Episode.10 LUCY

「……バカな。
マイティアクションXXの効果とはいえ分離したライダーたちが問題なく活動できるなんて。

しかも人格も分裂している……。

お前、一体何者だ……?」


「ケケッ……そんなもん知らねぇなァ。

俺は“椿 勝利”……そんだけだ」


分裂した2人の俺を見て奴は再び剣を構え直す。


アイツが驚くのも無理はない。

俺も驚いているくらいだからな。


初めて勇騎さんと出会った時に来栖さんが変身していたエクスキメラは勇騎さんが変身したエグゼイドレベル1の攻撃を受けバグスターを分離された時にシステム側がエラーを起こし自由に動けなくなった。

ということはリミッター解除しているとはいえ、同じエクスライザーを使っている俺もリベルとアインに分離しているのなら同じようにエラーが起こって動けなくなるはずなのだ。


だけど俺は動けている。

しかも、俺のことをマイブラザーなんて呼ぶ『もう一人の俺』が現れるというオマケつきで。




「いやいやいや!椿 勝利は俺だから!
俺!!」


「だから言ってんだろ、マイブラザー……。

俺はお前。お前は俺だって……」


「えー………」


動揺する俺たちをよそに俺の分身はジュエルを取り出す。
その手に持つジュエルは勇騎さんが持っているものと全く同じだ。



「さァて……お前も俺に“喰われろ”……!」


《チェーンジ!仮面ライダー!アマゾンオメガ!》


《OMEGA……!》


ジュエルを交換し、ボタンを押す。

すると凄まじい衝撃波と共に緑の炎に包まれる。

そして現れたのは……。


緑のボディに赤いライン。
トカゲを思わせる機械的なシルエット。
そしてつり目の赤い複眼が燃えるように輝いている。


『仮面ライダーアマゾンオメガ』。


確か勇騎さんもこのジュエル持ってたような気がする。
使ってるところをみたことはないが。



「ケケッ……なんかしっくり来るぜ……!」


アマゾンオメガに多段変身した俺の分身は腰を低く落とすと、地面を勢いよく蹴り飛びかかった。




『勝利さん!カードをスキャンしてゲンブフォームにフォームチェンジです!』


「え?えー………。
なんかよくわかんねーけど……

やってみるぜ!」


《Form Change:GENBU……》


再び、ルーシーから通信が入る。
フォームチェンジをしろとのことだが、確か輝はカードでやってたよな……。

こう腰のカードホルダーから取り出したカードをバックルのカードリーダーに読み込ませるんだっけ。

俺は輝の動きを思い出しながらカードを取り出すと、言われるままにフォームチェンジを行う。

フォームチェンジした先はルーシーの指示どおり四聖獣の一体、玄武を思わせる重厚な装甲を持つアイン・玄武フォーム。


その手には巨大な手甲が装備されている。



「はぁっ!!」


俺も分身に続き駆け出す。

それにしてもこの武装は……重い。

玄武のゴツい見た目の通りパワーと防御に優れた姿だが、本当にこの姿でいいのだろうか。

全く動き回れない気がするけど………。




《ソロモンストラッシュ!!》


「はぁぁっ………!!」


当然、敵は待ってはくれない。

呼んで字のごとく、身の丈をはるかに上回るほどの巨大な剣が召還されると奴はそれを俺たちに向かって振るう。


分身の方は奴の攻撃を避けたのだが、当の俺は慣れないライダーの慣れない装備に対応しきれず避けられない。



「やっべ……!!」


だが、このままやられるのはごめん被る。

俺は巨大な剣をその身で受け止めると刀身を掴んだ。


ゲンブフォームの堅牢な装甲のお陰か自分自身が受ける衝撃は最小限にとどめられた。



「っ……!受け止めるのかよ…….!」


「なるほど……俺は避けるんじゃなくて奴の攻撃を受ける係なんだな……」


流石にこの一撃を受け止められるとは想像もしていなかったのだろう、奴の動きが一瞬こわばった気がした。



「おい、分身!」


「分身じゃねぇマイブラザー!」


《Violent Strike……!》


「オラァァッ!!」


俺が刀を押さえている隙に奴は巨大な剣を足場として一気に駆け抜け、奴に肉薄。

ベルトのボタンを押すとかかと落としの要領で刃が伸びた右足を奴の肩目掛けて振り下ろした。
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