Episode.10 LUCY
「……決まった………!」
着地すると、ホルダーからカプセルを抜き取り変身を解除。
ワイルドローゼスの鎧は薔薇の花びらとなり崩れ落ちた。
そして、奴の方を振り向いた。
あれほどの実力者だ。
あの攻撃で倒せたとは思ってはいない。
だけど手応えはあった。
「……結構結構……。中々強いじゃん。僕も焦ったよ」
あのガキの変身は解除されており、右手からは血が滴っている。
奴は満身創痍。当然だ。
未来予知すら無効にするほどのスピードでベーシックフェイズのキックを上回る一撃を叩き込んでやったんだ。
流石にこれで無傷だったら怖ぇよ。
「さて……お前、ノエルのこと知ってるんだよな?
色々聞かせて貰おうか……お前ひとりに仲間もやられてるしな」
《ヴァルツガン!》
勇騎さんも、いつの間にか合流していた輝や将さんもやられていた。
だけどそれ以上に目の前にノエルの記憶の手がかりになりうる存在がいる。
戦闘で負傷させた今こそがノエルのことを知る絶好の機会ではないか?
俺はエクスライザーをヴァルツガンモードに切り替えると、銃口を向け奴に詰め寄った。
「ちょっと痛かったけど、中々いいデータは取れた。満足満足っと」
「おい、ふざけてんのか?俺の質問に………!」
しかし、奴は俺の言葉など聞いてはおらずせっせと帰る準備をしている始末。
あまりに緊張感のない相手の様子に苛立ち奴の頭に銃口を突き付けた。
その瞬間だった…………。
「───ッ!?」
俺の視界が上下に反転。
そのまま背中や頭に衝撃が走り、僅かに遅れ痛みが走る。
何が起こったのか、分からなかった。
しかし、それを理解するより早く胸部に鋭い痛みが走る。
「ガバッ………!!」
──息が出来ない。
胸に走る痛みに耐えつつ視線を移動させるとそこには満身創痍だったはずのあのガキが、俺の胸元を踏みつけているのだ。
まさか……俺はコイツに投げ飛ばされたっていうのか?
「あまり調子に乗んなよ、街のドブネズミが」
グリグリと脚に力を込め、痛めつけてくる目の前のガキ。
その目は今までとは比較にならないくらいに冷たく、どこまでも暗い。
それでいて、相変わらず殺気や怒りなんてものは全く感じない。
まるで俺が……いや俺たちが悪戯に痛めつけられるのが当たり前であるように、淡々と言葉と理不尽な暴力を叩きつけてくる。
「せっかく“勝たせてやった”のに。
お前らみたいな街の恥は、ぬか喜びしながらとっとと帰ればいいのにさ……バカだろ」
「ふ……ふざけんな………!誰が……誰が“街の恥”、だっ………!」
“街の恥”。“ドブネズミ”。
あの日以来、俺たちはそう蔑まれながらこの街で生きてきた。
駅に身を寄せ、物乞いをして、たまには盗みも働いた。
それで石も投げられたし、殴られもした。
この世の全ての罵詈雑言を投げつけられ、尊厳だけでなく文字通り命も奪われた。
災害とは無縁の恵まれた奴らには決して分からない痛み、苦痛、屈辱。
俺たちは常にそんな理不尽に耐えながら1日1日生きてきたんだ。
こんな奴に見下される筋合いなんてない。
俺は、奴の脚を掴むと反対の手でヴァルツガンを銃口を突き付け、ゼロ距離で引き金をひいた。
───ドォン!!
エネルギー弾が爆ぜる音。
俺の腕に走る確かな衝撃と伝わる熱気。
そして、何かが焦げた匂い。
普通ならこれで奴の脚は吹き飛んでいるはず。
しかし………
「なっ………!」
「お前、やっぱりバカなんだな」
奴の脚は吹き飛んでなどなかった。
銃口に面していた袴の裾が破けた程度。
おそらく奴の脚は無傷だ。
おそらく“これ”が奴本人に一切ダメージがなかった理由。
一体何が起こっているんだ?
このガキは一体何者なんだ!?
それすら考える暇もなく………
────グシャッ
顔面に走る衝撃と共に目の前が真っ暗になった。
着地すると、ホルダーからカプセルを抜き取り変身を解除。
ワイルドローゼスの鎧は薔薇の花びらとなり崩れ落ちた。
そして、奴の方を振り向いた。
あれほどの実力者だ。
あの攻撃で倒せたとは思ってはいない。
だけど手応えはあった。
「……結構結構……。中々強いじゃん。僕も焦ったよ」
あのガキの変身は解除されており、右手からは血が滴っている。
奴は満身創痍。当然だ。
未来予知すら無効にするほどのスピードでベーシックフェイズのキックを上回る一撃を叩き込んでやったんだ。
流石にこれで無傷だったら怖ぇよ。
「さて……お前、ノエルのこと知ってるんだよな?
色々聞かせて貰おうか……お前ひとりに仲間もやられてるしな」
《ヴァルツガン!》
勇騎さんも、いつの間にか合流していた輝や将さんもやられていた。
だけどそれ以上に目の前にノエルの記憶の手がかりになりうる存在がいる。
戦闘で負傷させた今こそがノエルのことを知る絶好の機会ではないか?
俺はエクスライザーをヴァルツガンモードに切り替えると、銃口を向け奴に詰め寄った。
「ちょっと痛かったけど、中々いいデータは取れた。満足満足っと」
「おい、ふざけてんのか?俺の質問に………!」
しかし、奴は俺の言葉など聞いてはおらずせっせと帰る準備をしている始末。
あまりに緊張感のない相手の様子に苛立ち奴の頭に銃口を突き付けた。
その瞬間だった…………。
「───ッ!?」
俺の視界が上下に反転。
そのまま背中や頭に衝撃が走り、僅かに遅れ痛みが走る。
何が起こったのか、分からなかった。
しかし、それを理解するより早く胸部に鋭い痛みが走る。
「ガバッ………!!」
──息が出来ない。
胸に走る痛みに耐えつつ視線を移動させるとそこには満身創痍だったはずのあのガキが、俺の胸元を踏みつけているのだ。
まさか……俺はコイツに投げ飛ばされたっていうのか?
「あまり調子に乗んなよ、街のドブネズミが」
グリグリと脚に力を込め、痛めつけてくる目の前のガキ。
その目は今までとは比較にならないくらいに冷たく、どこまでも暗い。
それでいて、相変わらず殺気や怒りなんてものは全く感じない。
まるで俺が……いや俺たちが悪戯に痛めつけられるのが当たり前であるように、淡々と言葉と理不尽な暴力を叩きつけてくる。
「せっかく“勝たせてやった”のに。
お前らみたいな街の恥は、ぬか喜びしながらとっとと帰ればいいのにさ……バカだろ」
「ふ……ふざけんな………!誰が……誰が“街の恥”、だっ………!」
“街の恥”。“ドブネズミ”。
あの日以来、俺たちはそう蔑まれながらこの街で生きてきた。
駅に身を寄せ、物乞いをして、たまには盗みも働いた。
それで石も投げられたし、殴られもした。
この世の全ての罵詈雑言を投げつけられ、尊厳だけでなく文字通り命も奪われた。
災害とは無縁の恵まれた奴らには決して分からない痛み、苦痛、屈辱。
俺たちは常にそんな理不尽に耐えながら1日1日生きてきたんだ。
こんな奴に見下される筋合いなんてない。
俺は、奴の脚を掴むと反対の手でヴァルツガンを銃口を突き付け、ゼロ距離で引き金をひいた。
───ドォン!!
エネルギー弾が爆ぜる音。
俺の腕に走る確かな衝撃と伝わる熱気。
そして、何かが焦げた匂い。
普通ならこれで奴の脚は吹き飛んでいるはず。
しかし………
「なっ………!」
「お前、やっぱりバカなんだな」
奴の脚は吹き飛んでなどなかった。
銃口に面していた袴の裾が破けた程度。
おそらく奴の脚は無傷だ。
おそらく“これ”が奴本人に一切ダメージがなかった理由。
一体何が起こっているんだ?
このガキは一体何者なんだ!?
それすら考える暇もなく………
────グシャッ
顔面に走る衝撃と共に目の前が真っ暗になった。