることに浮かれていたのだろうか。
こんなことじゃアイツらにも………私の“生徒たち”にも顔向け出来ない。
「でもよ、ソレを分かったんならよくね?」
「……は?」
これまた予想外の言葉。
この男のことだ。
ネチネチネチネチと嫌味をいい続けるのだと思っていたからだ。
しかし、奴の口から出たのは嫌味ではなくこれまたあっさりとした言葉。
これには思わず呆気にとられてしまった。
私はジニアの顔をマジマジと見てしまう。
「そりゃそうだろ……自分の実力を過大評価したまま死んでいった連中なんて星の数ほどいるからな」
「………」
「だからよ、てめぇ自身“自分の弱さ”を知ったんならさ、これからソレと向き合えばいいんじゃね?」
──“弱さを知り強くなる”。
そんなもの戯れ言だと思っていた。
弱さを見せたものから消えていく。
それが私のいた世界のルールであり、全てであった。
だから、私は“力”を求めた。
私が私でいるために。
あの御方の剣であるために。
そして……私自身を超えるために。
実際、ノゾミから流れ込んできた“力”によってノゾミが強くなる度、私も強くなれたし、それで組織のなかでも生き残れた節もあった。
結局、その力もホンモノではなかったが。
だからこそだ。
目の前の男が私の過ちを否定するのではなく肯定してくるとは。
「でも、私はどうしたら」
「簡単だ。経験を積めばいいんだよ……それこそノゾミよりも多く、ノゾミより濃い経験をな」
「……」
「だけど俺とお前とじゃ力量に差がありすぎる。
だからお前と実力の近い奴をお前の教育係にする」
私と実力の近い奴か。
なるほど……私の他にもこの組織に入ったばかりの者がいたのか。
「来い、フロース」
「………YES、マスター」
刹那、ジニアの傍に何者かが降り立った。
私より低い背丈やスカートから覗くストッキングに包まれた脚を見れば、ソイツが私……というよりノゾミと近い年齢の少女だと分かる。だが……
夏真っ盛りだと言うのに素肌を全て覆う黒衣。
長めの赤髪。
そして目を引くのが狐の面。
殺気どころか、生気すら感じない。
儚くも華やかな『花』を意味する名前が皮肉にすら感じる。
目の前の少女はまさに『異形』かつ『異質』な存在。
私は狐の面を被った少女……フロースが現れると反射的に立ち上がり身構えた。
「ネスに稽古をつけてやれ」
「YES、マスター……」
「っ!」
なるほど……私には休みなどないという訳か。
だが、それでいい。
私は私自身を超える。
そのためなら、なんだってする。
私は再びディスペアードライバーを装着するのであった。
「……おーい、生きてっかー?」
あれからどのくらいの時間が経ったのだろうか。
私の顔に冷たいものがかかり、目を覚ました。
目を開けてみればそこにはヤカンを持ったジニアの姿が。
どうやら私にそのヤカンの中の水をかけたようである。
「……」
「ん?どしたー?」
「……。
……私って、全然強くなかったんだな」
自分でもこんなことを言うのは今更な気がする。
だけど、何度も挑み、何度も敗れ、もうこの男に反抗する気すらなくなってしまった。
直前の戦いなんて、変身すらしていない生身のジニア相手に手も足も出なかったんだ。
こんなザマで『絶望の担い手』なんて名乗れるほど私も愚かではない。
「今更気づいたか……おせーよボケ」
「………」
──何も言い返せない。
なんでこんなことに気づかなかったのだろう。
ノゾミに勝てなかった理由なんて少し考えれば分かることだったのに。
知らないうちに自分が強くなっていることに浮かれていたのだろうか。
こんなことじゃアイツらにも………私の“生徒たち”にも顔向け出来ない。
「でもよ、ソレを分かったんならよくね?」
「……は?」
これまた予想外の言葉。
この男のことだ。
ネチネチネチネチと嫌味をいい続けるのだと思っていたからだ。
しかし、奴の口から出たのは嫌味ではなくこれまたあっさりとした言葉。
これには思わず呆気にとられてしまった。
私はジニアの顔をマジマジと見てしまう。
「そりゃそうだろ……自分の実力を過大評価したまま死んでいった連中なんて星の数ほどいるからな」
「………」
「だからよ、てめぇ自身“自分の弱さ”を知ったんならさ、これからソレと向き合えばいいんじゃね?」
──“弱さを知り強くなる”。
そんなもの戯れ言だと思っていた。
弱さを見せたものから消えていく。
それが私のいた世界のルールであり、全てであった。
だから、私は“力”を求めた。
私が私でいるために。
あの御方の剣であるために。
そして……私自身を超えるために。
実際、ノゾミから流れ込んできた“力”によってノゾミが強くなる度、私も強くなれたし、それで組織のなかでも生き残れた節もあった。
結局、その力もホンモノではなかったが。
だからこそだ。
目の前の男が私の過ちを否定するのではなく肯定してくるとは。
「でも、私はどうしたら」
「簡単だ。経験を積めばいいんだよ……それこそノゾミよりも多く、ノゾミより濃い経験をな」
「……」
「だけど俺とお前とじゃ力量に差がありすぎる。
だからお前と実力の近い奴をお前の教育係にする」
私と実力の近い奴か。
なるほど……私の他にもこの組織に入ったばかりの者がいたのか。
「来い、フロース」
「………YES、マスター」
刹那、ジニアの傍に何者かが降り立った。
私より低い背丈やスカートから覗くストッキングに包まれた脚を見れば、ソイツが私……というよりノゾミと近い年齢の少女だと分かる。だが……
夏真っ盛りだと言うのに素肌を全て覆う黒衣。
長めの赤髪。
そして目を引くのが狐の面。
殺気どころか、生気すら感じない。
儚くも華やかな『花』を意味する名前が皮肉にすら感じる。
目の前の少女はまさに『異形』かつ『異質』な存在。
私は狐の面を被った少女……フロースが現れると反射的に立ち上がり身構えた。
「ネスに稽古をつけてやれ」
「YES、マスター……」
「っ!」
なるほど……私には休みなどないという訳か。
だが、それでいい。
私は私自身を超える。
そのためなら、なんだってする。
私は再びディスペアードライバーを装着するのであった。