Episode.11 DESPAIR

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「準備はいいかネス?」


特訓と称し、またもや連れていかれた地下の訓練施設。

ジニアはいつものスーツではなく、ずいぶんとラフな格好だった。
ベージュのトレンチコート、ダメージジーンズとずいぶんと若者っぽい服装だが……元々の見た目が20代くらいなので似合ってはいる。


……実年齢は42らしいが。




「……あぁ、いつでもいい」


私はジニアから渡されたベレー帽を被るとディスペアードライバーを装着する。

バックルを臍の下……すなわち丹田にあたる部分に押し当てるとベルトが伸び巻き付いた。


『丹田』とは人体において全ての“気”の発生源とされる箇所。

ライダーシステムとは、システムの詳細こそ異なれど、ベルトで丹田を刺激し眠っている“気”を活性化させることで人智を超えた力を目覚めさせるシステムだ。

人であろうとなかろうと、変身する者のほぼ全て『人型』である以上ライダーシステムによる強化……もとい『変身』させるというシステムはなかなか理にかなっているといえる。



《Despair!》

続いて私は懐から取り出したディスペアーメモリを取り出し起動。

このガイアメモリがドライバーを起動させるためのキーであり、ドライバーで起動させることで真価を発揮するソフトウェアだ。


ガイダンスボイスが鳴り響くとドライバーに装填し、展開。

ガイアメモリに内包された“絶望の記憶”が解き放たれた。



《Despair!》

黒い稲妻と共に、丹田へと力が流れ込み、それと共に体が解き放たれた私の“力”に耐えうる為の肉体に作り替えられる。

生体装甲や強化皮膚に包まれた体にマントが装着されて変身が完了する。


黒いボディに金色のライン、赤い複眼。
全てにおいてシンプルなシルエットだ。

今思えばずいぶんと地味な姿だと思う。



『仮面ライダーディスペアー』。


これが絶望の担い手として生まれてきた私の得た最初の力。



「……さて俺はどうしようかね」


奴も同じようにドライバーを装着した。
装着したものは『ジュエルドライバー』と呼ばれるスロットとボタンのみのシンプル……というより簡素な作りのベルト。

これと同じ作りのものを私は自分の世界でみたことがある。

『ダークジュエルドライバー』と『レプリカジュエル』。


Xマジンラーがリベルの世界からの技術を盗用し複製したものだ。

一般人に流出したものより強力なものとなっているが、流石にジニアの使っているそれより性能は劣っている。


……いや、正確にはジニアの使っているジュエルドライバーの性能が従来のものとは比べ物にならないのだ。

それでいて、ベルトの性能や機能を知り尽くし、それらに全てを依存せず状況に応じて戦い方を変えてくるこの男の引き出しの多さと戦闘センスの高さ……。

それらも相まって、私ですら手も足も出ずにやられてしまった。


でなければ性能の劣るサタンサーベルでディスペアーサーベルを折るなどありえないからな。


だからこそ……悔しいが、この男の実力は本物だと認めるしかない。



そうだ、勘違いしないでほしい。
決して私は弱くない。決してだ。

決して私は噛ませ犬などではない。決してだ。


………誰だ、『今の今までいいところ無しじゃないか』とか言った奴は。




「決まった。じゃあ行こうか」


やがてジニアはひとつだけジュエルを取り出すと、ベルトに装填した。



《SET-UP……》


「変身」


《チェーンジ……

仮面ライダー……デューク》


《レモンエナジーアームズ!》


《ファイトパワー!ファイトパワー!

ファイファイファイファイ!
ファファファファファファイッ!!》


ベルトに装填し、ボタンを押すことでジュエルに宿ったライダーの力が解放される。

それと共に形成される“裂け目”─クラック─。


ファスナーのような形状の時空の裂け目から現れたのは果物……巨大なレモンを模したアーマー。

巨大なレモン型アーマーは展開しながらジニアの頭部にすっぽり覆い被さるとインナースーツを形成。

更にアーマーが変形し、ライダーの仮面が現れると展開したレモンは“鎧”として定着。

文字通り鎧とマントへと変化した。


目の前のライダーのように、果物を模したアーマーを着込むことで変身を行う仮面ライダーを総称して『アーマードライダー』と呼称しているが、目の前のコイツもそのアーマードライダーのひとり。


奴の名は『アーマードライダーデューク』。

ジニアと同じように科学者の男が変身していたというアーマードライダーだ。



「デューク……相手にとって不足はない……!」


私は自身の専用武器であるディスペアーサーベルを握りしめる。

今日こそはこのディスペアーサーベルの借りを返させてもらう……!
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