Episode.10 LUCY
──JILL SIDE ──
「………アイツ、一体何者なんだ……?」
父さんが実験台に選んだであろう、あの男……椿 勝利を“片付け”、僕は自分達のアジトの地下訓練施設にいるのだが、父さんから借りた二本のカプセルを弄りながら思案にふけっている。
あ、ここからはこの僕、ジル・ロックディールが語り部をつとめさせてもらうよ。
………なーんて冗談を言ってる暇もなかったり。
というのも、あの時僕は確実に椿勝利を殺していたはずなんだ。
僕の『チカラ』で筋力を強化し、アイツの頭を“文字通り潰した”。
潰したはずなんだ。手応えもたしかにあった。
て言うか間違いなく潰してた。
アイツの頭がスイカのように割れたのは見えたし、確実に事切れていた……とは思う。
だけど、脚をどけてみたらアイツの頭はどういう訳か“潰れてなかったんだ”。
頭からは出血してたけどさ。
……ちゃんと潰せてなかったのか?
それとも何かに防がれた?
ダブルアクションゲーマーの力を使った時に人格が分裂してたし、アイツ自身の傷の治りも異様に早いように思える。
それに加えて荒削りとはいえ父さんのようにヴァルツの力も引き出しつつある。
現にもうアナザージオウの未来予知を攻略してきた。
「おそらくアイツが一番の脅威になるんだろうね……」
他の連中は大したことなかった。
だけど、アイツは別だ。
今はまだ雑魚だけど、そのうち僕たちと同等……いや、それ以上の力を手に入れるだろう。
紛い物とはいえヴァルツの……次代の王の力を手にしたのはアイツであり、アイツの中にいるもうひとりのアイツなんだ。
──気にくわないけどそれは認めるしかない……か。
「……で、父さん。その新入りのコどうなの?」
ふと僕は変身している父さんに話しかける。
父さんが変身しているのは紫の蠍をモチーフにしたライダー……滅だ。
そして、父さんと対するのは赤毛で目付きの悪い女の子。
おそらくこの子が最近入った新入りの……ネスちゃんだっけ……だと思う。
「あー……見ての通りだ見ての通り」
「へぇー……」
ネスちゃんは片膝をつき、肩で息しながら滅に変身している父さんを睨む。
なんか昨日辺りからずーっとこの調子みたいだけど……正直アイツと比べたらビミョーなんだろうな。
ま、かませ犬くらいになればいっか。
僕はネスちゃんの方へと歩いていった。
「なんだお前……」
「そんなに構えないでよ。仲良くしよ?ね?」
ニッコリと笑顔を作り、ネスちゃんに微笑みかけると僕はネスちゃんの頭に手を置いた。
これにはネスちゃんも目を丸くした。
そして、その一瞬で僕はネスちゃんの頭に置いた手に力を込めた。
───ボ
小さな爆発音と共にネスちゃんの頭から登る青い炎。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ネスちゃんの頭を焼く蒼炎。
ほとんど感情を表に出さないネスちゃんもこれには声の限り叫ぶしかない。
「……な、何してる」
「何って、挨拶だよア・イ・サ・ツ。
こうやって身をもって上下関係を分からせてやんないとこの頭の悪い女は言うこと聞かないよ父さん?」
仮面越しに父さんが困惑しているのが伝わる。
ぷくく……本当に面白いよどいつもこいつも。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!私の髪が………私の髪がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ぷくく……アハハハハハハハハハハ………!
本当に面白くなりそうだ…………」
──前言撤回。本当に気分がいい。
椿勝利といい、目の前のオモチャといい。
本当にこれから楽しくなりそうだ。
僕は青い炎に髪の毛を焼かれ悶えるオモチャ……ネスちゃんを見ながら自分の顔が笑みに歪んでいくのを感じていた。
(続く)
「………アイツ、一体何者なんだ……?」
父さんが実験台に選んだであろう、あの男……椿 勝利を“片付け”、僕は自分達のアジトの地下訓練施設にいるのだが、父さんから借りた二本のカプセルを弄りながら思案にふけっている。
あ、ここからはこの僕、ジル・ロックディールが語り部をつとめさせてもらうよ。
………なーんて冗談を言ってる暇もなかったり。
というのも、あの時僕は確実に椿勝利を殺していたはずなんだ。
僕の『チカラ』で筋力を強化し、アイツの頭を“文字通り潰した”。
潰したはずなんだ。手応えもたしかにあった。
て言うか間違いなく潰してた。
アイツの頭がスイカのように割れたのは見えたし、確実に事切れていた……とは思う。
だけど、脚をどけてみたらアイツの頭はどういう訳か“潰れてなかったんだ”。
頭からは出血してたけどさ。
……ちゃんと潰せてなかったのか?
それとも何かに防がれた?
ダブルアクションゲーマーの力を使った時に人格が分裂してたし、アイツ自身の傷の治りも異様に早いように思える。
それに加えて荒削りとはいえ父さんのようにヴァルツの力も引き出しつつある。
現にもうアナザージオウの未来予知を攻略してきた。
「おそらくアイツが一番の脅威になるんだろうね……」
他の連中は大したことなかった。
だけど、アイツは別だ。
今はまだ雑魚だけど、そのうち僕たちと同等……いや、それ以上の力を手に入れるだろう。
紛い物とはいえヴァルツの……次代の王の力を手にしたのはアイツであり、アイツの中にいるもうひとりのアイツなんだ。
──気にくわないけどそれは認めるしかない……か。
「……で、父さん。その新入りのコどうなの?」
ふと僕は変身している父さんに話しかける。
父さんが変身しているのは紫の蠍をモチーフにしたライダー……滅だ。
そして、父さんと対するのは赤毛で目付きの悪い女の子。
おそらくこの子が最近入った新入りの……ネスちゃんだっけ……だと思う。
「あー……見ての通りだ見ての通り」
「へぇー……」
ネスちゃんは片膝をつき、肩で息しながら滅に変身している父さんを睨む。
なんか昨日辺りからずーっとこの調子みたいだけど……正直アイツと比べたらビミョーなんだろうな。
ま、かませ犬くらいになればいっか。
僕はネスちゃんの方へと歩いていった。
「なんだお前……」
「そんなに構えないでよ。仲良くしよ?ね?」
ニッコリと笑顔を作り、ネスちゃんに微笑みかけると僕はネスちゃんの頭に手を置いた。
これにはネスちゃんも目を丸くした。
そして、その一瞬で僕はネスちゃんの頭に置いた手に力を込めた。
───ボ
小さな爆発音と共にネスちゃんの頭から登る青い炎。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ネスちゃんの頭を焼く蒼炎。
ほとんど感情を表に出さないネスちゃんもこれには声の限り叫ぶしかない。
「……な、何してる」
「何って、挨拶だよア・イ・サ・ツ。
こうやって身をもって上下関係を分からせてやんないとこの頭の悪い女は言うこと聞かないよ父さん?」
仮面越しに父さんが困惑しているのが伝わる。
ぷくく……本当に面白いよどいつもこいつも。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!私の髪が………私の髪がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ぷくく……アハハハハハハハハハハ………!
本当に面白くなりそうだ…………」
──前言撤回。本当に気分がいい。
椿勝利といい、目の前のオモチャといい。
本当にこれから楽しくなりそうだ。
僕は青い炎に髪の毛を焼かれ悶えるオモチャ……ネスちゃんを見ながら自分の顔が笑みに歪んでいくのを感じていた。
(続く)